日世通商株式会社 / 代表取締役 平野浩一 氏
日世通商株式会社は、鉄鋼製品を中心に取り扱う流通商社である。平野浩一代表取締役は、それまで同じ鉄鋼業界で長く会社員として働いていた。だが、ある日、勤めていた会社が前触れもなく解散。同業他社から誘いの声もあったが、一念発起して1998年に日世通商を立ち上げた。平野氏は、この「社長インタビュー」には2024年4月に続いて2度目の登場となる。

日世通商の創業後は、2006年にリサイクル鉄鋼原料の販売を主事業とする株式会社エコメタルを、2012年には各種鋼管の製造を行う株式会社エコパイプを設立した。鉄の調達と販売からリサイクル、自社での鋼管製造に至るまで、一つのサイクルを構築している。そんな同社の創業経緯や事業内容などは前回記事(https://shacho.osakazine.net/e760239.html)で紹介しているので、そちらを参照されたい。
今回は2022年に稼働を開始したエコパイプ社の滋賀工場についてをはじめ、今年創業25周年を迎えた同社の将来ビジョン、社員に望むことや求める人材などを語ってもらった。
鉄鋼製品のループを作り上げるうえで
重要拠点となる滋賀工場が稼働
エコパイプ社ができたことで、私が描いていた鉄鋼製品のループを作り上げることができました。今後は貿易能力の強化と鉄をリサイクルするエコメタルの機能強化、さらにはエコパイプによるもの作りの強化。その3つの強化を図りながら、どんな時代にも対応できる企業を目指していきたいと考えています
平野氏が言う鉄鋼製品のループを作り上げるうえで、大きな役割を果たしたのが滋賀工場である。メーカーとしての機能を強化するうえで、生産拠点の拡充は必要不可欠なものだった。
もともとは大阪の南港にある倉庫の一角を借りて発足したのですが、そこが手狭になってきたんです。次の成長戦略を描くうえで、工場を拡張するのは必要な投資。工場を建設するのは大きな投資ですが、ここは思い切る必要があると判断しました
工場が完成してから4年を数え、今では生産ラインは70~80%の稼働率で動いているという。日世通商の今後にとって、この滋賀工場は大きな意味を持つ拠点になる。
加工した鉄のパイプは、そのままで使えるものではありません。短く切ったり、あるいは穴を開けたり溶接したりして、最終的に用途に応じた形にする必要があります。これからの世の中は人手不足の問題があり、自動化にもなっていく。我々が自分たちの特色を示すには、たとえば溶接まで行うといった、付加価値を付けていかないといけない。お客さんの手元に渡って、すぐに使えるような形で届ける。そういった付加価値サービスがこれから必要になっていくでしょう。滋賀工場は、それを行うための拠点という位置付けです

現代は企業が自社の利益を追求するだけではなく、社会への還元も求められる風潮になっている。滋賀工場は、その役目を果たすことも担う。
工場の設計にあたっては、周囲の環境に重々配慮しました。騒音問題もしかりですが、最重要視したのは廃水で琵琶湖の水を汚染しないことです。琵琶湖の水は、近畿の飲み水ですから。そのための我々の取り組みをご理解いただき、地元住民のみなさんとも良好な関係が築けています。それもあって滋賀工場は、近隣の方々に雇用の機会を生み出す場所にもなっているんです。今後は滋賀工場の敷地を使って、地域住民の方々によろこんでいただけるイベントなどができればと考えています
東アジアに強みを持つ現状から、
さらなる発展のため西へと歩みを進める
日世通商の強みのひとつは、海外に強いパイプを持つことである。なかでも特に、東アジアに強い。2022年にアメリカ・ヒューストンに子会社を設立したが、それに20年も先駆けて2002年に韓国・ソウルに営業所を開設している。

韓国、台湾とは多くの取り引きがあり、東アジアには強みを持っています。弊社の成長戦略の視点から見ますと、海外事業の成長は欠かせません。なかでも、やはりアジア。アジア各国の成長は目を見張るものがありますし、それが西へ西へと進んでいっています。今はたまたま縁がありまして、カンボジアの企業とタイアップした事業も行っています。アジアの成長は今後、インドにまで達するでしょう。そういった時代の変化にも、対応していかないといけないと思っています
鉄鋼製品は、産業には不可欠な基礎資材である。その鉄鋼業界のなかで25年の歴史を重ねられたのは、日世通商が信頼を積み重ねてきたゆえの賜物であろう。これからも歴史を紡いでいく同社の短中期的な目標は、トップの頭のなかにこうある。
向こう5年くらいの期間で考えれば、やはりアジアへの進出ですね。現地に支店を出すとかではなくても、より活発に貿易していきたい。カンボジアやベトナム、インドと、やはり西へと向かうことになるだろうと考えています。アメリカは2年前に拠点を作りましたが、現在は情勢が少し混乱していますのでね。今は北米にどんなニーズがあり、それをいかにキャッチアップできるかに注力したい。日本国内においては販売と、ネットワークの拡充を図りたいと思っています
「人は、会社の最大の財産」
トップは成長に挑む社員の背中を押す
その目標を達成し、会社をさらに発展させるのに大事なものはと問うと、間髪を置かずに「人です」と答えが返ってきた。
いかに人を育てながら、走っていくか。それがとても大事だと思い、ずっと大事にしてきました。人の能力は、さまざまにあります。語学力が高いなら、それを生かした仕事をすればいい。各社員の持ち味を分析してあげて、それぞれが本来持っている能力をどれだけ最大限に引き出し上げられるか。それが会社の、ひいては社長としての役目だと思っています。ただ私から言いたいのは、社内にはいろんな部署がありますので、どんどんチャレンジしてもらいたい。いずれどこかで、壁にぶち当たることもあるでしょう。そうなったときに、その壁をどのように克服するか、乗り越えていくのか。そういったことに、さらにチャレンジしていける人材を育てたいと考えています

昭和の時代のように会社の形に人を当てはめるのではなく、それぞれの個性を社内で活かしてもらう。それが平野氏の考え方である。個を伸ばし、仕事にやりがいを得てもらうために、必要であれば在宅勤務を認めたり、フレックス勤務にも柔軟に応じる。語学や仕事に必要な資格の取得には、会社が100%の支援を行う。
世の中の環境が大きく変わりつつあるなかで、やはり会社が社員に向上心を持たせるような働きかけをするべきでしょう。特に我々は、グローバルにビジネスを行っているわけですから。社員も語学習得や資格取得の必要性を、それぞれが感じるようになってきました。会社はそれを、全面的に支援します
会社のトップはチャレンジする社員の背中を、大きな両の掌で力強く押す。
会社において人材は、本当に最大の財産です。弊社は能力があればどんどん海外にも行ってもらいますし、権限もどんどんと渡しています。そういう意味では、かなり自由にやれる環境だと思います。みんなでコミュニケーションを図りながら縦横のつながりを良くして、楽しく元気に働ける会社にしたいと思っていますし、そんな私たちの考え方に共感してもらい、何でもチャレンジし、お客様の意志である付加価値を生み出してゆく人材に来ていただきたいですし、今いる社員も含めて、そういう日世通商を作り上げてほしいですね

