Vision Match Osaka
大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く
動画 ピックアップ守口市建築・住宅・不動産新着

大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

2025.02.13
南晃工業株式会社






南晃工業株式会社 / 代表取締役 一貫坂 彰 氏



大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

左官業ひと筋55年の南晃工業株式会社、その創業は1970年。現代表取締役である一貫坂彰氏の父親が興した。
私の父は昭和2年生まれで、長崎県の島原出身。中学を出てすぐに左官の親方に弟子入りして、その後大阪に出てきました。会社を興すまでは浪花組(※1)という左官業界でも大きな会社に勤めていて、専務取締役にまでなったのですが、43歳のときにそこを辞めて南晃工業株式会社を創業したんです

※1 株式会社浪花組は、日本の伝統技術である左官を継承し、高い技術力と実績を持つ、日本を代表する左官会社です。
株式会社浪花組のウェブサイト: https://naniwagumi.co.jp/


創業時は大手ゼネコン(元請け)との直接取引の1次請けはできなく、2次請けや、中小ゼネコンが大半で、100名近くの従業員を抱えながら懸命に仕事を請け負っていた。そのころ一貫坂氏は大学生。当時はクラブ活動に夢中で、卒業後は父親の会社に入って跡を継ごうという明確な意思はなかった。

大学時代はクラブ活動でウエイトリフティングばかりやっていて、卒業してからなにかやりたいことがあったかといえば、とくにそうではなくて、会社に入ったのはなんと言うか……、自然な流れでしたね。建築の勉強を全然していなくて、さすがにそれはマズいと思いましたので、入社してから2年間、夜間の建築専門学校に通いました。そこで建築の基礎を学んで、2級建築士の資格も取りました

入社後は現場の職人仕事ではなく、主に事務方の仕事に従事。そうして働きながらも数年は気持ちの中心にウエイトリフティングがあり、仕事に身が入っているとはいえなかった。“これではアカン”と、意識をあらためたのは入社から4~5年が経ったころ。
得意先である竹中工務店(※2)がゼネコンで初めて品質管理にQCサークル(※3)の活動を導入し、南晃工業社も参加。QC大会の資料作りのための勉強会などに加わるうち、自分が携わっている仕事の中身が分かってきた。それからは自ら現場に足を運ぶなどして、左官の仕事への知見を得るとともに、仕事に対する自覚が深まっていくこととなる。

大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

※2 株式会社竹中工務店は、日本の大手総合建設会社です。歴史は古く、伝統と技術を誇り、国内外で数多くの建築物を手がけています。特に、神社仏閣の建築に強く、その技術は高く評価されています。近年では、大規模なインフラ整備や高層ビル建設など、幅広い分野で活躍しています。
株式会社竹中工務店のウェブサイト: https://www.takenaka.co.jp/


※3 QCサークルは、Quality Control Circleの略で、日本語では「品質管理サークル」と訳されます。職場内で、品質の向上を目的に、少人数のグループで自主的に活動する組織のことを指します。

QCサークルに携わっていくうちに、仕事のやりがいみたいなことが分かり出したり、自分でもっとやらなあかんという自覚が出てきました。そうやって仕事も面白くなってきましたし、自分が成長している実感も得られるようになっていきました


創業者の父が急逝、苦難から
信念を持ち続け、伝統と革新・両立の挑戦



自覚が生まれ、仕事に邁進するようになった。そうして入社から12年が経った34歳のときに、創業である父親が急逝。突然に自身が跡を継ぐことになった。古参の社員が離れたり、売り上げが下がるなど、つねに順風満帆だったわけではない。だが一貫坂氏は、左官業の未来を拓くための視線と自らの信念を持ち続け、社の舵を取ってきた。

左官は伝統的な工法でありますが、新しいことにも挑戦する。それが、自分のやりたいことなんです。機械化やロボット化での技術向上など、最新技術を先駆けて導入していきたい思いはあります。だけどそこにばかり向かうのではなく、やはり最終的に手作業はとても大切です

左官業がその歴史のなかで積み重ねてきた技術を疎かにせず、なおかつ、つねに新たなことに挑戦し続ける。そんな南晃工業社の軸にあるのは、伝統の上に革新を積み重ねる姿勢だ。同社が手掛けた施工事例は、ユニバーサルスタジオジャパンのジュラシックパークゲート、グランフロント大阪のホール・廊下、あべのハルカス、京セラドーム、フェスティバルタワー、梅田スカイビル、御堂筋のベンチ等など。大阪人なら一度は訪れたことのあるところばかりだ。

大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

そのなかでも伝統に関わる象徴的な大仕事がある。それは2010年の平城遷都1300年祭にあわせて、平城京最大の宮殿である大極殿の復元と再建に携わったこと。日本古来の左官工事の伝統工法である本漆喰壁を担当し、9年近くの歳月をかけて完成させたのである。

大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

大極殿復元から最新技術まで。伝統と革新の融合で左官業の未来を切り拓く

その一方で同社の革新にあたるのは、左官業の材料として日本ではマイナーだった樹脂を用いたこと。従来のセメントを用いた工法は、時間の経過とともにクラック(割れ)が生じる。だが樹脂を用いたテラゾー(※4)工事は多彩な意匠が可能になり、付加価値も高くなる。他社に先駆けて研究を重ね、2019年には独自の樹脂テラゾー商品である“ZZERART”を商標登録。この商品は、南晃工業社の独自性をさらに高めるものとなっている。これはまさしく他社には真似のできない「塗りと研ぎ」の両方をこなせる独自の技術力によるものであった。





※4 テラゾーとは砕いた石材をセメントなどの結合材に混ぜて固め、表面を研磨して仕上げる人工石材です。その製造方法や施工方法にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。


そうして歴史を重ねて55年。今後の社の未来を、一貫坂氏はどう描いているのか。

短中期的な課題は、職人さんの高齢化が進んでいることです。今は60代後半から70代になっても、働いてくれている職人さんたちがいます。その人たちの技術を、現場の若い人たちに覚えてもらわないといけない。ですから、若い人たちの求人活動には力入れています。海外人材の方も今は20人近くいます。そのなかから優秀かつ、日本で仕事を続けたいという人も出てきているんです。そういった方には職人さんとして働いていただけるように指導するなど、将来に向けての備えを続けていきます。


硬式野球に、ウエイトリフティング
スポーツを通じての人材確保も


人口減の日本において、人材の確保は業種を問わす喫緊の課題。それに対応するべく一貫坂氏は、自身が学生時代に慣れ親しんだスポーツを通じてユニークな手法を取り入れた。まずは、硬式野球。



大学まで硬式野球をやっていても、プロや強豪の社会人チームに進めなかった選手たちはその先がない。そうした人たちのための硬式野球チームを、お誘いもあって私たちとほかの会社と共同で立ち上げました。チーム名は金次郎関西、現在当社からは5名が参加しています。私たちの会社に入社し、野球を続けながら仕事もしっかりとやってスキルを上げていって、引退するときには会社でリーダーになるような人材を育成する。そういう想いなんです。




これをきっかけに、自身が学生時代に熱中したウエイトリフティングのクラブを社内に立ち上げるまでに広がった。


現在私は依頼をいただいて、大阪ウエイトリフティング協会の会長をやっています。私が社内にクラブを立ち上げたのは、自分が情熱を注いできた競技を普及させたい思いと、その競技に取り組んできた選手たちの受け皿を用意したい。ウエイトリフティングの競技者であれば、弊社にとっても良い人材になるのではないかと考えた。その両面があります




南晃工業社は一貫坂 彰氏の代になり、伝統の上に革新を重ねることを大切にしてきた。スポーツに対する取り組みは、その革新の部分。ならば今後、伝統をどう重ねていく考えなのか。

昭和の時代から55年もやってきていますので、社風は人間味があるというか、家族的なんですよね。最近の世間は、そういったところが薄れてきているとは思います。弊社はやはり、温かくて家族的な会社であるべきではないのか。そうでないと社員さんたちは育たないし、会社に愛情を感じてくれないのかなと思っています。いい意味での家族的な社風は、これからも大事にしていきたいですね

右手に伝統、左手に革新を。一貫坂氏はそれを両手に携えて、南晃工業社を前に進める。

南晃工業株式会社
本社:大阪府門真市垣内町16番21号
オフィシャルサイト:https://nankokogyo.jimdofree.com/