ナカタ産業株式会社 / 代表取締役 中田惠三 氏
設立から40年にわたり、ビルメンテナンス業を展開するナカタ産業株式会社。
近年はビルの給水設備と空調設備の保守・点検を中心に業務を担う。
長年の信頼と実績によるリピートや紹介顧客が中心となり、積極的な営業活動を行わずとも安定した受注が続いている。
創業者である中田惠三氏は「盛和塾」(※1)での学びを経て30年目に経営の本質に気づき、「経営元年」として新たなスタートを切った。
以後、利他の精神と社会貢献を軸に、利益をしっかり上げながら社員や地域に還元する経営へと舵を切った。
(※1)盛和塾:1983年に京セラ株式会社の創業者稲盛和夫が京都の若き経営者に「いかに経営をすべきか教えてほしい」と依頼されたことを機に、25名で始まった。「心を高め、会社業績を伸ばして従業員を幸せにすることが経営者の使命である」とする稲盛の経営哲学を学んだ。盛和塾の塾生数は、2019年末時点で国内・海外合計104塾で15,000名以上にのぼる。

第2創業期<利益を上げて税金をしっかり納める>
商売を始めてからずっと、年度末には利益を調整し、税金をなるべく納めないようにするのが上手い経営者だと思っていました。しかし、盛和塾では「しっかり儲けて税金を納める。そうしなければ会社は良くならない」と言われ続けていましたが、その意味が長い間理解できませんでした。
27期目の時、周囲から「これで利益を上げているつもりですか?経営者失格ですよ」と厳しく指摘されました(笑)。
学びを深めるうちに、純資産を増やさなければ会社に余裕は生まれず、資金を借り続けなければならない。つまり、無借金経営を実現するには、利益をしっかり確保しなければならないと考え方を改めた。
税金を納めることが社会貢献であるなら、まずはしっかり利益を上げ、それを社会に還元する必要があります。利益を出せば寄付もできる。困っている人を助けられるんです。
東日本大震災の際、社員から「会社として何かしましょうよ」と声が上がったことをきっかけに、岩手県の山田幼稚園へ毎年30万円の寄付を10年間続けた。この経験を通じて、単なる営利企業ではなく、社会に貢献できる存在であるべきだという意識が社内に根づいた。現在も子ども支援をはじめとするNPO団体への寄付や地域貢献を継続している。
中田氏は、富士通の代理店でIC(集積回路)販売の営業を経験後、独立。書道家を志すも業界の厳しさを痛感し、将来性を見込んでビル管理業に転向した。
創業当初は知人の助けを得ながら飛び込み営業を続け、資金繰りや顧客からの信頼獲得に苦労した経緯がある。
誠実な仕事を積み重ね、少しずつ信頼を築いていった。やがて顧客企業の紹介が増え、事業は安定軌道に乗る。
こうした努力の積み重ねが、現在のナカタ産業の基盤となっている。

中田氏の直筆。書道家を目指した時期もあった。
ご先祖様への感謝が企業の成長をもたらす
現在、ナカタ産業は営業活動をしなくても、リピートや紹介で仕事が舞い込む仕組みが確立されている。
ポンプメーカーからの仕事で現場に行った際、JR(西日本)の担当者が作業姿を見て「名刺をください」と言ってくれました。それがきっかけでJRの仕事を受注できたんです。通常は小さな会社がJRと取引するのは難しいですが、真面目な取り組みを評価された結果だと思います。
また、取引先の社員が転職後も「ナカタ産業なら安心」と、新しい職場の仕事をもらえるケースも多い。
「前職でお世話になった〇〇ですけど、仕事お願いできますか?」と連絡が来ることも一度や二度ではない。
こうした巡り合わせは「先祖が応援してくれているから」と中田氏は語る。
奈良時代からの先祖を全員足せばおよそ9,000兆人の計算になるといいます。1人欠けても今の自分はいない。自分を生かしてくれた先祖9,000兆人が応援してくれていると思うと、自然と感謝の気持ちが生まれるんです。
小手先のテクニックに頼らずとも、先祖が喜ぶようなことをすれば万事上手くいく。中田氏はここ5年間で強くそう感じるようになった。

親孝行報奨金制度と水分補給支援
ナカタ産業では、社員が快適に働けるよう独自の制度を設けている。そのひとつが「親孝行報奨金制度」だ。
誕生日を迎えた社員が親孝行体験をレポートにまとめて提出すると、1万円が支給されるものである。
最初は3,000円だったが、レポートを出さない社員が居たため、1万円にしたら、みんなちゃんと書くようになったようだ。
また、夏場の熱中症対策として「水分補給支援」も行っている。
7月から9月は毎月封筒に使い易い様に1,000円札を5枚(合計5,000円)入れて現金で手渡ししています。給料として振り込むと家族の生活費になってしまうので、直接渡すことで、確実に水分補給に使ってもらえるようにしています。
また、経営の透明性を大切にし、会社の数字を全社員にオープンにしている。そのため、利益が出た際にはしっかり社員に還元。自分の努力が会社の成長にどうつながり、それがどのように還元されるのかを明確にすることで、働く意欲につなげている。

「ナカタイズム」で三方良しの経営を実践
中田氏は、今後の事業拡大に向けて、より多くの人材を育成し、組織を強化していく考えだ。
事務所を50人体制にしたいですね。何よりも、社員の給料をもっと上げたい。ここ数年でだいぶ上げてきましたが、さらに上げたいと思っています。社長にとって、給料を上げる喜びは大きいんです。最近は家を建てたり、車を買ったりする社員が増えてきました(笑)。夢を語れる会社になってきたなと感慨深いですね。
こうした考えのもと長年の経営経験から「ナカタイズム(大切にしたい価値観)」としてこれまでの経営理念のまとめに乗り出す。企業の価値観を5つの柱にまとめた。
<健康と安全> 私たちは、健康と安全のために全員で社内環境を整えます。
<誠実・正直> 嘘をつかない、ごまかさない。信頼を築き、一流の技術を磨き続けます。
<すべてに感謝> 「ありがとう」でいっぱいの社内にします。
<三方良しの関係性> ナカタ良し、お客様良し、社会良しで発展し続けます。
<夢の実現と挑戦> 全員の未来が豊かになる「夢」を実現するために挑戦し続けます。
「ナカタイズム」を浸透させることで、社員がただ働くだけでなく、自分の将来を考えながら成長できる環境を整えていく。
中田氏の目指す未来は、社員が安心して働き、夢を持ち、社会に貢献できる会社を作ること。
社員もお客様もご先祖様も、そして支えてくれたすべての人が喜ぶ会社にしていきたいですね。
この思いこそが、ナカタ産業の成長を支える原動力となっている。
これからも誠実な経営と利他の精神を貫き、社員とともにさらなる発展を目指していく。

