サンフラッグ株式会社 / 代表取締役社長 藤本健文 氏
大阪市東成区に本社を構えるサンフラッグ株式会社はドライバー、いわゆるネジ回しを作り続けて70余年の企業。
1952(昭和27)年に藤本亀信氏が創業し、その後は実子に受け継ぎ、2021(令和3)年に現在の藤本健文氏が3代目の代表取締役となった。健文氏は創業者の亀信氏の孫にあたる。

製造販売を行う商品は、主にプロの職人向け。同業他社にない製品の強みを訊ねると、藤本氏はこう胸を張った。
製品は1日に何10万本と生産するのですが、完成品の1本1本すべてを傷がついていないかなど、最終的に目視検査をしています。
電動工具の先に取り付ける製品をビットというのですが、ぱっと見て真っ直ぐに見えても、少しでも歪みがあったら工具に取り付けて動かすと先端が振れるんですよ。そうなるとまともな作業ができなくなりますし、そもそも製品として成り立っていません。
弊社のビットは真っ直ぐにでき上がるという点においては、他社さんの製品と比較して圧倒的にクオリティが高いことが特徴で、そこがプロの方々に評価されている点でもあります。でき上がったモノのなかで、目視検査などを経てハネられるのは全体の1%程度と、製造精度が高いことも特徴ですね。
製品の仕上がりにこだわり過ぎてしまうゆえ、生産効率に影響を及ぼしてしまう面があることは否めない。それでも品質に妥協を許さず、こだわり抜いたものを販売していくことがサンフラッグのプライド。そうして完成した製品は代理店やホームセンター、プロショップなどを通じて職人の手に渡っていく。
不景気に物価高騰、海外製品の流入。若き経営者の頭を悩ませる外的要因
製品の質の高さは、自らがトップになってからも変わらず高い評価を得ている。しかし昨今の不景気や物価高騰などの外的要因が、40代の若き経営者の頭を悩ませる。
コロナ禍が落ち着いたあたりから、あらゆる物の値段が上がってきた。建築資材もすごく値段が上がっていて、住宅の着工件数が鈍化してきています。プロの職人の方に使っていただく製品なので、その影響はありますね。この状況を打開しないといけないのは、今の弊社の課題のひとつです。
ホームセンターの売り場を見ると同じようなビットでも、高価なものから安価なものまでと価格帯は広くある。安価なものが、海外製であるケースは多い。DIYや家庭で使うなら、品質はそれなりでも安い海外製を選ぶお客も増えていることだろう。しかしサンフラッグの製品は、そうした海外品とは立ち位置が異なると自負する。
そういうことですね。もちろん競争がないわけではありませんが、ちょっとジャンルやレンジが違うかなと感じています。まず自分たちがやらなアカンのは、しっかりとしたブランドの構築。「サンフラッグ=職人さん御用達の商品ブランド」という位置付けをし、こだわり抜いた高品質の製品を作り続けていくことだと思っています。

代表取締役に就任してから4年目の今年。次の時代に向けた改革
代表取締役に就任してから、4年が経った今年(2025年)7月。3代目は代表就任以前から頭のなかで温めていた、ある大胆なプランを実行に移した。
長く続いてきた株式会社新亀製作所の社名を、現在のサンフラッグ株式会社へと変更したのだ。
サンフラッグは、新亀製作所の製品ブランド名だったんです。だけど両者の知名度はかなりの開きがあって、これまでもバイヤーさんらと話をしていてもサンフラッグは知っているけど、新亀製作所の名前は知らないというケースは本当に多くありました。
私のなかにもこの会社に入ったころから、社名とブランド名が違うことに違和感があったんです。規模はまったく違いますが、松下電器とパナソニックみたいにね。私のおじいさんの名前から亀の字をとった社名を変えるのは心苦しかったのですが、市場にブランドの方が認知されているのは事実。だったら私が社長のタイミングで社名とブランド名を統一して、もう一回リスタートしていこうと。
そんなことをいろいろと考えた結果、社名を変更するに至りました。

古参の社員のなかには、会社の看板を書き換えることに抵抗感があった者もいたかもしれないが、社内が波立つことはなかったという。
入社時から工場作業などあらゆる仕事を経験しながら、つねに経営者の視点で社内の物事に向き合ってきた。社名変更は自分の代で創業100年を迎えることへの、藤本社長の決意表明とも言えるだろう。表立った社名変更にとどまらず、藤本社長は社内にも変革の手を入れる。
社員のやる気を引き出してあげるのは会社であり、社長の仕事だと思っているんです。父親の時代は「業績がエエから、ちょっとボーナス上げようか」くらいの感じでした。でもそれでは頑張った人と、そうではなかった人の間に不公平感が生まれるんですよ。個人個人をちゃんと見つめて、フェアにジャッジしてあげないといけない。社内に年功序列の古い名残がまだ残っているのは事実ですが、若い従業員にフォーカスする。それが、私のやるべきことだと思っています。会社のこれからを見た場合に、やはり自分たちより年下のコたちが第一線に立ってやっていかないとアカンのですからね。
創業100年に向けて。『とりあえず、やろうや!』の精神で進む
サンフラッグの製品数は、1000を数える。製品が自社開発であることも、強みのひとつ。新たな製品の開発も、従業員に積極的に促している。
『とりあえず、やろうや!』が、私たちの考えなんです。売れる、売れへんは別にしようと。なにかアイデアがあれば、一度試作して形にしてみる。サントリーの創業者・鳥井信治郎さんの言葉である「やってみなはれ!」ではありませんが、根底は同じですね。
さすがに、設備投資に5000万円かかりますとなればやれませんけど(笑)。300~400万円くらいの設備投資であれば市場性がどうとかいうより、まずその発案をしくれたことに対して会社として敬意を表し、形にしてもらうサポートをする。そして製品化に際しても売れる、売れへんは別にして、基本的にはやっていこうかのスタンスです。だから、新製品が出る速度が速いのも、私たちの強みだと思います。
喫緊の課題としてあげるのは、海外市場の拡大。
ビットおよび手回しドライバーでは国内トップのシェアを誇るが、さらに業績を上げるためには海外のマーケットから目を逸らせない。
既存でも、弊社の売り上げの15%くらいは海外なんですよ。台湾、韓国、シンガポールのアジアにオーストラリアとか。そういった国々に、サンフラッグの商品を供給させてもらっています。日本国内はご存知の通り、これから人口がどんどん減っていきます。だからこそ、このあたりで海外に本腰を入れていかなアカンと。
今後はアメリカとヨーロッパの市場を中心に、商品の展開をしていきたい。それにもっと展示会への出展や視察を行って、現地の代理店さんや商社との連携も強化をしていく。そういったことを、実行していこうと考えています。
自らの代で創業100年を迎え、その後はいずれ4代目にバトンを渡すことになる。
その際にどういうことが達成できていたら、社長として成功したと思えるのだろうか。
私の跡を自分の息子がやってくれたらいちばんいいのですが、彼はまだ小さいですから。誰がやるかはわかりませんが、引き継いだときに誰がやっても同じような企業運営ができる会社にしておきたいです。私がいちばん嫌やなぁと思うのは「あの社長がおったからできてた」とか、「あの人やから良かった」というようなことにはなってほしくないんです。ワンマンだったり悪い意味でのカリスマにならず、いい形で会社を引き継げたら、成功だったと思えるんじゃないですかね。
3代目社長に就任してわずかの期間で社名変更という大それたことを実行したことから、大鉈(なた)を振るう剛腕タイプかと想像していたが、実像は違った。
藤本社長は気さくな人物で、トップとしての自身を「調整型」自認する。
それゆえ人知れぬストレスも多いと苦笑するが、それは仕事での達成感で発散させるという。
『とりあえず、やろうや!』の精神は社長自身のなかにもあり、近いうちに新ブランドを立ち上げる構想もある。
それがローンチ(公開)した際には、また取材に伺いたい。

