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あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん
大阪市住吉区情報・教育・サービス

あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん

2021.06.25
朝日温泉

朝日温泉 代表 田丸正高 氏



家庭風呂の普及に加え、人口減少や地域のつながりの希薄化などの影響で、年々利用客が減ってその数が激減している公衆浴場(銭湯)。そんな厳しい状況にあって、さまざまなイベントを企画して客足を大幅に回復させているのが大阪市住吉区の朝日温泉だ。なかでも、浴室内でいろんな競技を楽しむ『オフロンピック』は、震災からの復興を目指す熊本や東京の銭湯でも開催されるなど、銭湯同士のつながりも生んでいる。代表の田丸正高氏は「ほっこりできるのが銭湯」とその魅力を強くアピールする。

あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん


銭湯が遊び場。親の反対を押し切り、建築業をやめて父の手伝いへ


田丸氏の先祖の出身地は石川県。なぜか石川県出身者には銭湯経営者が多いといい、祖父も大正時代に大阪に出てきて銭湯を開業した。空襲で淀川区にあった銭湯は失ったが、戦後に再開。1960年に現在の住吉区に移ってきた。神戸出身の母の実家も親戚も銭湯を経営しており、幼いころから銭湯が遊び場だった。

そんな環境で育ったことやお客さんに遊んでもらった体験から、自分が継ぐんだという気持ちになっていきました。両親は銭湯経営の苦労を知っていましたから反対されたんですが、5年間だけと約束し、だめだったら元の建築関係の仕事に戻ればいいということで、父の下で手伝うようになりました。


大みそかの客が300人から100人に。起死回生を図って大改装に踏み切る


しかし、すでに銭湯は斜陽化の時代。1965年に約2万2000軒あった全国の銭湯は、72年をピークに減り続け、2016年には約3900軒にまで激減。朝日温泉も田丸氏が手伝うようになって3年ほど経つと、「あまりにもヒマ」という状態になる。

かつては大みそかには300人くらい入っていたのが100人になってしまいました。宣伝をせず、新しい設備も導入しなかったのですから、無理もない話です。やってても面白くないし、張り合いもない。同業者でもやめるところが増えてきました。ただ、そのころで既に40年以上続いてきた町のお風呂屋さんです。やってやれんことはないと考えて試しに改装の見積もりをとったのですが、概算で1億円。でもそれで、かえって燃えるものが湧いてきました。


矢継ぎ早に打ち出したイベントが、SNSの追い風で評判に


結局、金融機関から1億3000万円借りて、改装に踏み切った。父の時代に2回改装してきちんと返済していたので、金融機関からの信用があったのが融資実現につながった。しかし、ただ改装するだけでお客さんが戻ってくるほど甘い状況ではない。

お風呂のファンを増やさないと、とても長続きはしないと思い、さまざまなイベントを考えました。最初にやったのが音楽ライブ。洗い場の中でやるのですから、音響効果は抜群です。父も僕もラテン音楽が大好きで、若い人に受け入れられそうなラテン音楽を始めたのです。さらに、人気の飲食店を呼んできたりバーテンダーを付けたりして、音楽を楽しみながら飲食できるようにしました。ほかにも、落語会やお化け屋敷にパクチー風呂、ファイヤーショーなどもやりましたね。運がよかったのが、当時SNSが広まり出したことです。イベントを企画したら無料で発信できるのですから、その力はものすごく大きかったですね。こうした結果、それまで無関心だった若い人が目を向けてくれるようになりました。


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利益は度外視。どこに行っても、遊べる場所があるのが銭湯の強み


『オフロンピック』も、大人と子どもが一緒に遊べるものをと考えて生まれた。
風呂桶を使った桶カーリングや桶タワー積み、顔をお湯につけて決められた時間で上げる「洗面 つけ面 僕イケメン」など、普段なら怒られる風呂場での遊びを競技にして楽しむ企画だ。

テレビを含めていろいろなところで紹介されたことで、全国で知られるようになりました。2016年4月の熊本地震以来1年半休んでいた現地のお風呂屋さんへ、こちらから復興のお手伝いとしてオフロンピック開催をさせてほしいと頼み、受け入れてもらい実現しました。
東京からも要請があり、うち以外にも広がっています。イベントは利益度外視で、ただただお風呂を知ってもらいたいという気持ちだけでやっています。うちの店でなくても、これをきっかけに銭湯のお客さんになってくれる人が増えればと思っています。実際増えていますし、手伝ってくれる人も出てきました。何をするにしても、場所があるというのが銭湯の強みです。


あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん
あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん


55回を数えるこども銭湯には、大人も協力金を出して支援


子どもたちに無料で開放して入浴マナーなどを教える「こども銭湯」は55回を数える。毎月第1、第3日曜日のお昼の2時間は子どもたちだけの時間。お菓子も用意して、これを楽しみに来る子供もいる。驚くのが、地域の大人たちが協力金を出して支援してくれることだ。

うちの周辺は住宅街で子どもが多く、地域で盆踊りとか催しをやっていることが背景にあるのではないでしょうか。銭湯をコミュニティーとして使ってもらっていると実感します。
こうした催しを通じて銭湯に親しんだ子供たちが、大人になってからまた銭湯に行くようになってくれればうれしいですね。


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コミュニケーションの場としての役割の大きさを実感


今では、お正月には600人から700人のお客さんが来てくれるようになったという朝日温泉。
考えられるイベントは大抵やったという田丸氏。乳ガンを経験された方々で構成される団体さんからの持ち込み企画では乳がんになった女性だけが入れる日も実施するなど銭湯イベントは大きな広がりが生まれている。

お客さん同士が「また明日な!」とか「しばらく会えへんかったから心配してたで!」などと交わす言葉が聞こえてくると、入浴以外にもコミュニケーションの場として大切な役割を果たせているなと実感します。銭湯は楽しいところだということが、子どもたちを含めて少しでも多くの人に感じてもらえるよう、これからも知恵を絞っていきたいですね。


あの手この手の企画で「楽しい銭湯」を復活させた町のお風呂屋さん


現在、朝日温泉の向いの敷地に新たなコミュニケーションスペースを造成し、銭湯との連携を模索中である。
田丸氏は銭湯の新しいスタイルを仕掛ける開拓者である。



朝日温泉
〒558-0041 大阪市住吉区南住吉3-11-8
オフィシャルサイト:http://asahi-onsen.com/