ラポールユニバーサルサポート合同会社 / 代表社員 上田 尭弘 氏
「介護の仕事をやってみたら?」
ラポールユニバーサルサポート合同会社 代表社員 上田尭弘氏の人生を変えた同僚の一言だった。
生涯をかけてやりたいことが定まってなくて、とりあえずフリーターとして食品卸会社のルート配送をしていた上田氏は、介護業界があることさえ知らなかった。しかし、こう言われて調べみたところ「高齢者の生活を支える」というやりがいに魅かれ、高齢施設のスタッフとして働き始めることに。
利用者と向き合う日々に大きなやりがいを感じる一方、介護保険の枠内でサービス提供することの限界も感じ、2011年 自ら会社を設立した。
介護報酬が下がって事業者の取り巻く環境が厳しい中、働く人の所得をひき上げて介護を誇れる仕事にしたいと上田氏はあるプロジェクトを立ち上げ、つながりを生み出すことで業界を変えていこうと挑戦を始めている。

保険内の限界を痛感。保険外サービスに可能性をみる
高齢施設のスタッフとして、食事や入浴、排泄のお手伝いをするようになった1年目は、前職の食品卸業との落差に戸惑いながらも、高齢者と向き合い、お世話をすることで感謝の言葉をもらえることに大きなやりがいを感じていた。
前職では月収40万もらっていましたが、介護業界に移って約半分に減りました。さらに、自分のペースで動けたルート配送の仕事から、時間や業務内容が細かく決められた施設での勤務に変わったことで、気持ちの切り替えにも苦労しました。夜勤では一人で30人の利用者を担当しなければならず、その環境に慣れるのにも時間がかかりました。それでも、利用者さんから「ありがとう」と言ってもらえるのは本当にうれしいことで、自分の存在意義を最大限感じられる瞬間でした。
一方、上田氏は、経験を重ねるうちに、できることの限界にも直面した。
施設では集団生活で、朝昼のごはんの時間、お風呂に入る曜日、トイレに行く時間などがすべて決められていて、自分で選ぶことができません。また、基本的にサービスはすべて施設内で完結できるものに限られていました。ある利用者さんが「死ぬまでにどうしても広島へお墓参りに行きたい」と話されましたが、遠方ということもあって1人で長時間出かけるのは現実的でなく、私たちにできたのは広島の写真や映像を見てもらうことくらいでした。
この件をきっかけに利用者のニーズに応えられる方法はないか、情報収集を始める。
探してみたところ、利用者さんの外出のお手伝いをしたり、旅行に連れていくサービスがあることに気がつき、「すごい!こんなサービスがある」と感動しました。
介護保険サービスは公的なサービスであるため提供できる内容が決まっていて、多様化する利用者のニーズに十分応えられない。利用者さんが望む生活を手に入れてもらうためには保険外サービスがどうしても必要だと考えるようになりました。

こうして上田氏は、資金もノウハウもない状態から3、4年かけて準備をし独立した。
「一緒にやってほしい」と声をかけた高校の同級生、求人に応募してくれた2人を加えた4人が初期メンバー。
保険外サービスへの潜在ニーズは大きいが、実費負担となるため利用者さんにとって依頼するハードルが高いため、まずは事業の安定を優先して保険内のケアプランセンター(居宅介護支援事業所)と訪問介護事業の2本柱で始めた。
金融機関で借入をして正社員4人分の人件費がかかる中、ゼロから利用者さんを獲得していくところからのスタートでした。紹介を頼りに、包括支援センター(※1)や病院、看護師さんを訪ね歩きました。なんとかやっていけると手応えを感じられたのは、1年半くらいたった頃でしょうか。
(※1)包括支援センター:高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、介護・医療・福祉・健康など様々な面から総合的に支える地域の拠点。市区町村が設置主体となっている。

経営理念とスタッフの想いを一致させる職場づくり
立ち上げ当初、上田氏自身も担当の利用者さんをかかえてケアプランの作成もしていた。そのためスタッフへのフォローがうまくできずに退職者を出してしまい、新しい人が入っても定着しないということが続いたという。
当時は“必死のパッチ”で目の前のことだけをやっている状態でした「こうしたほうがいい」とか「もっと改善してほしい」とスタッフに求めるばかりで、職場の環境を整えようとか、どんな風にしたら働きやすいかという視点がありませんでした。
組織づくりの重要性を痛感した上田氏は、会社の目指す方向性に共感してもらうことを大切にし、スタッフ一人ひとりが自分のやりたいことを実現できる環境づくりを進めた。
現在、常勤スタッフ6名、15名のパートスタッフに恵まれている。
ありがたいことに、今はすごく会社のことを大切に思い、お互いに助け合う姿勢のある素晴らしいメンバーばかりです。さらに、スタッフ一人ひとりが訪問介護を通して自分の趣味や特技を生かしながら利用者さんの多様なニーズに応えることができるようになってもらって、『ライスワーク(生活のための仕事)』ではなく『ライフワーク(人生の目的としての仕事)』としての仕事ができる職場にしていきたいと思います。
地域資源を可視化して相互につながり、これからの介護業界をつくっていく
一方、介護業界全体に目を向けると、取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。
介護報酬は3年ごとに改定されるが、近年は引き下げ傾向が続いて事業者の経営を圧迫している。この現状を乗り越えるため、上田氏が立ち上げたのが全国の在宅介護サービスが見つかる総合検索サイトポータルサイト『かいごねっと』だ。

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護における要です。利用者の状況を丁寧にヒアリングして、一人ひとりの状況に応じて提案・手配する必要があります。しかし、例えば、運動特化型デイサービス、宿泊、福祉用具など、地域にある多様なサービスを提供する各事業者の特色を把握するのに十分な情報がありません。行政が提供する全国規模の事業者情報も文字だけの一律な内容で中身が見えにくく、ケアマネジャーにとって使いづらいものです。
上田氏は必要とされる地域医療・介護情報を可視化して利用できるように、自身のケアマネジャー経験をもとにして、周囲のケアマネジャーの意見もとり入れながらサイトを設計した。2024年10月から本格稼働している。
『かいごねっと』では、弊社が掲載ページの最初の形をつくりますが、ホームページのように完全に固定されたものではなく、利用する事業者さんが各自で写真や動画なども含めて自由に掲載し、更新できる仕組みにしているので、各事業所や利用者、家族、ケアマネジャーが新鮮な情報を見ながら比較検討できます。保険外サービスにスポットライトを当てて、地域のサロン、体操、配食・リフォーム・遺品整理・介護タクシー・遺品整理・認知症の支援など多様なサービスを紹介している点も特徴です。
介護利用者や介護に携わる人が相互につながれる仕組みをつくって介護業界を底上げしたいという上田氏。
渾身の『かいごねっと』は介護業界に多大なインパクトをもたらすだろう。これからに注目だ。

