Vision Match Osaka
太陽の光を浴び、食べている人の顔を思い浮かべ育てる野菜
泉佐野市製造・メーカー小売・流通農林水産

太陽の光を浴び、食べている人の顔を思い浮かべ育てる野菜

2023.06.23
射手矢(いてや)農園株式会社

射手矢(いてや)農園株式会社 / 代表取締役社長 射手矢 康之 氏

                                                                

今年も玉ねぎの季節がやってきた。射手矢農園株式会社には、玉ねぎの旬を迎えると待ちかねた全国のファンから注文がくる。よくおいしいものの記憶は残るといわれるが、ここの玉ねぎやキャベツを一度食べると、旬の時期が待ち遠しくなる。江戸時代から続く農家の十代目である代表取締役社長 射手矢康之氏は、次世代に農業を繋ぐために、泉州の味を広め、食と農の大切さを伝えている。代々続く屋号は『長左ェ門(ちょうざえもん)(※1)』である。大阪農業のリーダー的存在でもある射手矢氏に農業経営を継続させることへの思いを聞いた。

※1長左ェ門:長左ェ門(ちょうざえもん)とは射手矢農園で作られた生で食べられる泉州たまねぎのブランド名

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自分のところの玉ねぎのうまさを知らなかった



大阪で野菜を作る農家が年々減っていく中、射手矢農園は農地を広げてきた。1996年に1.5ヘクタールの自作地を親から経営譲渡受けた射手矢氏は、徐々に預かり受ける農地を増やし、現在は約29ヘクタールになった。水田ではもう少し大きいところはあるかもしれないが、畑作では大阪府で一番大きい農園である。すべて露地栽培(※2)で、泉州たまねぎ、キャベツ、米の生産、加工、販売を手掛けている。

※2露地栽培:露地栽培とはハウスなどの施設を使わず、屋外の畑で栽培する方法です。その野菜が本来育つ時期に合わせ、自然に近い状態で栽培するため、旬の野菜を味わうことができます。

取材に訪れた日は、玉ねぎの出荷で忙しさが加速していた5月下旬、収穫したばかりの玉ねぎが次々と箱に詰められ、山積みになっていた。今年の玉ねぎの出来を聞いてみると・・・

去年はダメだったんですが、今年は、順調に育っています。順調すぎて、大きく育ちすぎて困るくらいです。箱に50玉くらい入るはずだった玉ねぎが、大きいと45玉とかになる。そうなると5玉少ないと言って、最初に出していた金額より下げてきたりする。無理に売ったわけではない、玉ねぎが欲しいというから契約したんですがね。

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個数が減ったからと言って箱に入ってる玉ねぎの重量は同じである。1個いくらで契約したのではなく、箱単位のキロ数での契約のはずだ。本来なら価格を下げてくるのは不条理である。射手矢農園の玉ねぎがおいしいという評判を聞いて購入したいと言ってきたとある業者だという。射手矢農園の玉ねぎは、基本大きい。それは、広々とストレスなく育ったて健康な玉ねぎである証拠だ。健康な玉ねぎはすくすくと大きく育つ、すくすく育った玉ねぎはおいしい。射手矢農園の玉ねぎは、瑞々しく生で食べても甘味と旨味があり柔らかいのが特徴だ。よく、テレビ番組で収穫したばかりの玉ねぎをかじり「甘い」とタレントがいうシーンがあるが、まさしく射手矢農園の玉ねぎは本心から「甘い」という声がでる。「おいしいで、一回、生で食べてみて」と自信をもって言える射手矢氏だが、農家になった頃は、自分のところの玉ねぎの美味しさをさほど理解していなかったという。

正直言うと自分のところで育てた玉ねぎしか食べたことがなかったんで、つまり玉ねぎは大体こういう味だと思っていたんです。

最初は農家にさほど魅力を感じていなかった射手矢氏は、自分のところの野菜がおいしいかどうかということはあまり考えていなかった。当時は、農協出荷100%であり、消費者から射手矢農園の玉ねぎはおいしかったという声を直接聞くこともなかった。そんな射手矢氏の農業に対する気持ちを大きく変えた出来事がある。それは1994年に東京で開催された農業研修である。会場となった国立オリンピック記念・総合青少年センターには、全国から若い農業者が集まった。

自分は大阪の農家はシティーボーイやと思っていたんで、どうせ田舎もんばっかり来ると思っていたら、ジャニーズみたいなカッコいい農家がわんさか来てました。そしてその中に「好きやから百姓やってます」という農家がいたんです。自分と同世代であるのにちゃんと利益も上げてました。


大いに刺激を受けた射手矢氏は、意気投合した参加者と育てた野菜や果物を送りあう約束をした。射手矢氏が送ったのは玉ねぎである。送った相手から届いたのは、マンゴーやサクランボだった。高級果物と玉ねぎの物々交換となったことに驚いたこともさることながら、さらに驚くことが起こった。
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こんな上手い玉ねぎは初めて食べた。マンゴーにお金を添えとくから、またたまねぎを送ってほしいと言われました。海老で鯛を釣っている感覚でした。


自分の育てた玉ねぎがそんなに値打ちがあるのか、また食べたいといわれるほどおいしかったのか。ただ玉ねぎを送った何人もの農家から同じことを言われ、初めて自分が育てた玉ねぎに誇りを持つようになっていくことになる。
しかし、当時の出荷先は農協であり、農協に出す玉ねぎは味では評価はされなかった。折しもこの頃は、中国から輸入した安価の玉ねぎが多く流通しはじめ、価格が下がっていた。このままでは、未来はない。自分でなんとかせねばならない。玉ねぎに誇りを持ったと同時に販売方法を模索することになる。

おいしいの声が一番!食卓が明るくなる野菜を育てます



今では、直接消費者に販売できるようになり、食べている人の顔を思い浮かべながら、食卓が明るくなる野菜を育てています。野菜嫌いの子どもでも「射手矢の玉ねぎならパクパク食べてくれる」と言われると、嬉しいです。やっぱりおいしいの声が一番はげみになります。


「伝統と素晴らしい味を守りたくて百姓をやってます。食卓が明るくなる野菜を育てます」これが射手矢農園の理念である。販売する玉ねぎは「泉州たまねぎ 長左エ門」と名付け、ブランド化に取り組んだ。直接スーパーとの取引が成立し、販売方法が劇的に変化していった。射手矢農園の野菜のおいしさが消費者、シェフへと徐々に広がっていった。大阪の料理店の店主との縁で当時、日本にいた香港のグランドハイアットの総料理長を務めた伝説のシェフ、ジョセフ・ブゼ氏(※3)に玉ねぎを食べてもらう機会を得た。ジョセフ・ブゼ氏は「君の玉ねぎは日本一うまい」といってくれた。では現在の販路はどう広がっていったのだろうか。

※3ジョセフ・ブゼ氏:1950 年ドイツ出身。1983 年よりハイアット インターナショナル グループのホテルで総料理長を歴任し国際的に活躍。2002 年、開業に先立ちグランド ハイアット 東京の総料理長として来日、同ホテルの10 のレストラン・バーにおいてその手腕を振るう。

現在キャベツは、セブン-イレブンのお好み焼きに提供して3年目です。キンレイ(※4)の冷凍食品のチャンポンは2年目になります。あと玉ねぎやキャベツも平和堂、エバグリーン(※5)、イオンモール堺北花田の無印良品等で販売中です、そしておかげさまでふるさと納税の返礼品にも採用されました。もちろん色々な飲食店でも使ってもらってます。

※4株式会社キンレイ:株式会社キンレイは京都府京都市伏見区南浜町に本社を置く、冷凍食品の製造・販売をおこなう企業。大手日本酒メーカー・月桂冠株式会社のグループ企業でもある。

※5エバグリーン廣甚株式会社(ひろじん):エバグリーンは、和歌山県有田郡湯浅町に本社を置く、生鮮食品スーパー、 ドラッグストア、コンビニエンスストア、焼肉店などを経営する企業。

大阪タカシマヤの地下1階、高島屋ファームでは、冬のキャベツの時期と、初夏の玉ねぎの時期に期間限定で販売されている。店頭に出るのは「かあちゃん」こと、射手矢氏の愛妻・智子さん。ちなみに射手矢農園の昼ごはんは、智子さんの手料理だ。従業員、パートを含め、みんなで食卓を囲むそう。
さらには加工品も手掛けており、玉ねぎドレッシング、たまねぎスープ、フライドオニオンなどがある。今年は、花園のお好み焼き屋「でん」とのコラボで、冷凍お好み焼きも完成した。

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日本の玉ねぎ発祥の地・泉州


泉州は北海道と共に日本に置ける玉ねぎ発祥の地である。泉州のたまねぎ栽培の技術が淡路島に伝わったことは余り知られていない。射手矢農園は、泉州たまねぎの伝統を守り、年々厳しさを増す気候条件の中で、栽培方法を工夫している。
今、大事なのは農地を増やすことではなく、農業を継続できる人材をしっかり増やしてゆくことなんです。一番の問題は人手不足、働いている人が楽しみながらできることを見つけていかないと続かないんです。


そう語る射手矢氏は、若い人が農業を継続していくための手助けを惜しまない。売り先を探していれば、売るための手助けをする。射手矢農園で経験した後、独立し、射手矢農園では栽培していないハウス栽培の水茄子やイチゴ栽培をする人もいるが、そんなときも力を貸します。射手矢農園で働き、独立していても繁忙期には手伝いに来てくれる。現在は社員10数名、常時来てくれるパート4名。それが繁忙期には約30名くらいになるという。人手は農園の維持にはかかせない。

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コロナ禍で中止になっているが、毎年、松波キャベツ(※6)の時期になると収穫祭を行っている。そこには、射手矢氏を兄貴と慕っている農家、お好み焼き屋にラーメン店、フレンチレストランのシェフ、野菜ソムリエと、射手矢農園ファンがなんと300人以上が集う。参加者はわずかな参加料を払い、キャベツの収穫をし、シェフたちが腕を振るい、農園の倉庫に並ぶ屋台料理を好きなだけ食べて過ごす。また、田植えの時期には参加者が田植えアートをみんなで行う。イベントを楽しみにしている人も多く、ここでも多くの出会いが生まれる。つまり人が人を呼ぶ農園、それが射手矢農園なのである。

※6松波キャベツ:甘みをたっぷりと蓄えた泉州キャベツを松波キャベツという。普段は気にも留めない芯の部分までもがおいしいキャベツです。

射手矢農園株式会社
本社:大阪府泉佐野市上之郷3301番地
オフィシャルサイト:https://www.tamanegi.tv/