株式会社CROSLAN / 代表取締役 川村 敦 氏
外国人雇用を巡る課題をテクノロジーで解決したい。
学生時代のベトナム留学で目にした現実が、人生を変えた。
東大阪の株式会社CROSLAN 代表取締役 川村 敦氏は特定技能制度(※)の隙間で苦しむ外国人労働者たちと人材不足にあえぐ日本企業で、真に効率的で互いに利益を享受できる仕組みづくりを目指して、歩み続けている。
独自に開発した外国人雇用管理DXサービス『SMILEVISA(スマイルビザ)』が今、日本社会に新たな風を呼び込もうとしている。
(※)特定技能制度:国内の深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性や技能・日本語能力を持ち即戦力として活躍できる外国人材を受け入れるための在留資格制度

ベトナムで見た、日本での外国人労働者のリアル
川村氏の手がける『SMILEVISA』は、2026年現在で介護、建設、製造、外食などの分野で外国人雇用に伴う在留資格申請や雇用管理業務を効率化するDXプラットフォームだ。すでに利用企業は300社を超えている。

特定技能をはじめとする外国人材の受け入れに必要な手続きを、受け入れる企業が自ら行って自分事化することで雇用者との距離を縮め、また外部委託に頼りがちだった業務やコストを削減することを目的としている。
この成長著しいサービスの原点は、川村氏の留学時の経験にあった。
私はベトナムに留学したのですが、その時、大学の社会人コースで日本から帰国した実習生と出会ったんです。その方々は、日本で最低賃金を下回る環境で働いていたり、朝から深夜まで働きづめだったという経験を語ってくれました。
当時学生だった私は、この話に衝撃を受けたんです。もちろん全ての企業がそうではないでしょう。
ただ、日本に夢を抱いて訪れた真面目な外国の労働者が、十分に報われていない現実があることを知ったんです。それでも彼らは、決して諦めることなく前を向いて、日本語を学び続けていました。その姿を目にして、日本のこの制度の歪みを何とかできないだろうかと考えるようになりました。当時はまだ学生でしたから、具体的な方法なんて分かりません。でも、自分が将来何か事業をやるのであれば、この課題に向き合いたい。その想いは卒業論文にも書きましたし、今の事業にもつながっています。

制度を変えるために、仕組みを変えなければ
衝撃を受けた川村氏は、大学卒業後IT業界へ進む。社会課題を解決するためには、制度を理解するだけでは足りない。仕組みそのものを作る技術が必要だと考えたからだ。
当時から、これからのものづくりにはITの力が必要だと感じていました。課題を解決するためには、人力だけに頼るのではなく、仕組みそのものを変えなければいけない。実際にエンジニアとして働く中で、システム開発だけでなく、プロジェクトの進め方や課題整理の方法も学ぶことができました。その経験が今の『SMILEVISA』の土台になっています。
2019年に、第2の転機が訪れる。国が新たに特定技能制度を開始し、外国人雇用を取り巻く環境が大きく変化したのだ。
しかし、制度の仕組みは複雑だった。受け入れ企業は膨大な資料を読み込み、多数の書類を準備しなければならない。
外国人雇用を進めたい企業であっても、その煩雑さが大きな壁となっていた。
そこで川村氏は、企業の採用担当者や支援機関を訪れ対話を重ねた。
本当にたくさんの方に話を聞きました。そこで見えてきたのは、誰もが、「制度が複雑すぎて何をすればいいのかわからない」と感じているということ。書類作成も大変。だからこそ、私は、そこをシステムで解決できる可能性を感じたんです。
この気づきを元に『SMILEVISA』は産声を上げた。
簡素化した書類作成と申請スキーム、効率的な人材管理。彼の自信作だった。
しかし、完成直後にコロナ禍が訪れる。資金調達にも大きな影響が及んだ。
一番苦しかったのはコロナ(禍)ですね。スタートアップとして資金調達を進めなければいけない時期だったので、本当に大変でした。ただ、その時間があったからこそ、誰のためのサービスなのかを改めて見つめ直すことができました。
彼は、苦境を苦としなかった。有り余る時間を思考と試行に変え、サービスは更なる進化を遂げた。コロナ禍が落ち着き始めた頃、少しずつ、だが着実に彼のサービスは企業から支持を集めていくことになる。

外国人雇用を特別なものではなく、当たり前のものへ
現在『SMILEVISA』は介護、建設、外食、製造業を中心に導入が進み、近年ではホテル・宿泊業・自動車運送業・ビルクリーニング業、農業などからも関心が高まっている。
外国人雇用はこれまで多くの場合、外部団体や支援機関へ委託していた。
それを『SMILEVISA』は、受け入れ企業が内製化することで、コスト削減と業務効率化の両立を目指している。
導入企業様からは本当にさまざまな声をいただいています。自分たちで手続きをしようとして一度挫折したお客様が、このサービスを使うことで自社で申請・管理できたというケースもありますし、短い採用期間中でも人材を確保できたという声もいただきました。 特に大きいのはコスト面ですね。
ある企業様では年間で発生していた管理コストを92%削減できた事例もありました。
もちろん、残った利益をどう使うかは企業ごとの判断ですが、従業員への還元や教育投資に回せる余地が生まれるのは大きな価値だと思っています。
川村氏が目指しているのは、単なるコスト削減サービスではない。
その先にあるのは、外国人雇用をより身近で自然なものへ変えていくことだ。
私たちは外国人雇用を特別なものではなく、日本人採用と同じように当たり前の選択肢にしたいと考えています。 そのためには企業側だけでなく、日本で働く外国人の方々にも日本の文化やルールを尊重してほしいと思っています。最近は外国人に関するネガティブな話題もありますが、本当に日本が好きで、日本で働き、社会に貢献したいと考えている方もたくさんいます。 そうした方々が安心して活躍できる環境をつくりたい。そして企業も外国人材を「外から来た人」ではなく、一緒に働く仲間として迎えられる社会にしていきたいんです。
『SMILEVISA』で成功を収めた川村氏は、その成功をバネに新たなサービスの開発にも着手しているという。
外国人人材を巡る制度は、刻一刻と変わり続ける。それと同時に、社会も変わり続けている。 だからこそ川村氏は、変化を恐れず、新しい挑戦を楽しめる人材を求めているのだ。
留学先で抱いた違和感から始まった挑戦は、今、多くの企業と外国人材を支える仕組みへと成長した。
制度のために人が苦しむのではなく、人のために制度が機能する社会へ。
その実現に向けた挑戦は、これからも続いていく。

