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「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地
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「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

2026.03.11
株式会社オオサカポテト





株式会社オオサカポテト / 代表取締役 渡邊博文 氏



「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

大阪府の農業は、生産地と消費者が近いという強みがあり、小規模ながらも収益性の高い農業を営んでいる。しかし、高齢化や人手不足によって家族経営の維持が困難となり、耕作放棄地の増加や担い手不足は深刻な課題だ。そんな都市型農業の問題点を利点に変え、大阪をサツマイモの一大産地にしようと邁進しているのが、2025年に設立された株式会社オオサカポテトの代表取締役、渡邊博文氏である。一見、無謀とも思えるその野望は、着実に一歩ずつ前進している。大阪をサツマイモの産地にする取り組みとはどのようなものなのか、渡邊氏に話を伺った。

愛知から大阪への転勤を機に週末農業を開始



オオサカポテトの渡邊氏は愛知県岡崎市出身。会社員時代に大阪へ転勤したことをきっかけに農業に興味を持ち、週末農業を経て2022年12月に八尾市で認定新規就農者(※1)となった。もともと農業とは無縁だった渡邊氏だが、都市型農業だからこそできることを見出し、瞬く間に仲間を増やして耕作放棄地をサツマイモ畑へと再生。2025年には株式会社オオサカポテトを設立した。渡邊氏は「1.子どもたちに自然豊かな未来を届ける」「2.畑と生活者を繋ぐ」「3.耕作放棄地をなくす」という3つの夢を叶えるため、サツマイモ栽培に打ち込んでいる。

※1 認定新規就農者とは、農業経営を開始して5年以内の人(またはこれから始める人)が、5年後の経営目標をまとめた「青年等就農計画」を作成し、市町村から認定を受けた新規就農者のことです。資金の補助や低利融資など、国や自治体からの重点的な支援措置(経営開始資金など)を受けることができます。

「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地


Q.栽培する作物をサツマイモにされたのは、どのような理由からでしょうか。

サツマイモは土地利用型農業、つまり面積の広い農地での栽培に適しているため、大阪に点在する耕作放棄地を埋めていくのにぴったりの作物なんです。また、用途が幅広く、新たに週末農業を始める方でも育てやすいという利点もあります。何より、芋掘り体験など子どもたちにとって親しみやすい一面があるのが魅力ですね。都会の子どもたちが畑で遊べる社会をつくりたいと考え、収穫時期には積極的に収穫体験会を開催しています


「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

サツマイモの収穫体験は家族連れで賑わい、大人も子どもも笑顔に溢れる。

「皆さんの『もうひとつの居場所』となるコミュニティーがあればいいなと思っています。農業がその役割を果たせる場所になれば嬉しいですね」


Q. 前職は広告関係のお仕事をされていたそうですが、農業を始めたきっかけは何ですか。

趣味のサーフィンがきっかけなんです。転勤で大阪に来た際、一緒にサーフィンをする友人がいなかったので、別の趣味を探していた時に農業が浮かびました。会社員を続けながら、まずは週末だけ農業を始めたんです。その時、都市体験型農園『週末農園』を立ち上げ、毎週5組以上のファミリー向け収穫体験会を実施していました。それがもう、めちゃくちゃ楽しくて。この楽しさを多くの人に知ってもらいたいと、どんどん農業にのめり込んでいきました。広告代理店の仕事も充実していましたが、それ以上に農業の楽しさが勝り、大阪で農家として生きる決断をしました


2023年に「八尾市認定新規就農者」となり、本格的に営農を開始。栽培しているのは、オリジナルブランドのサツマイモ「夢シルク」だ。「シルクスイート」という、高糖度でしっとり滑らかな食感が特徴の品種である。肥料には、放置竹林の整備で伐採された竹から作る「竹炭」を使用。都会で手軽に農業を体験したいというニーズは多く、渡邊氏がSNSで発信を続けるうちに仲間が集まった。当時の農地は150アール。専業農家は渡邊氏一人で、他のメンバーは「半農半X(農業と他の仕事を両立するスタイル)」で活動を支えた。

「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

都市農業の問題点を利点に変えたサツマイモづくり



Q. 2025年2月に法人化されましたが、会社を設立した理由を教えてください。

法人化するまでは、あまり経営者としての感覚がなかったんです。気づけば仲間が増え、みんなが僕と同じ船に乗ってくれていました。個人の時は、彼らはオオサカポテトの将来性に期待して労働力を提供してくれていたんです。でも、同じ夢を追うメンバーの労働に対して、しっかり対価を支払える仕組みを作らなければならない。その責任を果たすために、経営者として株式会社を設立しました


Q. 現在、会社はどのような体制で運営されているのでしょうか。

メンバーは9名で、1名が兼業、残りの8名は専業農家です。全員が非農家出身です。メンバーとは業務委託という形で契約し、『夢シルク』を栽培してもらっています。これに加えてパートスタッフが13名。また農福連携(農業と福祉の連携)として、就労継続支援B型事業所(※2)や就労移行支援事業所(※3)の方々にもお越しいただいています。少しずつですが、農家になる人や農業を支えてくれる人が増えてきました

※2 障がい者就労支援(B型)事業所とは、障害や難病により一般企業での雇用契約に基づく就労が困難な方に対して、雇用契約を結ばずに働く場所と訓練の機会を提供する福祉サービス(就労継続支援B型)を指します。

※3 就労移行支援事業所とは、一言で言えば**「障害や難病のある方が、一般企業への就職を目指してトレーニングを行う場所」です。福祉サービスの一環ですが、学校や塾のような雰囲気で、就職に必要なスキルを身につけ、自分に合った職場を見つけるためのサポートを最大2年間受けることができます。 
一人で始めた農業だったが、渡邊氏の周りには自然と人が集まってくる。メンバーの共通点は、渡邊氏が掲げる「3つの夢」への共感だ。ボランティアとして協力してくれる仲間に対しても、単なる作業ではない「居場所」と「体験」を提供している。

Q. 農業は担い手不足が課題ですが、なぜこれほどメンバーが増えているのでしょうか。

オオサカポテトのビジョンが分かりやすいからだと思います。根本的に農業は魅力的で、皆さん関心を持っていますが、収益のイメージが湧きにくい。僕はそれを分かりやすい形で世の中に発信しているからこそ、参画のハードルが下がっているのだと感じています


渡邊氏の「畑と生活者をつなげたい」という思いが、多くの人にとって農業への第一歩を後押ししている。

生産開始3期目で大阪府内最大規模の生産量へ



2025年度の「夢シルク」栽培面積は430アールに達し、2026年度には600アールまで拡大する予定だ。
収穫量は2025年度で約100トン、2026年度には180トンを目指しています


Q. 短期間でこれほど面積を拡大できた要因は何でしょうか。

大阪をサツマイモの産地にするには、栽培面積を増やすことが不可欠ですが、同時に収穫した芋を多くの方に購入していただくための『一次加工』の仕組みが必要でした。そこで大阪の流通・物流大手である『マグチグループ』(※4)に相談したところ、快く協力してくださり、『夢シルク』専用の加工場を構えていただくことになったんです


※4 マグチグループ(間口グループ)は、大阪に本社を置く、1901年(明治34年)創業の歴史ある総合物流企業グループです。大阪港での港湾荷役(船から荷物を積み下ろしする作業)からスタートした会社で、現在では物流の枠を超えて多角的に事業を展開しています。
https://www.maguchi.co.jp/


「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

美味しい焼き芋を作るには専用機械での低温長時間焼成が必要であり、ペースト化も手作業では限界がある。一括して加工原料を作れる体制が整ったことで、ケーキやスイートポテトなどの商品化が容易になり、販路は一気に拡大した。

僕自身、一農業ファンでもあるんです。サツマイモの産地であれば放っておいても売れるかもしれませんが、産地ではない大阪ではゼロから市場を作る必要があります。ですが、大阪特有の強い『地元愛』が、オオサカポテトを力強く後押ししてくれています

「夢シルク」は大阪産であり、同時に大阪の耕作放棄地問題を解決する鍵でもある。社名を「オオサカポテト」としたことで、誰もがひと目で「大阪のサツマイモだ」と認識できるブランドとなった。

Q. 今後の目標をお聞かせください。

『大阪をサツマイモの産地にする』という夢は揺らぎません。そのために今後は加工品のラインアップをさらに拡充したいと考えています。現在、大阪産の『夢シルク』を使った芋けんぴを作る計画も進行中です。私たちのミッションは、『夢シルク』の価値を向上させ、生産量を伸ばしていくこと。より強固な農業体制を築いていきます


オオサカポテトが掲げる「子どもたちへ自然豊かな未来を届ける」という目標。その一環として、2025年には八尾市の小学校給食に「夢シルク」が採用された。農業を愛し、その楽しさを発信し続ける渡邊氏の夢は、大阪の地でさらに大きく広がろうとしている。

「夢シルク」が変える大阪農業。目指すは芋の一大産地

株式会社オオサカポテト
本社:大阪府八尾市都塚2-12
オフィシャルサイト:https://yumesilk.studio.site/