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「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ
大阪市東淀川区

「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

2022.12.02
株式会社Snailtrack

株式会社Snailtrack / 代表取締役 本川 誠氏

                                                                

「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

大阪市東淀川区で新聞販売店の経営を任されていた本川誠さんは、地域の実情を知るにつけ、このままでは元気がなくなり衰退していくと危機感を募らせた。そんな地域に役立ちたいと、まず家庭の困りごとを解決する「いえサポ!」事業を始めた。

次いで、子どもたちのための「しゅくだいカフェ」を。さらに、お年よりに食事を安く提供する「ばんざい東あわじ」にと手を広げてきた。目指したのは「東淀川をもっとゴキゲンにする」こと。

そして今、新しい領域にチャレンジしている。環境負荷、健康への悪影響を抑えた新しいタイプのハウスクリーニングだ。新洗剤の開発販売にも取り組んでいる。本川さんの心には、尊敬する先輩から言われた「生まれた時よりきれいな世の中にして死のうね」という言葉が脈々と生き続けている。

「特攻隊長」を務めながらも、弱肉強食の新聞販売の世界に強烈な違和感


本川さんが新聞販売の世界に入ったのは23歳のとき。31歳で独立して2008年、堺市に初めての店舗を持った。新聞社本社の意向で東淀川区に移ってきたのは2011年。初めての土地だった。同じ地区内における各社の新聞販売店間の競争は激烈だ。部数を獲った獲られたの戦いが延々と続く。そのために本社からは資金が下りてくる。もちろん、勝ち続けることはほぼ不可能。本川さんは「特攻隊長」として戦いに勝つべく走り回る一方で、こんなやり方は本来の在り方ではないと思っていた。

やったらやり返すの繰り返しです。10勝って10負けるような仕事は無駄だと思っていましたし、嫌でした。そこで、本社に「最高賞を獲れたら自分のやりたいやり方でやらせて欲しい」と掛け合い、2012年にぼろ勝ちして、本社から販売店に対する最高の賞ももらいました。それで翌年、自分がやりたかった事業にシフトするため販売店を会社組織しました。ちなみに、「Snailtrak(スネイルトラック)」は、「カタツムリの足跡」という意味です。歩みは遅くてもしっかりと足跡を残したいという思いからです。自分自身の存在感を示したかったのです。


家庭の困りごとを解決する「いえサポ!」。依頼件数は6年で5000件を超える


こうした思いが初めて形になったのが、2014年に始めた「いえサポ!」だ。新聞購読者の中でも特にお年寄りや障害者、妊婦さんらの「ちょっと困った」を解決するお手伝いサービスとして、30分500円(その後20分500円に)でスタート。新聞を配る合間に、草引きや買い物代行、電球の取り換え、重い家具の移動などの依頼を受け、6年で依頼数は5000件を超えた。

「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

新聞折り込みでPRしました。販売店ですからお手の物です。小回りが利くというので評判を呼び、車いすの人を美容室に連れて行ったり、娘さんが入院した高齢者の方の食事を作ったりと、依頼内容も多岐にわたるようになりました。パソコン教室を開いてエクセルを教えたりもしましたね。そうなると、販売店の店員が朝刊と夕刊配達の間で対応するだけでは間に合わなくなり、地域でサポーターを募集して依頼に応えました。1年で、地域に必要とされていると実感できるようになりましたね。


共働き家庭に団らんの時間を生む「しゅくだいカフェ」


「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

次に目を向けたのが子育て層だ。東淀川区は、一人暮らしのお年寄りに加えて共働き世帯の多い地域。当時の読者6000部のうち700部が子育て家庭で、困りごとや生活課題についてアンケートをとった。多かったのが、子どもといられる時間が少ない、あってもクオリティが低いという声だった。その声に応えようと2016年に始めたのが「しゅくだいカフェ」、そして「朝日塾」だ。

仕事から帰って子どもを見るとすぐに、「宿題したの?」と、つい口調がきつくなるといったお母さんたちが多かったのです。長時間労働で家庭での時間がとれないのが大きな要因だと判断し、子どもが宿題を終えてから家に帰すだけでも、家庭での団らんの時間が確保できるはずだと考えました。先生役のボランティアがサポートしますが、無料です。宿題を早く終わらせたら好きなことができるようにしており、私たちはこの取り組みを「夜の2時間革命」と呼んでいます。子どもたちにとっては放課後の居場所にもなりますし、親と先生以外の第三の大人と接する機会になるのも意味があることだと思います。
「朝日塾」は「東淀川の教育格差を失くす!」を旗印にしています。一人ひとりを大切にする個別学習で子どもの特性に合わせて指導するほか、eラーニングを採用するなど楽しい学びを実践しています。また、朝日塾では無料でまかないを提供しており、共働きのお母さんやシングルマザーの方たちに喜ばれています。


善意が地域を循環する「ばんざい東あわじ」


「ばんざい東あわじ」ができたきっかけは、Snailtrackが入るショッピングタウン「エバーレ」からスーパーが消えたことだった。エバーレの上階は大規模マンションになっており、スーパーで総菜などを求めていたお年寄りらがたちまち困った。何かしないと、と考えた末、2021年に始めた。

「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

毎日買えて、おいしく安いのはもちろん、健康的で選べる楽しさを提供することをが最低限必要だと始めました。毎日10品ほどを用意し、1グラム1円、500g以上は無料にしています。安く提供できるのは、多くのボランティアが参加してくれていることと、食材の約3分の1を地域住民や飲食店などからの寄付で賄っていること。1日約50人に利用していただいています。ボランティアは私たちの事業の大きな柱で、「ばんざい」と「しゅくだいカフェ」合わせて約150人が参加してくれています。半分は大学生で、残りは上階に住む前期高齢者の方たち。コロナで近所付き合いがなくなり、お節介ができる場がなくなって寂しく感じられていたからでしょう、皆さん元気に姿を見せてくれます。食材を通して善意が地域を循環していることから、「循環型地域食堂」と呼んでいます。


新たな飛躍へ――環境と健康を考えたハウスクリーニングでSDGsを実践


そして今力を入れているのが、環境や健康にとことんこだわったハウスクリーニングだ。

ハウスクリーニング自体は、「いえサポ!プロ」として2015年から行ってきた。その中で、「洗剤が腕にかかってただれた」「防毒マスクを忘れたので浴室清掃で咳が止まらなくなった」というスタッフの声を聞くようになっていた。そこで、人体に影響がある以上、環境にも負荷をかけているはずとの思いから、専門家に調べてもらった。するとなんと、水生生物に影響がないレベルに業務用洗剤の濃度を下げるには、何万倍もの水で薄めなければならないという結果が出た。

スピードを重視して汚れを落とすため、どうしても強力な洗剤を使うことになってしまいます。でもそれは、車からごみを捨てるのと同じです。車内はきれいになっても周りを汚しているのです。根本から見直さないと、健康も環境も害されていくばかり。そこで、環境への影響を極力抑えたクリーニング方法を創案し、これを専門に行う会社として「エシカル ノーマル」を2021年春に設立しました。SDGsの時代に合った取り組みだと自信を持っています。

「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

ソフトで汚れ落ち効果の高い洗剤を開発。定期清掃でピカピカに


「エシカル」とは「倫理的な」という意味だが、最近では「人や社会、地域、地球環境に配慮した行動や考え方」を指す。本川さんが考えたエシカルなハウスクリーニングは、たとえば油汚れが激しいレンジフードは、高温で油を溶かしたうえで弱い洗剤で洗い流すなど、劇薬である既存の洗剤を使わないことを徹底している。さらに、放っておいて汚れがひどくなるほど落ちにくくなるので、定期清掃プランを提案している。

ナチュラル洗剤はありましたが、頑固な汚れには通じません。このため、環境負荷や健康への悪影響を抑える手法や洗剤の開発に取り組み、1年半かけて自信作ができました。おかげさまで、小さな子どものいる家庭やペットを飼われている家庭、アトピーやぜんそくなどの持病のある方、化学物質過敏症の方などから好意的な反響を得ています。「いえサポ!」や「しゅくだいカフェ」「ばんざい東あわじ」などはしっかりした体制ができあがり、後継者も育っています。僕個人としては「エシカル ノーマル」に全力を挙げていきたいと思っています。


いじめられる側からいじめる側に。苦い原体験に突き動かされて歩み続ける


ここまで、休むことなく地域のため、さらにステージを広げて健康や環境を守るための活動を続けてきた本川さんだが、苦い原体験が行動の背景にある。小学生のころとても貧しく、いじめにあった。そのつらさのあまり、やがていじめる側に回ってしまったのだ。

でも、いじめる方になっても全然楽しくないし、幸せでもないんですね。自分を守るためだけに数年間いじめを続け、高校ではお金を稼ぐことに集中しました。今でも恨まれるほどひどいことをして金を稼ぎましたが、金でつながった人は、金がなくなれば去っていきます。虚栄心や自尊心は満たされましたが、幸福度はむしろ下がっていきました。高3で無期停学になり、暇なのでガソリンスタンドにアルバイトに行ったのです。洗車やオイル交換といった作業をどんどん受注して売上トップになり、次には全国1位になりました。すると、知り合いになった周辺の会社からうちに来ないかと誘われるようになったのです。自分が変われば周りが見方を変えてくれることを知り、目の前が大きく開けた感じでした。それまでの贖罪の気持で人生の後半を取り戻そうと思って今に至っています。


ボランティアや賛同者があってこそ。社会課題にかかわりたい人はいつでも参加を


「生まれた時よりきれいな世の中に」を目指す活動は東淀川から全国へ

既存の取り組みは東淀川にとどまらず、全国に広がりを見せている。「しゅくだいカフェ」は福島県や徳島県などを含めた7カ所に。これらも本川さんの尽力のたまものだが、ずっと続けていくためには、ボランティアや賛同者、資金提供者の広がりが欠かせない。「エシカルノーマル」もクラウドファンディングで資金集めに取り組んでいる。

僕には苦い原体験があり、それが力になっています。しかし、特別な原体験がなくても考え方に賛同して力を貸してくれる人がたくさんいます。社会課題が見える人・それに立ち向かおうとするのはむしろ、特別な原体験がない人ではないかと思っています。人とつながりたい人、社会に目を向けたい人にはぜひ、僕たちの活動に参加してほしいと願っています。


株式会社Snailtrack
本社:大阪市東淀川区東淡路1-5-51 ショッピングタウンエバーレ内
オフィシャルサイト:https://snailtrack-higayodo.com/

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