株式会社opt(オプト)/ 代表取締役 割石英男 氏
小さなマンションの一室で始まった社内託児所が、いまや関西に5校、550名を超える生徒が通う教育機関に成長。
株式会社opt(以下、opt )は、英語で預かる学童保育サービス「Kids Duo(キッズデュオ)」のフランチャイズ教室を大阪に運営している。
代表を務める割石英男氏は、父親が創業した医療用具販売や保険薬局などを展開する親会社・協栄薬品株式会社(以下、協栄薬品)の副社長としてキャリアを重ねながら、従業員向けの社内託児所をきっかけに、まったくの異業種である教育事業へと乗り出した。
いまや英語教育だけでなく、民泊や飲食事業にも領域を広げている。事業継続と理想の間で葛藤しながらも、人の可能性を信じて歩み続けてきた割石氏にその思いを伺った。

英語教室のはじまりは親会社の社内託児所
子ども向け英語スクール事業の成り立ちは、親会社・協栄薬品の社員向けの託児所だった。
協栄薬品の薬剤師として現場に立ちつつ、副社長として経営にも携わっていた割石氏は、結婚や出産を機にやむを得ず職場を離れる薬剤師が多い現状に「その力を活かせる場を会社として提供できないか」と考えたものだ。
託児所の設置は、母からの「従業員の子どもたちのためになる福利厚生施設をやるべき」という意見も後押しとなった。しかし、託児所を運営してみるとコストは想定以上に膨らむ。
まったく知識がない状態から、マンションの一室を借りて社内託児所をスタートさせました。ただ、時期によっては利用する子どもが1人になることもあり、福利厚生としては赤字運営だったんです。役員会でも継続すべきなのかとの声も上がっていました。そんな時「やる気スイッチグループ(「Kids Duo」も運営)」(※)からDMが届いたんです。
日本では今後、英語教育が必須になるだろうという思いもあり、そのタイミングで英語教育の導入を決めました。
(※)やる気スイッチグループ:幼児から高校生までを対象とした、個別指導塾、幼児教室、英会話スクール、英語で預かる学童保育など、様々な教育サービスを提供する総合教育グループ。個別指導塾「スクールIE」や英語学童保育「Kids Duo」など、複数の教育ブランドを展開している。
まずは協栄薬品の1事業部として始まり、堀江校、上本町校と順調に生徒数を増やした。3校目となる阿倍野校を開校する際に株式会社opt として独立し、割石氏が代表取締役に就任した。
保護者の声が最強の広告
しかし、教育事業の展開は簡単ではない。医療分野と異なり、新教室では生徒数を集めるまでのランニングコストが大きく赤字が続く傾向にある。既存教室が黒字化するまで新規開校を待つ必要があった。
人材面では、外国人講師が日本の住居システム(敷金、礼金など)を理解しておらず、生活が立ち行かなくなって早期退職したり、新型コロナウイルス感染症のパンデミック時に家族を心配して帰国したりするケースもあった。そうした困難に一つずつ向き合い柔軟に対応してきた。
2020年には Kids Duo 阿倍野校が全国で最も生徒数を伸ばした教室「年間純増最優秀教室賞」として表彰された。さらに2025年には、全国の Kids Duo オーナーの中から、特に優れた実績を持つ「エクセレントオーナー」にも選出されている。

一番の成功要因は保護者同士の口コミだと思います。ポスティングやチラシ、SNSもしましたが、やはり「あそこいいよ」って言ってもらえるかどうかが一番大きい。自然に紹介していただけることが本当にありがたいですね。
割石氏は運営開始にあたり自ら Kids Duo の研修を受講した。英語指導そのものは専門の講師に任せながらも、子どもたちの様子や保護者との会話、教室の空気を肌で感じることを何より大切にしている。
僕が現場をわかっていないと、教室長やスタッフが困っても適切にサポートできないですから。
このように現場に寄り添う姿勢こそが、スタッフや保護者からの信頼につながっているのだろう。
子どもたちに第2の居場所をつくる
この事業を通じて割石氏が最もやりがいを感じるのは、子どもたちの成長を直接見守れることだ。英語教育で目指すのは語学力の向上だけではない。opt では英語を通して社会性を育むことを大切にしている。
前職では高齢者のケアが中心で、目に見える成長を実感する機会は多くありませんでした。一方、教育の現場では子どもたちが「できない」から「できる」ようになる姿を目の当たりにできるんです。英語を通じて自信になったと保護者の方から感謝される瞬間が一番うれしいですね。
人前で一言も話せなかった子が、半年後には教室で堂々と発表できるようになったり、内向的だった子が 積極的になったりと保護者から驚かれることも多いそうだ。
単なる塾ではない。放課後の時間を通して、子どもたちのもうひとつの居場所をつくり、年齢の違う仲間と触れ合う中で自然と社会性を身につける。それが割石氏がこの事業にやりがいを感じている理由の一つだ。

柔軟に、前向きに、挑戦する
スタッフとの面談を重ねる中で、割石氏が度々耳にした声がある。
「今は楽しい。でも、この先が見えない」と感じるスタッフが多かったんです。それなら会社が保育以外でもスタッフが活躍できる場を用意しようと考えました。その思いから生まれたのが事業の“多角化”です。
その第一歩として始めたのが、現在推進中の民泊事業だ。
清掃や備品の管理に講師やスタッフが副業として関わっており、語学以外のスキルや関心を活かす場にもなっている。
また、次に構想している事業は、観光や飲食と連携した体験型サービスだ。
外国人観光客に向けて、たとえば『お好み焼き体験をしながら英語で接客する』とか『一緒に市場をまわって案内する』ことや、英語を使った観光体験を提供することも考えています。スタッフが案内役をすることで実践の場にもなりますし、地域ともつながっていけるのではないかと思っています。

実はこの飲食事業もスタッフの「飲食店をやりたい」という声がきっかけで始まったもの。
optでは「人が一番の財産」という考えのもと、人材採用では英語力や経験以上に、夢やビジョンを持っている人であることを重視している。
副業も推奨しており、夢のために退職するスタッフを笑顔で送り出す文化が根づいている。
社名の「opt」は、割石氏が大学時代に働いていた、雰囲気の良い飲食店の名前を継承したもの。事業の立ち上げにあたり、その店を思い出し、すでに廃業していたオーナーに許可を得て社名として採用したそうだ。「opt」は「Open」「Positive」「Try」という言葉の頭文字を表し、人の挑戦を応援するという思いが込められている。
現在は、協栄薬品との協業でビルを購入し、上階を民泊、1階を飲食業とワークショップスペースとして活用する計画が進行中だ。
世界と日本の架け橋へ
2025年は9年目を迎える株式会社opt。現在、講師は約60名。5つの教室に通う生徒の総数は550名を超える。
結局は会社は人。会社を辞めたあとも連絡をくれたり会いに来てくれたり。それが本当にうれしいですね。たとえ退職しても、本人がやりたいことを見つけて次のステップに進むのであれば、心から応援したいと思っています。高校生になった子が留学を目指しているなどと聞くと、その成長にこちらまで励まされます。
英語が話せれば、進学、留学、就職、起業、すべての選択肢が広がる。英語を学ぶことで、子どもたちの人生に“選べる自由”を与えたい。
それが、株式会社optが手がける英語事業の根底にある想いだ。
そして、子どもたちにもスタッフにも、“もう一つの家族”のような居場所を届けたい。
そんな割石氏のあたたかさが opt 事業の随所ににじんでいる。

