ユニオンエタニティ株式会社 代表取締役 安部 哲史氏
廃車業界の市場は、年々縮小しています。でもウェブで集客するとなると話は別です。
日本国内で1年間に販売される新車の台数は、約450万台です。では、1年間で「廃車」にされる車の台数は、どのくらいでしょうか。
実は新車の販売台数と、ほぼ同じと言われているほど、廃車市場は巨大なマーケットなのです。しかし、自動車の耐用年数の上昇や景気後退により、その規模は少しずつ縮小。加えて、廃車の取引はアナログ主体で、効率化されていない部分ばかり。
そんな廃車市場にITの力で挑むのが、ユニオンエタニティ株式会社 代表取締役 安部哲史(さとし)氏です。

「0円以上の買取保証」実現の要は業者とのネットワーク
ユニオンエタニティが提供する廃車買取サービス『ハイシャル』 https://haishall.jp/ は「手数料無料」「0円以上の買取保証」で廃車を請け負ってくれるサービス。
利用者の手間は、コールセンターとやりとりをして必要書類をそろえるだけです。
廃車業界は、まだまだ情報がオープンでない業界です。愛車を廃車にしたいと思っても、情報の集め方がわかりづらいですし、そもそも廃車手続きを行う機会は一生のうちでほとんどありませんよね。ハイシャルでは、廃車に伴う面倒な手続きをすべて引き受けています。

動かない車や車検切れの車にも対応しており、引取可能な地域は日本全国。2020年度の年間相談件数は7万5000件にのぼります。
ハイシャルが、捨てるような車の引取で「手数料無料」「0円以上の買取保証」を実現し、高い実績を積み上げることができている理由は、一体なんなのでしょうか。
1つ目は、解体業者とのネットワークです。
ユニオンエタニティでは、ハイシャルで買い取った車を廃車処理の業者に引き渡しています。つまり、引き渡し先業者の数が多く、業種も多様であるほど、車の処理を最適化できます。ここにハイシャルの強みがあると安部氏はいいます。
不動車や事故車は「車」としては価値がないかもしれませんが、部品単位で見てみると、希少な金属が使われています。また、日本の車は壊れにくく海外でニーズがあるので、動作するものの型式が古い、といった車は海外に輸出することもありますね。業者の皆様とのネットワークを使って、それぞれの車に最適な処理を行えるのが強みです。
2つ目の強みは「内製化」。
積載車を保有して引取の一部を自社で内製することで、輸送コストを抑えることに成功しています。また、書類手続きも引取と同じく内製化することで、外部委託の費用を削減。削ったコストを利用者に還元し、通常ならお金を払って引き取ってもらうような車でも「0円以上の買取保証」を実現できているのです。
3つ目は、質の高いコールセンターです。
コールセンターを社内に設置することで、コスト削減に加えて「きめの細かい」ユーザー対応が可能になったとのこと。
ハイシャルのホームページにはスタッフの顔写真とあいさつが掲載されており、一般的には「顔が見えない」コールセンター対応でも、信頼感が生まれるような工夫がみられます。
実は、利用者の母数が増える中で、リピーター率が毎年上がっているんです。対応に満足いただいた結果、もう一度利用していただける機会が増えていると考えています。

「泥臭い」リーダーの素顔
安部氏はユニオンエタニティとして独立する前も、廃車業界に関わっていました。もともと廃車業界にゆかりのあった安部氏にとって、ハイシャルの強みである「業者とのネットワーク」を築くことは、そう難しくないように思えます。しかし、そこを語る安部氏が見せたのは「IT企業の社長」のイメージとはかけ離れた「泥臭い」姿でした。
前職のつながりで取引いただいている業者と、独立後に新しく取引関係を結んだ業者が、おおよそ半々くらいですね。ネットワークの構築は、ひたすらテレアポで泥臭くやりました。廃車業界はまだまだデジタル化が進んでいないので、最先端の手法でスマートに、というのは限界があります。利用者の集客はITを使ってスマートに、業者とのネットワーク構築は泥臭く、両面をハイブリットにやっています。
また、前職ではCOO(最高執行責任者)を務めていた安部氏。すべてに秀でたスーパーマンかと思いきや、実は「なにかに秀でているわけではない」とのこと。幼少期から、いつの間にかリーダーになっていることが多かったと語ります。
小学生の頃からサッカーをやっていたんですが、あまりうまくなかったんです。でも、実はキャプテンをやっていたんですよ。秀でた能力があるわけでもないのに。ユニオンエタニティを見渡しても、IT知識で私より優れている人はたくさんいます。前職でもCOOという「ほぼ社長」のようなポジションでしたが、能力が優れていてCOOになったというより、古株だったからという感じですね。
謙遜する安部氏ですが、会社の立ち上げに2度関わり、どちらも軌道にのせたその手腕。「秀でた能力があるわけではない」とは言えないでしょう。そんな安部氏でも、会社の立ち上げ期は苦労の連続だと語ります。
会社を立ち上げたばかりの頃は、それこそ生きるか死ぬかの戦い。包み隠さず言ってしまうと、資金の調達もめちゃくちゃ大変です。社員全員必死ですよね。なんとか事業を軌道にのせてから、業務フローなどの仕組みを検討し始める。ここまでが数十人規模の組織で起こることで、そこから先は前職でも経験していないので、見てみたいですね。
前職でも会社を立ち上げる苦労を経験していた安部氏。それでも独立しようと思ったのは「方向性の違い」がきっかけでした。
まだ乗れるような車が廃車にされていくのを見て、「今あるものを大切にしたい。」「社会の課題解決につながる事業をしたい。」という思いがずっとあったんですよね。
これは社員に対しても、利用者に対しても同じことです。社員なら離職率を下げたり、利用者ならリピート率をあげたり。その方向性を貫くために独立しました。あとはCOOをやっていたので「社長もいけるやろ」と思っていた部分もありましたが、現実はそう甘くなかったですね(笑)。
前職の方針と、ユニオンエタニティの方針。正誤がある問題ではありませんが、安部氏は自身の信じる道を歩むことを決め、今にいたるのです。
狙うは「脱・車屋さん」
廃車だけでなく、車の再利用そのものを促す。そんなサービスとして、ユニオンエタニティでは『クリマ』 https://kuruma-furima.jp/ という車のフリーマーケットサービスを提供しています。手数料は業界最安値の5,500円で、月間3万4000人がチェックしているとのこと。2020年には第三者割当増資による資金調達を完了し、人材採用やホームページのリニューアル、更にアプリ開発に力を入れているといいます。

個人と個人による車の取引を行うクリマでは、業者のネットワークが介入する余地はないように思えます。しかし、クリマでも、自動車の整備や輸送の面で、業者に関わってもらっていると安部氏は説明します。
個人間のやりとりは「面白くない」と思っている解体業者もいたかもしれないです。ただそういう業者とは取引しません。
私たちはクリマでもビジネスチャンスを提供していますし、新しいことにチャレンジできないと厳しい状況に追い込まれるのは、どの業界でも同じこと。デジタル化が進んでいない業者に対して、ITのコンサルティングやシステム開発を行うこともあります。
安部氏が変化を求めるのは、業者だけではありません。自身の会社も変化を起こそうとする安部氏は、まず自社のビジネスモデルにおいて「脱・労働集約化」を目指しています。コールセンターのような労働力に頼るモデルではなく、労働力を増やさず利益を出せるビジネスモデル。例えば、オウンドメディアによる広告収入や、ECサイト構築を計画しているそうです。

しかし、安部氏はビジネス領域として「車」にはこだわりません。ITの力で人と人を「集客して、つなぐ」ことができれば、なんでもいいと安部氏はいいます。
目指すは「脱・車屋さん」ですね。コーヒーとか、それこそ何でもいいんです。今だと昆虫食なんか、面白そうだなと思っていますね。
ユニオンエタニティの社名は「ユニオン=人と人とのつながりを大事にし」、「エタニティ=永遠に成長し続ける」という意味。安部氏が画策する次なる変化が楽しみです。
