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「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇
大阪市中央区製造・メーカー新着

「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇

2025.10.28
株式会社桃谷順天館

株式会社桃谷順天館 代表取締役社長 / 桃谷誠一郎 氏



「明色化粧品」ブランドを展開する株式会社桃谷順天館は1885年に創業。
今年6月10日<June、Ten=順天(※)>で140年を迎えた老舗の化粧品メーカーだ。
(※)順天:天に順(したが)い、人々に奉仕するの意。

創業者 桃谷政次郎氏がニキビに悩む妻のために「にきびとり美顔水」を創ったことをきっかけに、化粧品製造業を開始した。
経営危機の真っただ中に入社して、その後さまざまな改革を実行して会社を立て直したのが5代目社長 桃谷誠一郎氏。業績回復の軌跡を聞いた。

「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇

「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇

経営不振の中、「跡継ぎ」としての行動


桃谷誠一郎氏(以降桃谷氏)が大学生のとき、業績が悪化の一途をたどり銀行が介入する事態となっていた。創業者一族は経営陣の座から追われる形で会社を去り、保有していた株も供出させられたという。
歴史のある会社だし、これまでやってこられたのだからこれからもなんとかなるだろうと、そんな「甘え」が経営陣にも社員にもあったのでしょうね。経営は最悪だと聞きました。銀行が入って、創業者一族も会社を去ったというので、その時点で自分とはもう関係のない会社だと思いました。家業という意識がなくなったんです。ですから、卒業後は製薬会社に入って、営業をやっていました。


「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇
創業者 桃谷政次郎氏



桃谷氏が製薬会社で働き始めて2年が経った頃、桃谷順天館の役員から声がかかった。
「会社の経営が思わしくないから、助けてくれ」という。創業家の一員なら戻るべきだと言われた。
年齢が二回りも上の方でしたが、勝手なことを言う人だと思いました。それでも面白そうだし、何とかできるかもしれないと思って、会社に入ることにしました。ところが、想像以上にひどい経営状態だったのです。


当時は完全にアウェイ(敵地)で、社員たちの桃谷氏を見る目は厳しかった。

会社に対して何か意見や提案をしようにも、桃谷氏を呼んだ役員を通さないとまったく相手にされない。だが、平社員の営業として入社したことが、まだ救いだった。いきなり役職付きにでもなっていたら、風当たりはもっときつくなっていたことは容易に想像できる。
古参の社員からまったく相手にされない中で、工場勤務の社員が1人だけ「会社の状態が悪い中、よく来てくれた」と歓迎してくれたんですよ。その人曰く「もし倒産しても2人でもう一度やろう」と。嬉しかったですね。こういう人もいるなら、頑張ろうと思いました。


当時の社屋は古く、トイレも敷地内にある木造の小屋だった。桃谷氏は、本気度を見てもらおうとトイレ掃除を始めた。
本当に汚くて、男子トイレも女子トイレも窓を開けっ放しで用を足すものですから、雨が入ってくるんです。そのせいで、キノコが生えているようなトイレでした(笑)。トイレを綺麗にしたらまわりの社員からけっこう喜ばれて、そんな下働き的なことをしているうちに、ちょっとずつ私との関係性も変わってきましたね。


古参社員は相変わらず相手にしてくれなかったが、若手の社員とは少しずつ話が出来るようになっていった。
また桃谷氏も、古参社員や役員たちとの「闘い方」を覚えていった。
何かひとつ提案をするときに、想定される反対意見に対する回答を20個ほど用意しておくのです。それだけ用意しておけば、だいたい想定内に収まりました。あまりにも鮮やかに論破しすぎて、かえって反感を買ったこともあるくらいです(笑)。


倉庫で見つけた創業者伝。100冊が会社を変える


あるとき、倉庫を片付けていた桃谷氏は、古ぼけた1冊の本を発見する。
『桃谷政次郎翁傳』と題されたその本は、創業者・桃谷政次郎氏が亡くなった後、生前に参謀格だった人たちによって製作されたものだった。
金箔とビロードの装丁で、内容共々立派な書物だった。

「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇
『桃谷政次郎翁傳』


昭和初期の出版で、創業の精神が説かれていました。その本を復刻しようと思って、部長職以上の協力を得て100冊つくりました。


ところが、旧仮名遣いで文章も現代人には読みづらい。しかも、当時の本には誤字脱字も少なくなかった。
それが、かえって良かった。みんなで手分けして読もうということになって、辞書を引きながら時間をかけて読み進めていきました。結果的にそれがよかった。一字一句丁寧に読み進めることになって、理解を深めることになったのです。

読みやすい文章なら、流し読みしてしまっていただろうという桃谷氏。
『桃谷政次郎翁傳』に書かれていた創業の精神、創業者の想いなどが社員に浸透する結果になった。

まるで水戸黄門の「印籠」みたいですよ。私の意見は聞かなくても、「創業者はこう言っていた」というと聞くんです。創業者の精神は大事にされているんだなと思いました。


その後、35歳で社長に就任した桃谷氏は、会社に残る古い体制の改革を進めていった。
まず着手したのは、給与体系の見直しだった。

いつの頃からか社内カースト(身分制度)がありました。トップが研究所。たしかに歴史のあるメーカーで、研究開発に携わってきた部署ですからね。その次が営業で、いちばん下が工場で「現業員」と呼ばれていました。


とりわけ、研究所に勤務する社員たちのエリート意識は高かった。桃谷氏が営業で店舗回りをしていた頃、店頭で競合他社の製品を目にする。自社製品より優れていると思ったら購入して、研究所に持ち込んで「こういうのをつくれませんか?」と提案したこともある。
ところが、研究所の社員からは「わが社でつくっているものは、世界一の製品だ。そんなものは研究する価値もない。」と一蹴された。
給与は社内カーストにほぼ比例しており、研究所勤務の社員が最も高かった。しかも、給与は完全な年功序列だった。
大赤字なのに、研究所に勤務する社員の給与は高く、逆に工場は、いかに安く働いてもらうかということしか考えられていなくて、給与も低かったんです。


それがバブル景気の後半あたりの頃だった。その時代に桃谷氏は、管理職の給与に年俸制を導入した。

年俸制を導入して、2~3年かけて給与体系を見直しました。業績に貢献していないのに、高い給料は出せません。上げたかったら、会社に貢献してくださいと。そして、当時の所長より2ランクほど下の社員を、研究所の所長に任命したんです。

並行して、社内カーストで格差があった給与をすべて平等にした。そうした改革に対して、当然に反発もあったという。
当時、研究所の上の方の人はプライドが高い人も多く、そういうことなら辞めますといって会社を去りました。
もちろんその中には、新しい体制に合わせて意識を変えてくれる人もいました。気の毒だったのは、能力的には高くないんだけれども愛社精神の高い人が、会社の窮状を察して自ら辞めていくことでした。自分の給料で浮いた分を、後輩たちのために使ってくださいと、涙ながらに訴えられたときは本当につらかったです。


OEM事業のシナジー効果


創業以来、自社ブランドだけを製造販売していた工場では、設備稼働に余裕があった。その反面、研究所は自社ブランドという制約の中でしか商品をつくれないという弊害もあった。例えるなら「25メートルプールに、人がまばらに泳いでいる状態だった」と桃谷氏はいう。

もっとたくさんの人が泳げるのに、たいへんもったいないわけです。だからOEM事業を始めました。OEMをやることで高級品の製造技術を習得できるし、自社製品の研究開発の幅も広がります。OEMは第三者のチェックが入りますから、品質管理のレベルも向上しました。


工場の製造スキルもどんどんレベルアップし、自社製品の売り上げも伸びていった。
売上げはコロナ禍で急落したものの、今は回復している。

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「ピーチバレーアカデミー」とCSR活動


桃谷氏が今欲しい人材は「失敗を恐れない人」だという。
失敗を恐れているのは、本当はその人の上司かもしれませんね。そのせいで、若者が自由に力を発揮できない状況じゃないかと思います。若い人たちが、できるだけ前に出て仕事ができるような会社にしたい。


そんな人材を育てるため、ベテラン社員を講師に立てた「ピーチバレーアカデミー」という社内教育プロジェクトを発足させた。
「ピーチバレー」とは「Peach(桃)+valley(谷)」=「桃谷」という意味だ。

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また、CSR(企業の社会的責任)活動では発足して今年で2年目になる「公益財団法人 桃谷政次郎記念財団」がある。
ここでは、経済的な理由で勉学の機会が奪われることがないよう、30人の学生に対して返済を求めない給付型の奨学金を出している。
もちろん対象者は選考するが、毎年優秀な学生が応募してくるという。


桃谷順天館のV字回復は、創業者の精神に立ち返り、社員の可能性を信じた桃谷社長の強い信念と行動力の賜物といえる。
これからの桃谷順天館のさらなる発展、そして次世代を担う若者の活躍に期待が膨らむ。



「明色化粧品」140年の精神。創業精神に立ち返った、どん底からの復活劇


株式会社桃谷順天館
本社:大阪市中央区上町1-4-1
オフィシャルサイト:https://www.e-cosmetics.co.jp/