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向かい風吹く印刷業界に、軸足を守りながら チャレンジ精神で多角経営に挑む
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向かい風吹く印刷業界に、軸足を守りながら チャレンジ精神で多角経営に挑む

2025.03.10
野崎工業株式会社






野崎工業株式会社 / 代表取締役社長 山森典穂 氏



大阪府大東市に本社を構える野崎工業株式会社は、印刷を主事業とする企業。創業の経緯を、山森典穂代表取締役社長が語る。

向かい風吹く印刷業界に、軸足を守りながら チャレンジ精神で多角経営に挑む


弊社は日本電信電話会社(電電公社)、現在のNTTですね。そこの電話帳を印刷する会社として、昭和43年に創業しました。創業者は私の祖父の弟です。電話帳に用いる用紙も版も支給されて、我々はそれを印刷する。どれだけの量を刷るかで利益が変わってくるので、24時間体制でやっていたと聞きました。電電公社から『なぜ野崎工業は、これほどの量が印刷できるんだ。その手法を、教えてくれ』と訪ねてこられたそうなんです。当時はかなり、業績が良かったとも聞いています


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長らく経営は順調だったが、時代の変化の波は野崎工業にも訪れる。

お察しのとおり、やがて電話帳というものが減っていきました。そこで、それに代わるものとして、ビジネスフォームというコンピュータを使って出力する各種帳票の印刷や、デジタルオンデマンド印刷(※1)といった方向に転換していったんです。今では印刷業界向けのCADシステム(※2)の販売や機械販売、そのほかにNHKでアニメも放送された『ねこねこ日本史』(※3)というキャラクターの商品展開など、一般コンシューマー向けにも展開しています。またコンビニエンスストアの店舗運営と、多岐にわたって事業を拡大してきました


※1 デジタルオンデマンド印刷とは、必要な時に必要な部数だけ印刷できる、デジタル技術を活用した印刷方式。従来のオフセット印刷とは異なり、版を作成する必要がないため、初期費用を抑え、小ロットの印刷や短納期での印刷に適しています。

※2 印刷業界向けのCADシステムは、印刷物のデザイン、設計、製造工程を効率化するために特化したCAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアです。一般的なCADシステムとは異なり、印刷業界特有のニーズに対応した機能が豊富に搭載されています。

※3 『ねこねこ日本史』は、札幌市出身の日本の漫画家 そにしけんじ による日本の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメです。日本の歴史上の人物たちが可愛らしい猫の姿で描かれ、歴史を楽しく学べる作品として人気を集めています。


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多方面に事業を展開するが、今も主力は印刷。ビジネスフォームをメインに、会社全体の売り上げの約6割を担う。残りの4割は、アッセンブリ(※4)や機械販売などの事業だという。

※4 印刷業界におけるアッセンブリとは、印刷物の組み立てや検品、梱包など、印刷工程に伴う作業を指します。英語の「assemble」に由来し、「集める」「組み立てる」という意味があります。


想像していなかった部署への配属が
今の自身の基礎を作った



現在は90名の従業員を束ねる立場にある山森氏だが、もともとは家業を継ぐ考えはなかったという。学生時代はスキーに熱中していた。その延長で大学卒業後は、スキー用品などを扱うスポーツショップへの就職を志望。実際に、ある会社の就職説明会にも参加する。そうした動きを知った周囲が、ざわつき始めた。

私がそういう動きをしているのを知って、周りが『あいつ、なにを考えてるんや』となって説得にきました。野崎工業を含め関連会社が3社ありまして、すべて私の親戚で経営しています。私としては、複雑でしたよ。自分の好きな道に行きたい気持ちはもちろんありましたし、親戚一同でやっている会社を継ぐことを期待されているのもわかっている。最終的には、小さい歯車でいるよりも大きい歯車になって、将来に上に行きやすい状況にいるほうがいいと言われたこと。それと何よりも3社が他人に渡ってしまうのは、どうなんだ、と言われたことに納得し、昭和63年4月に野崎工業に入社しました


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印刷会社なのだから、最初は印刷の営業をするものだと疑っていなかった。しかし、やがて社長になる山森青年の社会人としてのスタートは、本人も想像していなかった意外な部署からだった。

最初は事業部に配属されて、印刷業界向けのCADシステムを販売していました。ひとつ年上の方と、CADを売る営業マンとして滑り出したんです。当時はスマホなどありませんから、紙の地図をコピーして飛び込み営業を繰り返していましたね。私は修業だと思っていたので、1年くらいで印刷のほうに行くんだろうなと思っていました

ところが、いつまで経っても異動の話が出てこない。

どうやら内部で『あいつら、そこそこやりよるから、そのままにしとこうか』となっていたみたいなんです。それでも、もうひとりの方と競い合いながらやっていて、仕事は楽しかったですね。小さい規模からスタートして、頑張ってやっていくうちに部署も大きくなっていきましたから。それを、30歳くらいまでやっていました

自身の基礎は、ここで作られたと山森氏。今も根っこは営業マンで、机の前にずっと座っているのは苦痛だと笑う。


50歳でトップに就任。「これからの印刷会社は、
受注を待っているだけでは生き残っていけない」



社長に就いたのは2016年、50歳だった。トップに就任する以前から世の中はデジタル化が加速し、アナログ技術である印刷には向かい風が吹く。それは今も変わらない。そんな状況下で山森氏は、どのような舵取りを行うのか。

印刷の需要が減っていっているのは事実です。社長になって最初に手を付けたのは、社内の効率化でした。工程の進捗管理をデジタル化したり、専用線で結んで東京と大阪の営業会議を行うことを始めたり。細かなところかもしれませんが、そういう改革のようなことをやりました。これは今の時代に合っていないのではないか。ここは今の技術でもっと良くできる。そういったことを念頭に置きながら、進めていきました


次の事業として山森氏が手掛けているのは、クラウドによる名刺の印刷(※5)。簡略化して説明すると、さまざまな企業の名刺のデザイン(CI)を分析しプログラミングかしたデータをクラウドに上げておき、このサービスに登録した企業が必要な情報を入力すると登録されたCIに基づき自動組版が実行され完成された名刺データが野崎工業に転送され、弊社で印刷されたものが顧客の手元に届くというものだ。

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※5 クラウドによる名刺の印刷は、インターネットを通じて名刺のデザイン作成、注文、管理を行うサービスです。従来の方法に比べて、時間や場所にとらわれず、効率的に時間やコストを削減し、名刺を作成・管理できる点が特徴です。

全国展開しておられる企業さんですと、これで一気に名刺注文が行えますので、発注にまつわる手間などが省ける。今では各業界を代表する会社様から中堅の企業様までご採用いただいています。会社の売り上げの柱になっているとはまだ言えませんが、部署としては柱になっています。ここをもっと、太くしていきたいですね

これからの印刷会社は、ただ受注を待っているだけでは生き残っていけない。自分たちから提案していくことが大事だと、山森氏は言う。

普通の印刷だけの提案をしても、ほとんど話を聞いてくれません。なので我々が持っている強みを提示してお客様がいかに便利になるか、無駄を削減できるかを提案します。するとやっぱり、聞く耳を持ってくださるんですよ。そうすることで私が多少、勝手に思っているだけかもしれませんが、『ほかの印刷会社より、野崎工業が提案するんやったら、1回話を聞いたろか』ということにもつながると思うんです。今の世の中は提案営業が求められていますが、本当にその通りだと思います


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印刷にとどまらぬ多角経営へ
次の一手は「梅を売る印刷会社」



営業畑を歩いてきた経験を、社長になっても活かしている。それとともに印刷だけの一本足打法では、社の未来が拓かない危機感も胸の内にある。そんなトップに今後の社の新たな取り組みについて訊くと、思わぬ角度からの答えが返ってきた。

印刷を維持していくためでもありますが、多角経営の一貫として、塩を使わない梅干しの加工を始めます。事業再構築補助金を申請しまして、昨年の11月中ごろに条件付きで採択されました。これが順調にいけば6~7月の収穫期に梅を確保し、塩を使わない加工をして販売していこうと準備しています


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自社で店舗を運営する縁もあり、コンビニエンスストアでの展開も考えのなかにあると言う。それが実現して「梅を売る印刷屋さん」となれば、野崎工業の独自性を際立たせる看板になるだろう。印刷に向かい風が吹くなかで山森氏を奮い立たせるのは、営業時代から培ってきたチャレンジ精神。

私は営業畑でずっとやってきて、すべてにおいて挑戦してきてました。今の立場になって当然、リスクも考えないといけません。ですがそれが多少のことであれば、一歩を踏み出す。逆に踏み出さないほうが、リスクだと思っています

山森氏はこれからも、なにごとにもチャレンジしていく気持ちを失うことなく、社の未来を切り拓いていく。

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野崎工業株式会社
本社:大阪府大東市野崎4-11-26
オフィシャルサイト:https://nozakikogyo.jp/