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伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目
製造・メーカー

伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

2022.04.01
中尾食品工業株式会社

中尾食品工業株式会社 / 代表取締役社長 中尾友彦 氏

                                                            

かつては、町のお豆腐屋さんのように市内各地で見られたこんにゃく製造会社。年々消費量が落ち、こんにゃく会社の数も減っていく中、90年以上の歴史を誇る中尾食品工業株式会社が気を吐いている。昔ながらの木灰を使った製造法にこだわる一方で、4代目の代表取締役社長中尾友彦氏は新製品を相次いで開発。低カロリーで食物繊維が豊富なその特性に着目した「トレーニングヌードル」シリーズは、プロテイン入りの「SHAPE MEN(シェイプメン)」や、鉄分を配合した「IRON MEN(アイアンメン)」を既に市場に投入し、ラインアップをさらに拡大する予定。「真っ当につくれば真っ当な味になる。愛情を込めれば、さらにおいしくなる」をモットーに、老舗企業のチャレンジは続きます。

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おいしさを追求すれば、昔ながらの製造法に回帰するしかない



創業は1927年。中尾氏の曽祖父、菊松(きくまつ)氏が興した中尾商店がはじまり。家業の米穀店は長男が承継、次男だった菊松氏は自分で何か始めたいという思いが強く、さまざまなことにチャレンジし、行きついたのがこんにゃくだったという。このころにはこんにゃく製造会社が大阪府内だけで約100軒あったそう。それが今では、府内で10軒もなく堺では中尾食品工業のみ。市場もピークの1991年、約1400億円から2019年には約591億円に縮小した。

堺市内ではうちだけになりました。こんにゃく芋を生産しているところも府内では見ないですね。こんにゃく芋は東南アジア原産で、奈良時代には日本で食べられていたといいます。この芋は傷みやすく扱いが難しいのですが、18世紀後半に水戸藩の※①中島藤右衛門さんが粉末にすることで保存や輸送の問題を解決しました。現在も多くは粉末を使いますが、おいしさが損なわれるため、当社の最上級のこんにゃくでは芋まるごとをすりおろして使い、豆腐製造におけるニガリの役割をする凝固剤も、一般的な消石灰ではなく昔ながらの木灰の上澄み液を使用しています。健康面を考えて、農薬散布していない京都・京北町のスギの間伐材を譲り受けています。SDGsの一端も担わせていただいているつもりです。

※①中島藤右衛門(なかじま とうえもん):粉蒟蒻(こな こんにゃく)製法の発明者(1747~1825)。久慈郡諸沢(もろさわ)村(現、茨城県常陸大宮市諸沢)の農民。

伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

初代の名をとった「菊松(きくまつ)こんにゃく」は刺身やサラダでもおいしい



そこまで昔ながらの製法にこだわるのは、一にも二にもおいしいからだ。こんにゃく芋の水洗いから冷凍保存、こんにゃくのりの製造、凝固剤とともに専用の缶に流し入れて蒸して固め、刀のような刃で切り出すまで、ほとんどの工程を手作業で行うため、できあがるまでに2~3日かかるのですが、食べてみればそのおいしさの違いは歴然としているという。同社では広島産の有機栽培芋を使用しているが、社長自ら産地まで出かけ、農家の収穫を手伝うなどして農家の信頼も得ている。こうして作られた商品は「菊松こんにゃく」の名前で主力商品となっている。菊松は、創業者のひいおじいさんの名前からです。
伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目
伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

菊松こんにゃくは水洗いするだけで、お刺身やサラダにして食べていただけます。こんにゃく特有の臭みやえぐみが非常に少ないからです。また、こんにゃく独特の色を出すため、一般的には海藻の粉末を入れますが、菊松こんにゃくは皮ごとすりおろしているため、海藻を入れなくてもこんにゃく本来の色をしています。同じように作った菊松糸こんにゃくもあり、料理のレパートリーは広がりますよ。


痛恨のトラブルを転機に、安全安心の製造環境づくりにまい進



中尾氏が父の跡をついで4代目に就任したのは2013年25歳のときだ。実はこの直前に会社として手痛い失策を犯していた。出荷したところてんにカビが生え、クレームを受けたのだ。ところが、職人肌の父はこんにゃくづくりに手いっぱいで、この問題を正面から受け止めていないように映った。意を決して、社長交代を具申。父は少しの沈黙の後、それに応じた。

伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

カビ問題に直面した時、社内にはどうしていいか分からないという空気が漂っていました。こんにゃくはアルカリ性ですから、衛生環境が多少悪くても保存がきき商売になっていたという面があったからだと思います。しかし、社長就任前から、何とかやり過ごしたらいいという空気感や、エンドユーザーを見ようとしないやり方に強い違和感を感じていました。そこで食品企業としてあるべき姿を実現するため、まず衛生環境の整備に取り組みました。取引先を広げようと思っても、製造現場を見せられないようでは話になりません。ポケットのない白服、頭全体を覆う帽子の着用など服装のルールを決めて徹底することから始めました。それらが実を結んで、2019年4月「大阪版職の安全安心認証制度」を取得でき、新規顧客の獲得にもつながっています。


IT化で労働環境も見直し。若い人にも魅力ある職場づくり着々と


もう一つ中尾氏が取り組んだのが、社内のIT化。チャットやグーグルカレンダーで製造予定をスケジュール化し、管理・共有するようになった。製造工程を見直し品質管理体制を整えた結果、賞味期限を90日から120日に伸ばせたという。ただこうした取り組み背景にあったもう一つの懸念が、人口減に伴う求人の難しさがありました。

労働時間や労働環境・就業規則・法律への対処などいろいろな面で遅れていました。社会保険労務士からは、このままでは労基署から働かせすぎだと指導が入りますよと言われるほどでした。そんなところに人材は来ませんよね。良くしようと思えば会社を変えるしかありません。IT化を中心とした取り組みで、休める体制が出来上がりましたし、若い人も入ってくれるようになりました。またIT化は同時に、攻めるための時間を生みだしてくれています。


健康食品こんにゃくの特性を生かした新商品「SHAPE MEN」と「IRON MEN」


こうした社内改革を進めるに先立って、先代に連れられて全国の同業者を視察して回った。その行く先々で食べ比べて見て感じたのが「うちのこんにゃくのスペックは間違いなく一番」という思いだった。菊松こんにゃくづくりをはじめ、これこそ先代が打ち込んできたことの成果だと、商品に改めて自信を深めるとともに、それをより深めることが自分にできるのかという思いも浮かんだ。そこで目を向けたのが、いいものをちゃんと作るという根底を維持しながらの新商品開発だった。

伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

こんにゃくは低カロリーなうえ腹持ちがよく、食物繊維が豊富で腸を整えてくれます。もともと、日本へ入ってきたのも医薬品としてだったほどです。こんにゃくの健康効果をアピールしたいと考えて構想から3年。2021年5月に最初に売り出したのが、「SHAPE MEN」(シェイプメン)です。牛乳を主成分とするカゼインプロテイン入りのヘルシーヌードルで、減量期のボディビルダーやタイムアタックするスポーツ選手に向いています。女子大生に試してもらったら、1カ月で3キロ体重が減ったという結果が出ました。次に出したのが、鉄分入りの「IRON MEN」(アイアンメン)。持久力を維持するのに効果的です。これらを「トレーニングヌードル」としてシリーズ化し、第3弾は商品化が間近ですし、第4弾も考えています。

マルシェで知ったコミュニケーションの大切さ。今後は海外展開も



ここにたどりつくまでには挫折もあった。スムージーブームに触発されてこんにゃくスムージーを発売。東京とハワイに出店し、好評ではあったものの飲食店のビジネスモデルが分かっていなかったため商売にならず、撤退せざるを得なかった。しかし、この挑戦も新しい取り組み「NAKAO MARCHE」に結び付いている。
伝統製法にこだわりながら新商品開発に挑むこんにゃくメーカーの4代目

東京青山のファーマーズマーケットで手売りしたのですが、その経験から、マルシェという形態には活気があることが分かりました。そこで、近隣の食品メーカーや農家さんなどに参加を呼び掛けて、会社の敷地内で複数の店舗にそれぞれの製品を販売してもらう「NAKAO MARCHE」を始めました。アマゾンや楽天は、商品はすぐに届きますが、1対1のコミュニケーションはできません。これに対してマルシェは、売り主とお客さんの間でコミュニケーションが生まれる集合体です。そこに製造現場の人も参加すると、モチベーションも大きく向上します。
さらに、ハワイでの経験も生かして、今後は海外販売にも乗り出していきたいと考えています。海外でも健康志向が強まっているだけに、期待は大きいです。こんにゃくの良さを世界の人たちに知ってもらうため、新しいチャレンジを続けていきたいですね。

昔ながらの製法にこだわる「菊松こんにゃく」から、こんにゃくの特徴を生かした新しい「トレーニングヌードル」そしてお客様との間で最も大切なコミュニケーションを生み出す「マルシェ」。4代目中尾氏のチャレンジは「コシ」のある中尾食品工業のこんにゃく同様、大変躍動的です。


中尾食品工業株式会社
本社:〒593-8312 大阪府堺市西区草部715番地
オフィシャルサイト:https://nakaoshokuhin.co.jp/

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