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「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営
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「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

2026.02.25
株式会社吉寿屋





株式会社吉寿屋 / 代表取締役社長 神吉一寿 氏



「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

大阪・天満で創業し、菓子卸売業界で確固たる地位を築く株式会社吉寿屋(よしや)。創業以来62年間、一度も赤字を出したことがないという驚異的な実績を支えるのは、2代目・神吉一寿氏の徹底した「誠実さ」だ。バブル経済の全盛期に入社し、配送のトラックドライバーからキャリアをスタート。カリスマ性が強かった父の背中を追いながらも、独自の組織改革を断行して経営を守ってきた。

真面目な働きぶりを取引先に認められた先代が創業



1964年、大阪で産声を上げた吉寿屋の創業者は、神吉一寿氏の父である。創業者の生家は、徳島県鳴門市で「傘屋」を営んでいた。11人きょうだいという大家族の暮らしは貧しく、祖父が父に語った言葉が、今の吉寿屋の原点となっている。
「商売をするなら、食べるものを扱うのがいい」
中学を卒業した父は、その言葉を胸に集団就職で大阪へやってきた。

就職先のおこし屋での真面目な働きぶりが取引先の目に留まり、23歳のとき『よしや』の屋号で店をやらないかと持ちかけられたそうです。その場所が、現在の天満店です。そうしたルーツがあるため、本社の登記も天満になっています


「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

神吉氏が同社に入社したのは1988年、バブル経済が最高潮を迎えていた頃だ。銀行への就職も考えていたが、父の言葉に背中を押されて家業に入った。

当時の就職活動は、どこを受けても内定がもらえる時代でしたが、父から『銀行へ行っても甘いから勉強にはならない』と言われましてね。それならばと、入社を決めました。もちろん、社長の息子でもいきなり幹部候補になれるわけではありません。最初の1年3カ月ほどは京都支店でトラックに乗り、配送や取引の現場を回りました。一番下っ端から叩き上げられたことが、私にとっては大きな土台になりましたし、現場を知るという意味で父なりの教育だったのだと思います


同族ワンマン経営からの脱却を目指して



神吉氏が代表取締役に就任したのは50歳のとき。当時の吉寿屋は、創業者の強力なリーダーシップのもとで成長を続けていたが、神吉氏はそこにある種の危機感を覚えたという。
同族経営にありがちな、創業者の言葉が絶対である「ワンマン経営」は、短期的な爆発力はあるが、永続性に欠ける。神吉氏は、会社の組織改革に取り組んだ。

「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

いわゆる同族経営、ワンマン経営からの脱却です。創業者は非常にカリスマ性があり、一度も赤字を出さずに会社を守り抜いてきた実績がありました。そのため、父の発する言葉には絶大な力があったのです。しかし、社員が上だけを見て仕事をするような体制では、いつか会社は行き詰まってしまう。私は自分に父のようなカリスマ性がないことを自覚していましたから、10年かけて一人ひとりが主体的に考えて動ける『組織』にしていこうと決めたのです


吉寿屋の特徴は、菓子卸という中間流通でありながら、半世紀以上にわたり黒字経営を継続していることだ。FC店や直営店舗では定価の3~4割引は当たり前で、中には7割引という驚きの価格でお菓子を販売している。その利益の源泉は、決して魔法のような手法ではなく、徹底した基本の積み重ねにある。

卸の仕事には、メーカーさんのような独自ブランドがありません。それでも創業以来、赤字を出さずに経営を続けてこられたのは、当たり前のことを当たり前に、徹底して継続してきたからです。例えば、弊社はメーカーさんや商社さんへの支払いが業界で一番早いことを自負しています。多くの企業が手形を切って支払いを先延ばしにする中、うちは現金で、しかも期日より早く振り込むことがあります。これは創業以来、一度も資金繰りに困ったことがないからこそできる、信頼の証でもあるのです


その信頼関係が、結果として他社には真似できない仕入れ力や、情報の集約へと繋がっていく。神吉氏は、父親とは異なるアプローチで、吉寿屋の「強さ」を再定義した。

父との実力差は歴然としていたので、若い頃は何かひとつでも超えようと焦った時期もありました。でも今は、自分の力を冷静に受け止めています。私が無理にワンマンを演じるより、社員が力を発揮できる環境を整えるほうが、結果として会社を強くできる。実際、組織としての形が整ってきたことで、コロナ禍以降の数年間で売上を100億円から200億円超へと倍増させることができました


そんな吉寿屋も、危機的な状況に見舞われる出来事があった。記憶に新しいコロナ禍だ。店舗スタッフに感染者が出たため、店舗を一時閉鎖して消毒を行わなければならなかった。

当時定められていたルールに従って消毒を行うのですが、自社でやるのか、公的機関がやるのかなど、細かい規定がありました。私も朝3時くらいから幹部を連れて現場へ行き、自ら作業をしたり役所へ提出する書類を作成したりしたことが、入社以来一番大きな出来事でしたね


「早起き」と「早めの支払い」がもたらす無形の資産



神吉氏には、他社の社長が真似できそうでなかなかできない習慣がある。早朝4時半には出勤しているのだ。営業マンの多くも、朝6時半には出勤して業務を開始するという。強制ではなく、自発的にそうなったものだ。社員には、当然ながら時間外手当が支給されている。
この「早起き」の習慣は、精神的なゆとりを生む重要な戦略だと神吉氏は語る。

「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

誰にでもできるけれど、なかなか続けられないことをやる。これが弊社のスタイルです。私は毎朝4時半から仕事をしていますが、この時間は誰からも電話がかかってきません。集中して物事を考えるには、これ以上の環境はないのです。渋滞を避けて出勤できるため移動時間のロスを最小限に抑えられますし、始業までの数時間で1日の準備を終えられます。こうした細かい時間の使い方の積み重ねが、経営判断のスピードや余裕に直結していると感じています


また、経営における「シンプルさ」も大事にしている。売上200億円を超える規模でありながら、取引銀行は創業以来一貫して三井住友銀行(旧住友銀行)のみ。業界の常識から見れば、取引銀行が一行だけというのは異例中の異例だ。

なぜ複数の銀行と付き合わないのかとよく聞かれますが、一行だからこそ手間がかからないし、元帳も一つで済みます。もしその銀行が融資してくれないのであれば、その投資は身の丈に合っていないということです。大変シンプルな話です。私どもは背伸びをせず、等身大の経営を続けてきました。メーカーさんや運送会社さんに対しても、人件費比率が高いところには早めに支払って喜んでもらう。そんな当たり前の配慮を積み重ねることが、巡り巡って自社の安定に繋がっているのだと思います


お菓子で「ノーベル平和賞」を目指す未来



2025年12月20日、吉寿屋は大阪文化館(旧サントリーミュージアム)5階に「お菓子ミュージアム天保山」をオープンさせた。懐かしいお菓子や縁日の屋台、お菓子メーカーが製作したオブジェなど、展示・体験・購入ができる空間だ。

「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営


お菓子ミュージアムを通じて、作る楽しさや歴史を伝えたいと考えています。最新の企画では、歴代のチョコエッグのフィギュアを1,000体以上並べたり、グリコさんの貴重な資料をお借りしたりと、他では見られない展示を増やしています。お菓子を食べながら怒る人はいませんよね。お菓子には人を笑顔にし、平和にする力があると信じています。大袈裟かもしれませんが、私は本気でお菓子を通じてノーベル平和賞が取れるくらいの活動をしていきたいのです

また今年1月から3月にかけて「純金の黄金糖」(57グラム)の販売がされている。これは「黄金糖」の創業100周年を記念して限定販売されたものだ。

「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営

最後に、共に働く社員たちへの想いを尋ねた。社員は「資産」であり、その家族の幸せまでを願う。それが吉寿屋の企業理念の核心にある。

最終的には、社員が人生の最期を迎える瞬間に『吉寿屋で働いてよかった』と思ってくれるような会社にしたいですね。転職が当たり前の時代ですが、私は辞めたいという人を引き止めたことはありません。外へ出ても『吉寿屋出身の人は素晴らしい』と言われるような、魅力的な人材を育てたい。私自身も、もう一度人生をやり直せるとしたら、また神吉一寿として生まれて、吉寿屋の経営をやりたいと思います。それほど、この仕事とお菓子には無限の可能性があると確信しているのです

一度も赤字を出さない堅実な経営の背景には、朝4時半の静寂が支配する社長室で巡らせる思索と、取引先や社員に対する誠実な「即時払い」の精神がある。カリスマ性が強かった父からバトンを受け継ぎ、お菓子の力で世界を笑顔にするという壮大な夢に向かって、これからも走り続ける。

「早朝4時出勤」の情熱と誠実 一度も赤字を出さない吉寿屋の「当たり前」を極める経営


株式会社吉寿屋
本社:大阪府摂津市鳥飼中3-3-36
オフィシャルサイト:https://www.okashi.jp/