Vision Match Osaka
世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者
大阪市中央区商社・卸

世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者

2021.05.14
有限会社 湧元

有限会社 湧元  代表取締役社長 池田豊 氏



商社に入社以来、繊維一筋。長年にわたる外国人との付き合いから日本の伝統的な織物や染色技術などの素晴らしさに目覚め、世界の有名ブランドと日本の職人仕事の橋渡しに尽力しているのが、湧元(ゆうげん)代表、池田豊 氏。仕事用のパソコンには、グッチ、サン・ローラン、ルイ・ヴィトン、ニナリッチなど、だれもが知る世界的ブランド約60社が登録されている。
「日本のテキスタイルの品質の高さは世界が認めています。日本の価値をさらに広げたい」と話す池田氏は、技術の継承にも目を向けている。

世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者


外国人の古本屋通いで日本のデザイン・アイデアの魅力と力に気づかされる


大阪にあった商社、イトマン(その後住金物産を経て現日鉄物産)では、もっぱらイタリアの生地輸入を手掛けた。イタリアのバイヤー(買い付け者)が来日するたびに行きたがったのが古本屋と骨董屋。初めはそれが不思議だったが、彼らがこぞって購入するものを見てその理由が分かった。
彼らは着物の図案帳や古い着物などを買いあさるんです。実は、日本のアイデアやデザインをリプロデュースして市場に出していたんですね。ヴィトンのマークは日本の家紋をヒントにしたものだということはよく知られていますし、友禅をモチーフにしたものもあります。それからですかね、私自身が日本のものづくりの力や感性に目を向けるようになったのは。正直に言うと、それまではファッションにおいて日本は二流だと思っていたのですが、日本が劣っていることなどまったくないと分かりました。


世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者


自信とプライドに欠ける日本の職人に落胆


イトマンが戦後最大の経済事件と呼ばれたイトマン事件で消滅したのを機に、1994年に退職。
知人のイタリア人と組んで、イタリアでセーターを作る会社を立ち上げた。ファストファッションを特にアメリカ向けに製造し、商売は順調だった。

このころから、日本の製造業者に声をかけて海外との取引を持ちかけるようになっていったのですが、彼らは納入先から欧米と同じものを安く作れと言われ、それに従うばかり。自分たちの技術が世界に通用するはずがないと、私の提案など一蹴されました。
そのころは、製造業としてのプライドが欠けていると言ってもよかったでしょう。


世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者
世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者


付加価値の高い製品づくりに目を向けるようになったタイミングで「湧元」設立


次の転機は、1999年の欧州通貨統合と2001年にアメリカで起きたアメリカ同時多発テロ(9.11)事件。ユーロへの通貨統合ではイタリア商品の競争力が一気に下がり、9.11ではアメリカのファッションマーケットが凍り付いた。

これをきっかけに帰国して、2004年に湧元を設立しました。このころには、日本のマニュファクチャラーの中にも、大手に使われるだけではだめで、主体性を持って付加価値の高い製品開発に挑まないとだめだという意識を持つ人が増えてきていました。
そもそも、日本の伝統的な図案を取り込んだ世界的ブランドメーカーの製品を日本人が高い値段で買うというのは納得できない話です。私は長年の経験でイタリアのやり方を熟知していましたので、それを踏まえて日本の良さをアピールしたいと考えました。



独自の強みを持つ企業・職人を発掘し、ヨーロッパブランドに売り込む


その手段の一つが、パリで始めた展示会「J-TEX」。18年続いており、新型コロナのためオンラインで実施した昨年も、海外有名ブランドとの商談が活発に行われた。一方で、国内では日本の良さを受け継いでいると目を付けたメーカーを1軒1軒訪ねて回り、サプライヤー(仕入れ先)を増やしていった。池田氏自身はプロデューサーとしての役割を担い、ヨーロッパブランドのバイヤーの希望に応じて、サプライヤーに注文もつける。

世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者


サプライヤーは日本でしかできない技術を持っているところばかりです。広島県福山市の山陽染工さんは藍染め、中でも抜染グラデーションが強みです。福井県勝山市のケイテーさんは、合繊なのに特殊な撚り方をすることによってシルクやウールのような手触りの撚糸を紡ぎ出し、滋賀県麻織物工業組合さんは、手もみで生地を柔らかくする技術を持っています。このほか、山形県や石川県・京都府などにも仲間がいます。


イトマンで培った知識とノウハウで、一人何役もの活躍


創立から16年余。仕事はほとんど1人でこなしているが、織物の現場を理解し、その知識をベースにバイヤーとのコミュニケーションができることに加え、貿易実務や物流のルールに通じていることが大きな武器になっている。池田氏はこれについて、不幸な事件に巻き込まれたイトマンへの感謝の思いを持ち続けている。

自分が力をつけたのはイトマンのおかげです。デザイン学校に通わせてもらったことでデザインや柄を見る目が付いたし、工場見学に連れられて行ったことで現場を知ることができました。イトマンのすごいところは、自社で教科書をつくっていたんですね。ニットや織物などテキスタイルの幅広い知識を得ただけでなく、コスト計算や与信についてもその教科書で学びました。


伝統技術の承継に欠かせない子どもたちへの教育


次に見据えるのは、日本だけが有する伝統技術の承継だ。そのためには、次代を担う子供たちに関心を持ってもらうための教育が欠かせないという。

湧元の仕事も数字がついてくるようになって誇らしいし、現場の人が自信を持つようになったことが何よりうれしいですね。ただ、繊維に限らず焼き物など地場産業について知らない子どもが多いのが残念です。やっている職人さんも経営者も正しく伝えようという気持ちを持っている人は少ないのが実情です。子供に関心を持ってもらうためには、まず現場を見せることが必要です。イタリアでは長年にわたってアーカイブや古資料を整理して活用しています。地元の子どもたちに働きかけることによって地場産業に誇りを持ってもらい、その道で稼げるようにする必要があります。


世界のブランドが注目する日本のテキスタイルが有する伝統技術の伝道者


有限会社 湧元(ゆうげん)
本社:〒541-0046 大阪市中央区平野町4丁目7-8-806
オフィシャルサイト:https://yugen.jp/ja/