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従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神
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従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

2025.06.12
株式会社光製作所





株式会社光製作所 / 代表取締役 井上吉史 氏



株式会社光製作所は、モノ作りの町である大阪市東成区に工場を構え、得意とするのは精密板金加工。1937年に創業し、その歴史は約90年を数える。歴史とともに培われた確かな技術が自慢で、街路照明の金属製品や車道用および歩道用LEDの照明器具、疑似太陽など「光」に関わるモノを軸に産業機械、医療機器も製作するなど、幅広い製品を手掛けている。

従業員数は8名と、規模はいわゆる“町工場”だ。そんな光製作所が製品の品質とともにこだわるのが、地域貢献の精神。大企業であればともかく、企業活動を行ううえで町工場がこれを前面に打ち出しているのは、珍しいだろう。

社の代表取締役は、三代目の井上吉史氏。東成区で生まれ育ち、今も工場のすぐそばに住む。自身が生まれ育った東成区に深い愛情を持つ井上氏は、地域との共存を第一に考えている。 

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

東成区には昔から町工場がたくさんあって、その町工場がほかの場所に移転すると土地が空いて、マンションが建ったりするんです。そうして1軒抜け、2軒抜けてとなって、我々もそうですが、住宅地の真ん中に工場がある地域が多くなってきました。そこで住民とのトラブルが発生して、最終的に工場が立ち退かないといけなくなったり、ときには裁判になったりする。裁判に勝っても負けても、住人の方はそこにずっと住み続けています。裁判で争った者同士が毎日顔を合わせる状況のなかで商売をして、社員がいい気持ちで働けるのかなと思ったんです

地域と良好な関係を築くには、住民に工場の在り方を知ってもらい、身近に感じてもらわないといけない。その考えから毎年、親子での工場見学を行っている。

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神
子どもだけの工場見学はいろんなところでやっていますが、弊社は親子で来てもらうことをポイントにしています。その工場が何を作っているのかだとか、どういう原因で音が出るのかなどを親子で知ってもらう。それに弊社の社員と触れ合うことで、トラブルが起こる前に、いろんな問題が解決できるんじゃないかと思ったんです。工場と住民が普段から挨拶したりする間柄でしたら、裁判になる前に解決できることは少なくないと思うんです。近隣住民の方から『今日は病人が寝ているから、ちょっと音を控えてください』と話があれば当然、それに対応します。そうして互いにコミュニケーションがとれる関係を、大事にしたいんです

これをきっかけに地元住人だけではなく、全国から修学旅行生の工場見学を受け入れるようになった。それを続けていくうちに、思わぬ副産物も生まれたという。

工場見学を受けることで、社員の意識が変わってきたんです。当たり前のことですが、ちゃんとした挨拶ができるようになった。我々としては普段の景色なのであまり気にかけていませんでしたが、外部の方が来られると、ここはちょっと危ないなと思う場所を気にするようになりました。以前は来られたお客さんに対して、専門用語を使った説明で終わっていたんです。それが今は小学生でも理解できるような言葉を選ぶことができるようになって、お客さんも分かりやすいって言ってくださいます。工場見学=社会貢献ということもありますが、我々にとっても社員教育になったり、社員の意識改革と企業風土の改善にもつながっているんです


地元愛ゆえのユニークな施策の数々
東成区に住む従業員には手当てを支給



親子での工場見学にとどまらず、光製作所は東成区愛を掲げてユニークな施策をとっている。そのひとつは東成区とその周辺地域に在住する従業員に対して、“東成手当”を支給すること。

ここに住んでもらうことで東成区を愛してもらい、誇りを持ってほしい思いもあります。また防災の観点から見れば、たとえば公共交通機関で通ってもらうと、災害が発生して交通機能が停止すると帰宅難民になりかねない。でも工場がある東成区内に住んでもらったら、万一の際も歩いて帰れます。それは本人にとっても、会社にとっても安心です。あと家族が病気になったり要介護になっても、仕事場と自宅が近ければ1時間や2時間の有給を使って帰れますよね。それに支給した交通費がそのまま鉄道会社に払われるよりも、“東成手当”を社員にとって有益に使ってもらうほうが価値があると思うんです

2011年から東成区が主催する、住工共存まちづくり懇談会に参加。その一貫として、区と連携して災害発生時に社が協力する体制も築いている。

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

地域とつながることによって住民の方や、行政からお願いされることもあるんですよ。区役所との関係すごく良くて、担当の方や区長さんといいコミュニケーションが図れています。工場にはフォークリフトや軽トラックがあるので、災害発生時に必要であればそれらを提供します。工場は鉄筋の3階建てで、水道もある。このあたりはまだまだ木造2階建てや平屋の家屋がありますので、なにかあればウチの設備をいつも使ってくださいと言っています


長く続いた企業風土を改革し
来たる100周年に向かう



経営者の視点に目を移すと、井上氏は2013年に三代目に就任。祖父から父へと受け継がれ、創業時からの体質を変えぬまま長い歴史を重ねてきたがゆえ、現代にそぐわなくなっている部分もあると感じている。そのために、具体的な改革に手を付けている。

私たちのような中小企業は、社長のトップダウンでは未来がないかなと思っているんです。ボトムアップで社員がやりたいことを、見つけていくべきではないかと。社員が会社のことを自分事に捉え、仕事の進め方や会社が進むべき道を決める。それだからこそ、自分たちで決めたことは必ず守る。社長が決めて、社長が言うことに従う。それでは今後が開かれないと思いましたので、企業風土を変えていきました

当初は従業員に、反発や戸惑いもあった。それでも剛腕を振るうのではなく、成功を示していくうちに、少しずつ変化が表れてきた。もちろん、一朝一夕にできたものではない。社長にとっては、我慢の時間もあった。それを乗り越えられたのは、常務を務める弟の存在だという。

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

自分は正しいと思ってやってることなので、なんで理解してくれないんだという思いもありましたし、ストレスもたまりました。ただ私にとって良かったのは、弟が常務としていてくれてるので、いろんなことを本音で相談しながら進めてこられたことですね。弟は兄弟であると同時に、ビジネスパートナーみたいな関係なんです。そういう意味では兄弟で経営をやっているのは、良かったなと思っています

光製作所は現在の井上社長の代で、創業100周年が視界に入る。そこに向けてトップはこれまでのBtoBだけではなく、BtoCの領域へと進出する考えを持っている。

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

従業員8名の“町工場”がこだわる 地元・東成区への、地域貢献の精神

社員中心でアイディアを出し合って、自社製品の礎となるものを作り出したいですね。大量に売るものではなくて、ホームページ上でひっそりと売っているものでもいいと思います。自分が作ったものがそのまま、BtoCで価値が分かる方の手元に渡るようになれば、社員の意識が変わってくるとでしょうし、もっとやりがいが出てくると思います。そういうものは、この3~5年のうちに作りたいと考えています

光製作所が掲げる経営理念は、「我々は社会の光となります」。東成区から生まれた光が地元を、そして広く社会全体を照らす。そのために今後も、さらなる発展を期待したい。


株式会社光製作所
本社:大阪市東成区大今里南4-14-11
オフィシャルサイト:https://hikari-ltd.com/