ヴァリオ株式会社 / 代表取締役 利川邦浩氏
駅の近くにソースのいい香りが漂っている。たこ焼き、お好み焼き、焼きそばのテイクアウト専門店「てこや」は、必ず駅前周辺の人通りの多い場所にある。その「てこや」をはじめ関西を中心に53店舗(2023年11月末時点)を構え、常に新規出店を計画しているのが天王寺に本社を構えているヴァリオ株式会社である。2013年の創業以来、チェーンシステムによる飲食店経営で躍進を続けているヴァリオ株式会社の代表取締役 利川邦浩氏に話を伺った。

ヴァリオという会社名はどんな意味なんでしょうか?
私は飲食の仕事をずっとしてきました。実は社名の「ヴァリオ」というのはイタリア語、英語で言うとバリエーション。ただひとつの業態だけで運営するのではなく、様々な業態の展開をしていくのが我々の根幹理念です。いろんなお皿を提供し、外食に特化したコングロマリット(※1)をやっていきたいという思いで「ヴァリオ」という会社名にしました。※1 コングロマリット 異なる業種を統合した企業グループのこと。
イタリア料理店に続いての業種を粉もんのテイクアウト専門店にされた理由はなんでしょうか?
元々粉もんは私の得意分野でした。以前、肉のBSE(※2)問題があったときに焼肉屋が軒並みダメになりました。ひとつの業態に頼り切るのはリスクが大きいです。大黒柱をたくさん作り、もしもの危機に備え、十分なリスクヘッジ(※3)をする会社でありたいと考えています。
※2 BSE 牛の病気の一つ。2001年9月、国内において初めてBSEが発生。BSEそのものに加え、企業による牛肉偽装事件の発生も相次ぎ、食肉関連産業・外食産業・流通業、そして一般消費者を巻き込んで、食の安全が問われた一大問題となった。
※3 リスクヘッジ 元々は金融業界の言葉。ビジネスにおいてのリスクヘッジとは、想定される危険を予測してそれを回避する、または危機的状況になったときに取るための対策を講じること。
粉もん専門店「てこや」は駅の半径500m以内
「てこや」の場所は、ほとんどが駅の近くにありますが、出店場所を見つけるのに苦労されているのではないでしょうか?
正直駅近くはなかなか空いてないですね。ただ、私は近畿圏の駅という駅がすべて頭に入っています。毎日のように駅という駅を自分の足を使って回ってきました。ひとつの駅に5回、多いところでは20回以上は降り立っています。駅に足を運べば人の流れも空気も分かってきます。
「てこや」は、基本、駅から500m以内の駅近の超A級立地に出店しています。つまり駅の近くで店を探さなくても分かる場所。賃料は高いですがすぐ目に付く場所が広告宣伝費だと割り切っているんです。看板を目にする機会が増えるのでうちのブランドを知らない人はいなくなる。そして一度食べてもらえれば味には自信があります。

飲食店経験がなくても人が好きなら店長になれる!その理由は膨大なマニュアルにあった
ヴァリオ株式会社は店を出店し続けている会社である。新店舗を出すには人材確保と教育が必要不可欠である。店長候補は、飲食店経験は問わない。わずか3か月の研修期間で店長になれるという。その理由とは・・・・
飲食店経験がなくても人が好きでやる気がある方なら店長になれます。60ページから70ページの店舗運営マニュアルと店長マニュアルを作っているんです。研修もしっかりと準備をしてますので、特別な経験は何も必要ありません。早いと2か月から3か月で店長になってもらえます。飲食経験者なら1か月半くらいです。新店の場合は、オープンチームが加わって店長を育てます。

店長の頑張りは可視化されており、自己申告型になっている。店長はだいたい30代が中心、既婚者が多いという。物価上昇、等に伴い、この2年で給料を10%ほどUPしたそうだ。
小学生の子どもがいる社員も多くいるので、物価が上昇しているのに給料がそのままでは社員は対応しきれません。トップダウンだけでは独りよがりになります。ES(従業員満足度)の向上をするためにもベースアップは必要でした。それから店長からのキャリアアップも応援しています。
利川氏にとって、店長は子どものような存在である。また店長にとっての子どもはアルバイト。初めてのアルバイトで「てこや」にくる子が多いそうだ。初の社会経験を「てこや」で学んでいる。また、アルバイトから正社員になる方もいる。これは会社の魅力を体験し、納得して社員になる理想のカタチといえる。
アルバイトの方に支えられてここまで来ました。マニュアルがあるのでアルバイトの方も1か月も続ければたこ焼きもお好み焼きも焼けるようになってくれます。

アルバイトから正社員への道もあるが、店長で経験を積めば、さらに上級店長へ、そしてエリアマネージャーへと昇進も可能だ。また既存店と業務委託契約し、経営者になる独立の道もあるそうだ。
そして「てこや」は物価が高騰しても材料に妥協はしない。たこ焼きに不可欠なタコの値段はかなり高騰し、真ダコを水だこに変えているところも多いそう。真ダコは水ダコよりも漁獲量は少なく、値段も高価である。しかし「てこや」は、真ダコを使い続けている。その理由はやっぱり真ダコがおいしいから、店頭にも真ダコ使用と告知している。さらに焼きそばの麺は最上級の一等粉を使用、お好み焼きのキャベツは年間を通して、その時期に一番おいしい産地のものを使っている。つまりてこやの材料のこだわりは何をおいても最優先なのである。

イタリアンバル、粉もんの次はテイクアウトの焼き鳥店、そしてさらなる一手は?
「リストランテ バル ヴァリオ」、「鶴橋粉舗てこや」に加え、2023年8月より、新業態の「やきとり本舗とりすた」をオープンし、次なる新業態店舗の開店も決定しているそうだ。

テイクアウトの焼き鳥店は、現在、鶴橋店と阪急の池田店の2店舗です。実は東京では必ず駅に焼き鳥屋があるんです。だから前々から大阪でやりたいと考えていました。
そして2024年には、新しい業態のお店を考えています。まだ具体的にはお話できませんが、今度はテイクアウトではなく、店内で飲食ができる店舗の予定です。
次にどんな業種のお店がオープンするのか今からとても楽しみである。
利川氏は、飲食の流行りものはやらない。飲食のブームは2年で終わるからである。東大阪出身で、母方の実家は鶴橋だという利川氏は子どもの頃から鶴橋でお好み焼きを食べて育った。利川氏の粉もんの原点は鶴橋。食べることが好きで人が好きだという利川氏が、これからどんな新たなステージを見せてくれるのか、益々目が離せない。
