株式会社星功 / 代表取締役 小笠原 大輔 氏
大阪市阿倍野区の星功株式会社は、塗装や防水をはじめ、大規模修繕工事を請け負っている。代表を務めるのは、中学校卒業後に塗装工としてこの世界に足を踏み入れた代表取締役小笠原大輔氏だ。職人として現場で10年の経験を重ねたのち、2010年に個人事業として創業し、翌2011年に現在の屋号でスタートした。

塗装業に就くまでは、ほかの仕事をしていたこともありました。だけどそのころの自分は、面倒くさいから休むとか、失敗したから次の日は仕事に行かないなど、すごく無責任な人間だったんです。だけど独立するまで働かせてもらった塗装会社の社長と出会って、180度変わりました。もちろん仕事には厳しい方なのですが、本質は優しくて男らしい。男が惚れる男といった人なんです。すごく親身になって育てていただいて、おかげで人間として成長できました。その社長にお世話になってからは、たとえ風邪をひいても、なにがあっても仕事を休まなくなりました。僕にすごくいい影響を与えてくれた人で、言葉にできないくらい感謝しています
恩人である社長の元で技術を高めていくうちに、独立したいという思いが頭をもたげてきた。
現場で塗装以外のほかの仕事を知るうちに、いろんなことをやりたいという思いが芽生えてきました。それで、社長に相談させていただいたんです。社長には残ってもらいたい思いもあったと思いますが、最後には『お前が決めたのなら、いいよ』と了承をいただいて独立するに至りました
独立を決めると、すぐに何人かの仲間が集まってきた。出発点は車一台が収まるほどのスペースしかない、シャッター付きのガレージである。当初は経験のある塗装を専門に、前職の社長のサポートも得ながら実直に仕事をこなしていった。確かな結果を残して実績を重ねるうちに信頼を高めていったが、ここに至るまでは悔しい思いも経験したという。

僕は不特定多数との関わりが好きではないので、特定の人との付き合いが中心なんです。そんな中で、当時僕たちの規模ではこなせないだろうという案件をいただきました。『僕らには無理です』とご相談させていただいたのですが、話をくれた方にはお世話になっていましたし、勢いにも圧されて受けたんです。だけど仕事を進めていくうちに、話がどんどん変わっていく。最初に『なにかあったら、助けてください』との約束も反故にされる。最終的には資金繰りもショートして、うちの会社が存続しないくらいの大失敗に終わってしまったんです
信頼していた人物だからこそ引き受けた仕事なのに、裏切られた結果になった。大きな赤字を抱え、ほかの仕事が回せない。そこで弱気になれば、両手を上げて会社を清算することになったかもしれない。だが、そうしなかった。なぜなら、星功を立ち上げたときから、揺るぎのない決意があったからだ。
僕の最終目的は、社会に貢献する企業を作ることなんです。目の前にあるたかだか数千万円の赤字をどうにかできない経営者では、そんなことは果たせない。これから自分がやりたいことは人や社会を力付けていったり、元気にしていくことなのに、こんなことでくじけていたら社会貢献ができるような企業は作れない。そのことを強く思って、乗り越えていきました
失敗から学び、人は成長する。それが形となって表れた、実際のエピソード
苦難を乗り越えるのに、飛び道具や必殺技を繰り出したわけではない。それまでと変わらず、実直に仕事を重ねる。自分たちの足下を再確認することで従業員間の絆は強くなり、会社はより骨太になっていった。当初は小笠原社長と数人の仲間で走り出した会社は、今では公共工事を請け負うなど、業界内で高い信頼を獲得している。従業員は13人に増え、年商は大手ゼネコンに引けを取らない4億円を稼ぎ出す。ここまで社を成長させた小笠原社長が、もっとも大事にするのは従業員だ。


最初は朝早くから夜の8〜9時まで働いて、土日も作業をしていました。業界的にも、それが当たり前みたいな風潮だったんです。それと同じことを、自分の大切な従業員たちにもさせてしまっていた。だけど僕がしないといけないのは、従業員たちに有意義な自分の時間を作ってあげることだと。それに気付いて実践していくうちに、会社の雰囲気はずいぶんと変わりましたね

従業員たちの気持ちに余裕が生まれたからか、たとえ誰かが失敗したとしても、ほかの誰かがフォローする文化が社に根付いたのだという。
本気で取り組んだなら、たとえ失敗しても得るものは大きいんですよ。その失敗から、なにかを学んでくれればいい。実際にみんなそうなっていますし、僕は彼らの力を疑いなく信じています。僕を含め、会社の全員がみんな同じ方向を向いている。それは自信を持って言えますし、チームワークの良さは弊社の自慢でもありますね

失敗から学べば、人は成長する。それを証明するような、実際にあった出来事を話してくれた。
これは入社して3ヶ月くらいで頭角を現してきた、若い男性従業員のエピソードです。我々はオーナーさんと協力業者さんの間に立って、仕事を進めていく立場。だから両者に伝える言葉に間違いがあれば、トラブルに発展しかねません。彼は本人なりにその立場で精一杯頑張っていたのですが、やはり経験が浅いこともあってトラブルが発生してしまいました。なので僕は『ここから先は大変になるだろうから、オレが引き継ごうか』と言ったんです
その言葉を受けて、若い従業員は口を閉ざす。しばしの沈黙ののち、彼の口から出た言葉が小笠原社長の魂を強く揺さぶった。
『社長。やっぱり、これは僕にやらせてください。僕が責任を持って、やりたいです。その結果もし本当に失敗したら、そのときは社長の力を借りていいですか』と言ったんです。彼のその言葉は、僕の胸に強く響きました。この言葉が生まれる背景を僕だけが作っているのではなく、僕のそばにいてくれている従業員ひとりひとりが、彼を育ててくれている。そう実感できたことにも、本当に震えました。どんどんチャレンジして、誰かの失敗もみんなでシェアして学んでいって、みんなでいい会社にしていこう。これは僕の独りよがりではなく、会社の全員で共有している思いだと自負しています
心に余裕が生まれれば、他者を助けられる。それが、社会貢献の基盤
独立から16年。なにもかもが順調だったわけではないが、会社は確かな成長を遂げてきている。40歳の若き経営者の頭のなかには、次の目標が明確に記されている。
売り上げ30億円の会社にすることです。そのために必要なのは僕の成長と、今後も変わらず、いや、さらに仲間たちと信頼を深め合って会社を進めていくこと。達成見込みは100%。それには、なんの揺るぎもありません。そこからさらに成長を伸ばしていって、この会社を立ち上げたときからの思いである慈善事業に本腰を入れていきたい

小笠原社長が考える慈善事業は、ただ単純に利益を社会に還元したり、奉仕活動を行うといった表面的なことではない。
会社として慈善事業を行うためにはまず、自社の従業員とその家族が幸福感と満足感を豊かに持たないといけない。従業員の心が満たされて余裕が生まれることで、他者を助けることができる。僕はそれが、社会貢献の基盤だと考えているんです。それを踏まえたうえで、本当の意味での社会貢献ができる会社に成長させていきます
社名にした星功は、「成功」を語源とする。

社名に込めた思いはシンプルで、言葉の通りに成功する・成功させるということです。そこから『成』の文字を、『星』に変えました。社のシンボルマークも星がモチーフで、社名の頭文字であるSから放たれる3本の輝くラインとで構成しています。1本目はお客様、3本目は企業である我々、真ん中の線は両者をつなぐ絆を意味しているんです。3本の光はどれが欠けても成立しませんし、それぞれが合わさってひとつの星になる
星に込めた思いは、最大限の信頼を置く従業員に向けられたものでもある。
従業員ひとりひとりも星になって、それぞれに輝く。その思いも、込めています。今もみんなそうなってくれていますし、これからさらに輝きを増していってくれる。僕はそう、確信しています
小笠原社長は持ち前の推進力で、会社と従業員という星をさらに輝かせていく。
