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老舗ばね製造企業が多角的グループ企業へ “自分ごと”として捉えたプラセンタ美容液の逆転物語
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老舗ばね製造企業が多角的グループ企業へ “自分ごと”として捉えたプラセンタ美容液の逆転物語

2025.12.22
RP三協株式会社

RP三協株式会社 / 代表取締役 赤松賢介 氏



創業84年を迎える三協精器工業株式会社。ばねの製造を主軸に、安定した経営基盤を築いてきた老舗企業だ。しかし、その事業領域は、ばね製造だけに留まらない。

飲食業や農業へと事業領域を拡大する中、2022年6月、株式会社日本ばね工学研究所をRP三協株式会社(以下 RP三協)に社名変更。三協精器工業株式会社、株式会社熊本三協スプリング、SANKYO MEXICANA、士別三協株式会社など、グループ各社を統括するホールディングス体制をスタートさせた。

さらにRP三協は、2024年全くの異分野である化粧品事業に参入。
国内でも珍しい取り組みとなる国産の「羊プラセンタ(胎盤)」を使った頭皮美容液を開発した。しかし、発売直後、一本の電話によって絶望の淵に突き落とされる。

「作ってはいけません。」

美容液全量回収の要請から、再販まで約1年4ヶ月。この短期間での復帰は、顧客の“現場”に寄り添い、自ら道を切り拓いてきた代表取締役 赤松賢介氏の意思決定と執念に負うところが大きい。

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お客様のお客さんにならないと本当の気持ちはわからない


ただのばね屋ではダメだ。価格競争ではなく、現場に効く価値を届け続ける事業をしたい。

ばね業界でできることの限界を感じたことが、異分野挑戦の原動力になったと赤松氏は言う。

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ばねの主力顧客である農業機械メーカーさんの気持ちになりたいと思っても、なかなかなれるものではありません。だから、自ら農業をやりたいと思っていました。お客様のお客さん、つまり農家さんの気持ちが分かれば、メーカーの視点もわかるはずだ、と。


農業への参入機会を探るなか、札幌の羊肉店の売却情報が目に留まった。視察で試食したところ、羊肉が苦手だった社員が「美味しい!」と笑顔で箸を進めた。その様子で品質を確信し、すぐにM&A(合併・買収)交渉へ。

交渉の場で、オーナーから 「国産の羊が足りないんです」と聞きました。ならば、自分たちで作ればいい。むしろ、これで念願の農業にもつながると思いました。


こうして北海道士別市に牧場(士別三協株式会社)を設立。希少なサフォーク種(※1)を育て、グループで取得したサフォーク羊専門店「士別バーベキュー」で提供している。

(※1)サフォーク種:特徴は顔と四肢が黒い肉用種の羊であること、無角であること、そして肉質が優れていること。

2019年の設立時45頭だった羊の群れは、今では300頭以上となった。<生産ー流通ー提供>をグループ内で一気通貫できる体制が整った。

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食肉だけで終わらせない。<胎盤=プラセンタ>という資源


赤松氏が目を留めたのは、これまで出産のたびに廃棄していた胎盤だ。
胎盤からプラセンタが得られる。まずは市場規模の大きい顔用美容液を検討したが、競合が多く後発参入は難しい。
一方、髪の毛(頭皮)にプラセンタを使う商品は、当時はまだ市場にないことに気づいた。

顔も頭も同じ一枚の皮で繋がっているのだから、髪にも良いのではないか。

こうして、飽和状態の顔用の美容液ではなく、まだ市場が確立されていない頭皮用の美容液開発に舵を切った。

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発売直後、北海道庁から一本の電話


試作を重ね完成した頭皮美容液「SOYUL(ソユール)」は、2024年4月に発売。誰もが安堵し、胸を躍らせていたその数日後、北海道のOEM製造先の化粧品会社に北海道庁から連絡が入る。

「羊の胎盤を使った化粧品は製造できません。大至急回収してください。」

耳を疑うような話だった。理由はBSE(牛海綿状脳症)対策等に基づく規制で、牛・羊といった反芻(はんすう)動物の特定部位は化粧品への使用禁止とされているためだ。食用は流通していても、化粧品には使用できない。

赤松氏は当時をこう振り返った。
OEM製造先の専門家の見解を根拠に適合と判断しました。確認が甘かったと受け止めています。

発売直後の美容液の全量回収。初年度から、法規の現実が容赦なく突きつけられた。

自ら読み解いた「厚生労働省議事録」


諦めきれない赤松氏は、北海道庁の担当窓口に直接連絡し、手がかりを探る。そこで得たのは「詳細は厚生労働省の審議会議事録にある」という情報だった。専門的で読みにくい文書を片端から読み込み、ついに一筋の光を見出す。

「ただし、次の処理をしたものは除く。」

この一文を見つけ、「いける」と確信したという。
最も、その処理条件は化粧品原料の製造としては過酷で、水酸化ナトリウム等の劇物で一定時間浸し、水洗するというもの。常識的に考えれば、原料が溶け、有効成分も失活しかねない手順だ。
それでも、道は拓ける。そう思った。

“異例の速さ”での再販


RP三協は、公式で指定された不可能とも思える処理方法に挑んだ。
そして、多くの試行錯誤の結果、劇物指定されている薬品を使いながらも、胎盤の有効成分を生き残らせる絶妙な処理条件を見つけ出すことに成功。
さらに、この特殊な処理は予期せぬ副産物をもたらした。
処理の過程で、以前は取り除けなかった不純物がきれいに除去され、前製品ではわずかに残っていた獣臭をほぼ感じにくい水準まで抑えられた。
第三者機関の分析でも、一部のアミノ酸が減少した以外は想定内の変動に収まった。

「獣臭がしないなら、もっとプラセンタを入れられる。」
安定性とのバランスから最終的に25%(原料添加量ベース)で落ち着いた。回収前を上回る配合量だ。
ピンチをチャンスに変えた瞬間だった。

回収時に顧客から届いたのは、「大変やね」「待ってます」という温かい励ましの声ばかり。問題を指摘する声は1件もなかった。
その声に応えるため、チームは全力で走り続けた。
そして2025年8月、回収からわずか1年4ヶ月という異例のスピードで、「SOYUL(ソユール)」の再販が決定した。

老舗ばね製造企業が多角的グループ企業へ “自分ごと”として捉えたプラセンタ美容液の逆転物語


環境は与えられるものではなく自分でつくるもの


なぜ、これほど困難な挑戦ができたのか。その根底にあるには、赤松氏が語る企業文化にある。
会社員の多くは「やりたいことをやらせてくれない」と言う。でも違うんです。自分で環境をつくるんです。社員であろうと、どんな立場だろうと。

実はこの頭皮美容液事業も、1人の若い女性社員が「やりたい!」と手を挙げたことから始まった。
「わかった。全責任を負う覚悟で最後までやり抜け。」
そう言って、赤松氏は彼女に事業を託した。


経営理念に掲げる「自主独立」。

それは、すべてを「自分ごと」として捉え、行動していく精神。
社員には存分に力を発揮できる環境を提供し、万が一転職する際にも引く手あまたとなるような人材に育てたいという考えだ。

一人ひとりが会社の主役であるという気概が商品発売停止の危機を乗り越えた。
失敗を恐れず、自ら道を切り拓く。
その想いが、RP三協グループの未来を創っていく。

老舗ばね製造企業が多角的グループ企業へ “自分ごと”として捉えたプラセンタ美容液の逆転物語



RP三協株式会社
本社:大阪市中央区南久宝寺町4丁目5-6 ヴェルテックス本町ビル5F
オフィシャルサイト:https://rp-sankyo.co.jp
SOYUL(ソユール)公式サイト:https://soyul.jp/


脚注:
生物由来原料基準|厚生労働省告示第210号
生物由来原料基準の一部改正について(薬生薬審発0228第1号)
生物由来原料基準の運用について(薬食審査発1002第1号/薬食機参発1002第5号)
(審議会資料)平成29年度第2回「再生医療等製品・生物由来技術部会」資料