小金屋食品株式会社 / 代表取締役 吉田恵美子氏
2017年36位、2018年42位、2019年43位…。これは、納豆消費量の都道府県ランキングにおける大阪府の順位です。食い倒れの街・大阪ですが、こと納豆に関しては下位グループの常連なのです。そんな“納豆不毛の地”で、50年以上にわたって納豆製造業一筋に歩んでいるのが大東市に本社工場を置く『小金屋食品』です。倒産の危機を乗り越え、「納豆の価値を高めたい」と、他社とは一線を画す商品を開発、販売し続けている二代目・吉田恵美子氏に、大阪市西区土佐堀にある直営店「納豆BAR小金庵」で話を伺いました。

納豆の付加価値を高めて
他社と差別化を図る
「たかが納豆、されど納豆」。吉田氏の話を伺っていて、そんな言葉が頭をよぎりました。スーパーに行けば3パック100円足らずで販売されている商品もありますが、吉田氏は納豆に付加価値をつけて他社製品とは差別化を図ることにしました。
大豆は、全商品国産100パーセント。大豆の上品な旨味と納豆本来の美味しさを楽しんでもらうためです。また、添付のたれは老舗醤油メーカーが本醸造した白醤油ベースのオリジナル。化学調味料不使用で、納豆の美味しさを引き出します。さらに、環境にやさしい商品を届けたいという思いから、全商品が紙カップ・ノンシュリンク。二酸化炭素削減に配慮したパッケージになっています。

納豆不毛の地と言われる大阪は、納豆を食べる習慣が根付いていない。その分、新たな購買層を掘り起こすチャンスもあると考えたんです。食い倒れの街ですから、舌の肥えた味に厳しい人が多い。言い換えれば、本当に美味しいものを作れば受け入れてもらえるのではないかと思いました
狙いは大当たりと言っていいでしょう。他社とはひと味違う納豆づくりの姿勢が地元のマスコミから注目され、口コミでも評判に。今では全国各地からオンラインショップに注文が殺到するほど小金屋納豆ファンは拡大しています。
昔ながらの天然菌納豆で
倒産の危機を乗り越える
着々とリピーターを増やしている「小金屋食品」ですが、ここまでの道程は決して順調ではありませんでした。
もともと専業主婦として子育てに専念していた吉田氏。専務取締役に就任し、会社経営に携わるようになったのは2003年、父で創業者の小出金司氏が病に倒れたからでした。金司氏は同年末に死去。納豆についても経営についても素人同然でしたが、会社を存続させるために全てを一から勉強しなければならなくなったのです。
先代からの累積赤字も大きく、吉田氏が社長に就任した2007年当時は倒産の危機にあったそう。そんな厳しい状況を打破するために考えたのは、お客様に求められる看板商品を開発することでした。たどり着いたのが、亡くなった金司氏がかつて作っていたという稲わらに自生する天然の納豆菌で発酵させる昔ながらの納豆です。
でも想像以上に難しかったです。天然の納豆菌は繊細で、培養した納豆菌と同じように作ってもなかなか糸を引かないんです。スタッフと一緒に試行錯誤を繰り返し、商品として出せるようになるまで1年半ほどかかりました
これが、天然納豆菌「なにわら納豆」。吉田氏とスタッフの努力の甲斐あって、2014年3月には大阪府から「大阪産名品」として認証され、同年11月には「大阪産PR大使賞」を受賞しました。名実ともに大阪を代表する納豆と言っていいでしょう。

大阪市内に直営店をオープン。
希少性を高めてファンを開拓
吉田氏が次に取り組んだのは、“ここだけ”の特別な商品を取り扱う直営店の出店です。これが、2016年に大阪市西区土佐堀にオープンした「納豆BAR小金庵」。コンセプトは「まるでカクテルのようにお洒落に納豆をSELECTしてほしい」。

レギュラー商品は、納豆の味をセレクトする「SELECTシリーズ」全30種類に、天然の納豆菌が醸し出す味わいを楽しめる「納豆BARなにわら納豆」と「納豆BAR竹姫納豆」。竹姫納豆は、地元大東市の飯盛山から切り出された孟宗竹を器にした限定品です。
そのほか、白しょうゆ納豆たれや、酵素入り納豆どれっしんぐ、納豆ころっけも人気です。

「SELECTシリーズ」はその名の通り選ぶ楽しみが魅力。大豆の種類は大粒・小粒・ひきわりの3種類あり、トッピングがそれぞれ玉ねぎ・初摘み海苔・赤しそ・うずら卵・鰯削りぶし・青唐辛子味・とろろ昆布の他、本わさび・キムチ・ラー油奈良漬けの10種類があります。大豆と同様にトッピングも国産原材料かつ化学調味料不使用です。
私の好みに偏らないように、試食はスタッフと一緒にします。納豆と相性がいいのはもちろん、主役である納豆の味をより引き出せることがトッピングの第一条件。アイデアはいろいろ出ますが、条件をクリアできるのは狭き門ですね
「納豆BAR小金庵」の商品が購入できるのは、この店舗と自社サイトのみ。味のよさはもちろん、お洒落なパッケージや希少性もあって、自宅用と贈答用の利用比は半々くらいとか。納豆好きは言うまでもなく、それほどでもと言う人でも、このラインアップは試してみたくなります。
コロナ禍に負けず売り上げアップ。
さらなる出店拡大を目指す
納豆の王道を押さえつつ、こだわり抜いたトッピングとの組み合わせで納豆の新境地を拓いている「小金屋食品」。納豆コロナ禍で店頭販売の売り上げは多少減少したものの、オンラインショップはコロナ禍前と比較すると1.5倍に伸びたそう。
吉田氏に今後の展開を伺うと、少しだけ考えてから答えてくれました。
『納豆BAR小金庵』の店舗数を増やしていきたいです。店舗数をむやみやたら増やすのではなく大事な拠点に1店舗というイメージで展開、数年以内に実現させたいですね

拡大路線ではなく価値路線、あくまでも納豆の価値を高める姿勢を貫こうとする吉田氏とスタッフ9名。この少数精鋭集団の挑戦で、新たに納豆の美味しさに目覚める人が増えていきそう。かくいう筆者もその一人。なにわら納豆で、納豆の既成概念が覆りました。納豆を敬遠してきた方にこそ、ぜひ味わってほしい逸品です。
