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「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い
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「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い

2026.08.06
合同会社Le'coeur(ルクール)

合同会社 Le'coeur / 代表・介護コンシェルジュ® 高岡秀明 氏



介護や福祉は、必要になって初めて関わるもの。そんな印象を持つ人は少なくないかもしれない。しかし、地域で暮らす一人ひとりの人生は、年齢や制度の区分だけで切り分けられるものではない。

堺市美原区に拠点を構える合同会社Le'coeur(ルクール)は、高齢者のデイサービスやケアプランセンターを軸にしながら、カフェや介護事業のコンサルティング、地域づくりにも取り組んでいる。
代表・介護コンシェルジュ®の高岡秀明氏は、介護業界で30年以上、現場と制度、地域の間に立ち続けてきた。

「介護だけ」では、人はなかなか集まらない。だからこそ、カフェや公園、防災教育を通じて、福祉をもっと日常の中にひらいていく。
高岡氏が形にしようとしている、これからの地域福祉のあり方を聞いた。

「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い


壁・フェンスのないデイサービス。介護を地域の日常に開く場所


堺市美原区の美原ふる里公園に隣接するLe'coeurの拠点には、デイサービスでありながら、地域の人がふらりと立ち寄れる空気がある。

Le'coeurは、フランス語で「心」を意味する言葉だ。
高岡氏はこの名前に、ひとつの意味だけではなく、志や想い、人と人をつなぐ感覚を込めてきた。
介護をサービスとして提供するだけでなく、目の前の人の暮らしや地域との関係にどう向き合うか。その考えは、現在の拠点づくりにもつながっている。

Le'coeurの敷地内にはカフェがあり、コーヒーを飲みに訪れる人がいる。隣の公園には、夕方になると、学校を終えた子どもたちが自転車のかごにサッカーボールを入れて遊びにやって来る。堺市とLe'coeurとの協定により、施設の敷地と公園の間に壁やフェンスはない。子供たちはデイサービスの利用者と言葉を交わす姿も見られ、介護施設というよりも、地域の日常の一部に溶け込んでいる。

その風景は、外から訪れる子どもたちだけに限らない。Le'coeurでは、スタッフが子どもを連れて出勤する。その数、実に7割のスタッフにも及ぶ。子どもたちにとっても、高齢者と普段から触れ合う空間になっている。

高岡氏は以前から、子どもが職場にいる環境づくりに取り組んできた。最初は現場の理解を得る難しさもあったが、少しずつ受け入れられ、今では子どもも含めて同じ場所で過ごす空気が生まれている。

高岡氏は、この場所を自身の介護人生の「集大成」と表現する。
現在の拠点が生まれる背景には、介護や医療に関わる仲間たちとのつながりもあった。高岡氏は以前から、地域や福祉に関心はあるものの、既存の交流の場には足を運びにくい人たちが集まれる関係づくりにも取り組んできたのだ。

介護事業を始めて、もう33年目。ここは、僕がやりたかったことの集合体、集大成みたいな場所なんです。デイサービスがあって、ケアプランセンターがあって、カフェがあって、コンサルティングもまちづくりもしている。
ここを次の世代に向けての発信拠点にしていきたいと思っています。



Le'coeurを構える美原区は、堺市の中でも人口規模の小さなエリアだ。もともとは美原町であり、今も地域の結びつきが残る。かつて周辺には田んぼが広がり、その後、少しずつ住宅地へと変わってきた。
ここで生まれ育った高岡氏は、この地の規模感と人のご縁が可能性として捉えている。

小さな区だからこそ、いろんな実証実験がしやすい。大阪で見れば田舎かもしれませんが、日本全体で見れば都市部でもある。だからこそ、ここでできた仕組みは、もっと小規模な地域にも、ほかの都市部にも応用できると考えています。


介護事業だけで完結させるのではなく、カフェを通じて一般の人にも足を運んでもらう。公園を歩くことでリハビリに活用し、地域や行政、学校とも関わりながら、まちの中で試せることを一つずつ形にしていく。

Le'coeurの拠点には、高岡氏が長年考えてきた「介護と地域のあり方」が詰まっている。

「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い

カフェを入り口に、地域の人が福祉に触れるきっかけをつくる


Le'coeurの大きな特徴の一つが、デイサービスに併設されたカフェ「高岡珈琲」の存在だ。

高岡氏にとって、カフェは昔から一度やってみたい場所でもあった。出発点には、漫画『タッチ』(※1)に出てくる喫茶店への憧れもあったという。だが、Le'coeurにカフェを置いた理由は、それだけではない。

(※1)漫画『タッチ』:漫画家あだち充の代表作。双子の兄弟、幼馴染のヒロインの3人を中心に描かれる青春ラブコメディ。

介護や福祉って、必要になって初めて関わる場所になりがちなんですよね。普段から「福祉と関わりましょう」と言われても、なかなか足を運びにくいところがある。だったら、まずはコーヒーを飲みに来てもらえる場所にした方がいい。カフェがあれば、介護を必要としている人だけじゃなく、地域の人にも気軽に寄ってもらえるのではないかと思ったのです。


その考えを後押ししたのが、以前勤めていた施設で見た光景だ。
有料老人ホームの敷地内に、本格的なカフェがあった。工業地帯の中にありながら、毎日のように行列ができていたという。

ホテルの総料理長をされていた方がシェフをしていて、本当においしかった。場所がどこであっても、おいしいものには人が集まることをその事例から学びました。だから、うちのカフェでも提供するものには妥協しません。自家焙煎したスペシャルティコーヒー(※2)や、パティシエが手がけるケーキをお客様にお届けしています。
(※2)スペシャルティコーヒー:国際的な評価基準、全4ランク中の最上位であり、「誰が、どこで、どのように作ったか」が明確な最高品質のコーヒーをいう。高岡珈琲ではインドネシアの農園から直輸入で仕入れた最高級のスペシャリティコーヒー等を使用している。

一方で、空間のつくり方にも気を配る。

年齢層やターゲットは絞りませんでした。若い人に来てもらえるのはもちろん嬉しいのですが、僕が来てほしいと思っているのは、さらに上の世代の方たちでもある。おしゃれすぎる店にしてしまうと入りにくさも出てくるでしょうから、何よりも入りやすさを大事にしました。


実際、カフェ「高岡珈琲」には地域の人が日常の延長で訪れる。中には、99歳で歩いてコーヒーを飲みに来る人もいるという。

コーヒーを楽しみ、誰かと顔を合わせる。そしてすぐそばに介護や福祉の場所があることを、少しずつ知っていく。
Le'coeurのカフェ「高岡珈琲」は、介護を必要とする人だけの場所にとどまらず、地域の人がふらりと立ち寄る日常の中に、福祉との接点をつくっている。
「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い


子どもたちが未来の地域を変える!“福祉防災”の取り組み


高岡氏が「福祉防災」と呼び、発信している取り組みがある。
災害時の備えを、福祉と切り離さず、地域づくりの中に組み込んでいく考え方だ。

福祉防災というのは、普段からのまちづくりを整えたうえで、福祉と連携して防災に取り組むことです。災害が起きたとき、認知症の人や子ども、お年寄り、乳児のように支えが必要な人たちをどこで受け入れるのかは、後回しになりがち。でも本当は、一番最初に考えなあかんところなんですよね。町ごと普段から整えていたら、有事の時にすぐ動けますから。


その発信は、防災教育にもつながっている。
高岡氏は地域の小学校で、4年生が防災や災害について学ぶ授業に関わってきた。最初は1時間だけ話す予定だったが、先生たちとの打ち合わせの中で内容が広がり、最終的には丸一日を使うプログラムになったという。

授業では、堺市の防災センターで地震の揺れなどを体験したあと、子どもたち自身が「防災バッグ」の作り方を考える。その成果を発表したのち、体育館では段ボールと布を使って、避難所での空間づくりも体験。さらに年に一度開かれるイベントでは、防災をテーマにした謎解きに参加し、自分の知識を確かめる。

実際に体験してもらうことを大切にしています。ただ話を聞くだけではなくて、謎解きに参加したり、景品をもらったりしたら、「この場所で防災のことを学んだな」と記憶に残るはず。小学校4年生の間に、防災という言葉を頭にインプットさせたいのです。


子どもたちが防災や福祉に触れて育つことで、10年後、20年後の地域に、災害時に動ける若者が増えていく。その積み重ねに、福祉防災を続ける意味があると考えているのだ。

町まるごとで防災に取り組みたいという思いはずっとありました。でも、いきなり「やりなさい」と言われても嫌じゃないですか。日常でやっていることなら違和感がない。子どものうちに感性を高めてもらうことで、無理に頑張らなくてもこのエリアの意識が変わっていく仕組みを作りたいんです。


福祉防災は、防災を学ぶ場であると同時に、地域に助け合いの感覚を根づかせていくきっかけでもある。

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「一律のサービスでいいわけがない」 地域で支える福祉の未来へ


高岡氏にとって、父親が役所の福祉課にいたこともあり、福祉はまったく遠い世界ではなかった。ただ、高齢者介護の世界に惹かれた直接のきっかけは、専門学校時代の実習にある。

児童福祉や障がい福祉の現場にも触れたが、高齢者の実習で利用者から「ありがとう」と言われたことが心に残った。職員の手が届かないところを少し手伝い、話し相手になる。その積み重ねが、利用者にとっては嬉しいことだった。

そこから介護の世界に入り、利用者と向き合ってきた。一方で、高岡氏の歩みは、現場の仕事だけにとどまらなかった。若くして施設運営の実務を任され、法人運営、資金繰り、行政との調整、時には係争にも向き合ってきた。

本当は、介護や福祉、従業員のことに専念しないといけなかったんです。でも、経営のことも頭に入れないといけなかったし、相手が変われば、その都度知識も必要になる。そうやって行政との付き合い方も、20年ぐらいかけて学んできました。


ただ要望を伝えるだけでは、行政との連携は進まない。何が認められ、どこを整えれば実現に近づけるのか。
相手の立場を踏まえながら課題を一つずつ解いていく。その積み重ねが、現在の「介護コンシェルジュ®(登録商標)」としての活動にもつながっている。

その経験から、高岡氏は介護事業者に対しても「頑張るところを間違えないこと」を伝えている。

介護事業には、守らなければならない基準や手続きがある。ただ、すべてを同じ重さで抱え込む必要はない。行政が見るところ、絶対に外してはいけないところを押さえたうえで、現場が力を注ぐべき場所を見極める。

たとえば、介護の現場では書類も多い。4種類の書類に同じ内容を書くような作業があれば、行政に確認し、一つにまとめられる部分を探します。必要なことは守りつつ、無駄な手間は減らす。その判断ができれば、現場はもっと利用者に向き合えるはずなんです。

この業界には現場の職人がたくさんいます。でも、“職人ではない”知識を持った人も育てていきたい。
そこに加えて、行政との付き合い方や事業の作り方が分かる人が増えたら、できることはもっと広がるでしょう。

「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い

同時に、介護の現場で必要なのは、「制度や業界の当たり前に、利用者を当てはめない」ことでもある。

利用者になる人たちは、それまで町で普通に暮らしていた人たちです。いろんな仕事をして、いろんな生活をしてきた人が、ある日、病気になったり認知症になったりする。その人の人生をサポートするのに、一律のサービスでいいわけがないんです。

制度を理解し、行政と向き合い、事業を続ける力を持つこと。そして、目の前の一人を正しく一人として見ること。
高岡氏が次の世代に渡そうとしているのは、介護の現場を支える技術だけではない。介護を地域の中で続けていくための知恵と、利用者の人生に向き合う姿勢である。

今後は、「高齢者支援だけでなく、聴覚障がい者の就労支援にも取り組み、福祉の領域をさらに広げていきたい」と語る高岡氏。
さまざまな人が地域の中で関わりを持つ場づくりへの挑戦は、Le'coeurという一つの拠点から、少しずつ地域へ広がり始めている。

「介護をまちの日常へ!」介護とカフェと防災教育。介護コンシェルジュ®、33年の想い



合同会社Le'coeur(ルクール)
本社:大阪府堺市美原区大保13
オフィシャルサイト:https://lecoeur-osaka.com/