care bell ケアべる / 濵口真佑実 氏
~栄養を通して心と身体が<健幸>な人を増やしたい~
「ケアべる」の代表 濵口真佑実氏は管理栄養士という立場から、食を通じて人と社会を変える挑戦を続けている。
スポーツジムや整骨院との共同プログラム、企業の健康経営支援、管理栄養士の地位向上への取り組み。
ヘルスケア産業に新しい地平を切り拓く濵口さんに、これまでの足跡と今後のビジョンについて伺った。
食で人を笑顔に――鹿児島の剣道少女の決意
鹿児島県枕崎市。美しい海に面した小さな町で、濵口氏は生まれ育った。
子どもの頃の濵口さんは、3才上の兄の背中を追い、剣道に打ち込むスポーツ少女だったという。
そんな彼女が「食」に関心を持ったのは、中学時代の「将来の夢を考える授業」がきっかけだった。
食べることが好きだった濵口氏は、素直に「グルメリポーターになりたい」と夢を語った。だが、教師の「女の子には厳しいだろう」という一言で、現実的な進路を探すことになる。そこでふと思い出したのが尊敬する友人の母だった。
その方が管理栄養士として老人ホームで働いていたんです。友達と職場に遊びに行った時、入居者さんが笑顔で食事をしている姿を見たことがあって。そのとき「食で人を笑顔にできる仕事があるんだ!」って思ったんです。
管理栄養士を目指すため、福岡の大学に進学。
管理栄養士の国家資格を取得した後は、福岡県内の病院に就職する。回復期病棟で入院患者の栄養管理や食事指導にあたり、患者一人ひとりと向き合った。
しかし現場で目の当たりにしたのは、病気になった後に後悔する患者たちの姿だった。
働き盛りの若い世代が、脳梗塞や心筋梗塞を患い、社会復帰できず苦しむ姿もあったのだ。
健康を害してから後悔する患者さんが多くて。食生活の悪さが病気を引き起こすケースを見て、食事や栄養の重要性を改めて実感したんです。
予防医学に以前から関心があった濵口氏。病気になってから治すよりも、悪くなるのを防ぎたい。何より「食で人を健康にしたい」ーその瞬間、彼女の人生の軸が決まった。
福岡の病院勤務時代
病院から未病へ。スポーツジムへの営業で可能性を広げる
その後「病院ではできることが限られる」と、健康診断後の特定保健指導を担う仕事に転職する。この時、会社勤めと並行して個人としても活動を始めた。
スポーツジムに飛び込んで、「できることはないですか?」と手あたり次第アプローチしたんです。「なんでもやります!」って。
と笑う濵口氏。無償でも構わない、とにかく「人を健康にしたい」という思いだけで動き続けた。
最初は栄養に関する掲示物づくりからスタート。その後も飛び込み営業を続け、提携するようになったスポーツジムは遂に10を超えたという。やがてその先への紹介も広がり、栄養セミナーや食事指導を依頼されるようになった。
栄養指導をした方が、お子さんを紹介してくれたこともありました。ひどい肌荒れで悩んでいた男性で、皮膚科や漢方などを試したけど良くならなかったのですが、食事指導で改善したんです。
自分の大切な家族を紹介してくれたときの喜びは、今も忘れられないーこの経験は目指す方向への大きな自信になったという。
多くのイベントにも参加
腕を見込まれ大阪に!オリジナルプロテインも開発
口コミで仕事が広がるなか、大きな転機が訪れる。尊敬する大阪の経営者が「一緒に働こう」と声をかけてくれたのだ。
「真佑実の知識と人柄で、うちの飲食店をもっと良くしてほしい」という申し出だった。
彼女は迷わず福岡を離れ、大阪へ。系列の飲食店で料理長を務めた後、現在は多数の企業の栄養指導やコンサルティングを請け負う。
現在はオリジナルのプロテインも販売する。きっかけは福岡時代、あるジムからの相談だった。
「ジムでオリジナルプロテインを作ったが、プロの視点からのアドバイスが欲しい」と言われたことから、プロテインの製造監修を手掛けることに。
この経験から濵口さん自身でもオリジナルプロテインブランドを立ち上げることになる。
商品名は「Rebien(リビアン)」。フランス語の「Bien(良い)」と、「循環する」という意味の「Re」を組み合わせた造語だ。
濵口さんは成分設計はもちろん、資金調達、デザイン、製造という全工程をプロデュースする。
主成分であるホエイパウダー(※)は、牧草だけを食べて育った牛の「グラスフェッドホエイ」を使用。
砂糖・人工甘味料・香料不使用で、栄養価の高さと美味しさを両立させた自信作である。
「大切な人に毎日飲んでほしいものを作りたい」という信念から、子どもでも安心して飲める品質が特長だ。製造は宮城県の就労支援施設と提携し、製品の背景にも“人を支える”仕組みを組み込んだ。
(※)ホエイパウダー:チーズを製造する際にできる乳清(ホエイ)を乾燥させて粉末状にしたもの。乳清は、牛乳から脂肪分やカゼイン(もう一つの主要なタンパク質)を取り除いた液体のことで、ホエイパウダーには、乳清に含まれるタンパク質、ミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれている。
「みんながもっと自分らしく健康に」ー食を軸に、社会を変えていく
管理栄養士という立場から食を通じて人と社会を変えようとする濵口氏の歩みに、無理や気負いはない。
自然体でほがらかに笑みを絶やさず、周囲を明るく照らすその姿には、食の力を信じ、前に進む強さがにじんでいる。
現在は企業の健康経営支援にも取り組み、組織のパフォーマンス向上や社員の健康づくりに貢献。さらに管理栄養士の雇用創出や地位向上にも目を向け、仲間とともに業界全体の価値を高める仕組みづくりを視野に入れている。
「みんながもっと自分らしく、健康で、幸せに生きられる社会をつくりたい」
その思いを胸に、濵口氏の挑戦はこれからも止まることなく続いていく。
彼女の歩みは、食がもたらす未来の可能性そのものであり、これから出会う人々の人生を、確かに豊かにしていくはずだ。