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世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社
高槻市運輸・物流

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

2021.12.31
株式会社宮田運輸

株式会社宮田運輸 / 代表取締役社長 宮田博文 氏



トラックが運ぶものといえば「荷物」と答える方が大多数でしょう。スーパーやコンビニに商品が当たり前のように並び、ネットで本を購入すると次の日には自宅に届いてしまう。そんな便利な生活を送れるのは、物流会社が日々荷物を運んでくれているおかげです。しかし、荷物だけでなく「愛」を運ぶトラックがあるというと、あなたは想像できるでしょうか。大きく無骨なトラックを、子どもたちが描いた絵でラッピングすることで、人々に「愛」を届けている…そんな物流会社が大阪府高槻市にある株式会社宮田運輸です。「愛」による経営を著した本を出版し、映画化までされた宮田運輸の4代目代表取締役社長 宮田博文氏にお話をいただきました。

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

子どもの頃からトラックが大好き


宮田運輸は宮田氏の祖父が定年退職後、家族を支えるために大阪で創業しました。トラック1台から始まった宮田運輸ですが、今では東は福島事業所、西は福岡事業所まで国内に13拠点を構え、車両台数は185台、従業員数が350人の規模まで成長しています。
祖父は「儲けた金はみんなで分けよう」というのが口癖で、作業服姿で朝早くから出勤して、従業員の方々を大切にする人でした。従業員を大切にする文化は代を経ても変わらず、先代は、従業員の誕生日に明石の鯛を送ったり、周年パーティに従業員の家族も招待したりしていましたね。

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

幼い頃からトラックに囲まれた宮田氏は、ずっと宮田運輸のトラック運転士になりたかったそう。18歳になって免許を取ると、すぐに宮田運輸に入社しました。
まだ小学校の低学年の頃、トラックの行き先が書かれたホワイトボードを暗記して、名古屋に行くトラックの運転士さんを待ち伏せ「おっちゃん連れて行って」と頼み込むわけです。そんな子どもが平日夜中1時出発のトラックに乗るもんですから、母親から叱られるわけですよ。「学校どうするん」とか「仕事なんやからついて行ったらあかん」とか。それでもトラックに乗りたい衝動が抑えきれずに、夜中に何度も抜け出して乗っていました。

大好きなトラックを「この世から無くしたい」とまで思い詰めた


そんな幼いころから入りたかった宮田運輸に入社後、父親の「仕事は二度断るな」という言葉を守り続けた宮田氏は、顧客からの厚い信頼を獲得していきます。宮田氏が社長に就任したのは、長い専務時代を経験したあとのこと。社長になる前は「社長なんて、専務と同じようなもの」とたかを括っていた宮田氏でしたが、両者はまったく異なるものだったと言います。
社長も専務も変わらんやろ、と初めはいきがっていたんですが、やっぱり全然違ったんですよね。「会社を潰してはいけない」「社員を路頭に迷わせてはいけない」「経営者として数字を残して認められたい」口には出さないですが、「オヤジを超えたい」という思い。そういう不安とか恐怖・プレッシャーが、自分の中に蔓延し、不安定な状態になっていました。幹部会議で数字が未達の時は、iPadを放り投げることもありましたね。当然、従業員から「会議に出たくない」という声が出てきましたが、これが会社を、従業員を守ることだと・・・またそれがリーダーシップだとも思っていました。

そんな、社長も従業員も不安定な状態だった時のことです。宮田運輸の従業員がトラックの運転中に事故を起こし、相手の男性が亡くなってしまいます。
絶対に起きてはならないことが起こってしまったんです。大切な命を、自分の大好きなトラックが奪ってしまった。ご遺族への謝罪や事故の検証を行いながら「トラックが人の命を奪ってしまうなら、トラックを世界中から無くしたほうがいいんじゃないか」とまで考えました。


子どもの絵でトラックをラッピング


死亡事故に直面し、トラックを拒絶するようになった宮田氏。再びトラックと向き合い「愛」に目覚めたきっかけは、先輩経営者からのアドバイスでした。「それほどトラックが好きなら、トラックを無くすのではなく、もっと世の中でトラック活かすことを考えたらどうだ」。そのアドバイスを聞いた途端、ものの見方が全て変わったといいます。

その言葉を聞いた途端、希望とか、志とか、夢とか、愛とか、そんなことをためらいなく思いっきり言ってやろうと、覚悟が決まったんです。人にはみんな、優しい心があるんやと。どれだけ不平不満を言っていても優しい気持ちはあるはず。そう信じて、その優しい気持ちが自然と湧き上がる場をたくさん作ろうと決めたんです。

そんな思いで宮田氏が始めたのが「子どもミュージアムプロジェクト」。子どもたちが描いた心温まる絵でトラックをラッピングし、社会全体に愛を届けるプロジェクトです。

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社
ある日、大阪のとある工場で「子どもたちが手書きした安全標語を掲げている」と耳にしたことがあったんです。自動車事故というのはひとつのトラックや会社だけでなく、社会全体が良くならないと無くなりません。うちの運転士もトラックに自分の子どもが描いたメッセージを飾っていたのですが、このメッセージを社会に広めようということで、子どもが描いた絵をそのまま引き伸ばしてトラックをラッピングしてみました。すると、運転士の運転がとても優しくなったんです。みんな「子どもを助手席に乗せている感覚」と口々に言っていました。そればかりか、雨の日でもトラックを洗車する運転士まで出てくるようになりました。風邪をひくからやめるように言ってるんですけどね。

子どもの絵から愛を受け取ったのは、ドライバーだけではありません。トラックの絵を見た他のドライバーや歩行者にまで、愛が広がっていきました。
おばあさんがラッピングしたトラックに手をあわせたり、高速道路のサービスエリアにトラックを止めていると、若い人が「写真撮っていいですか」と尋ねてきたり。「仕事で失敗してイライラしていたのですが、御社のトラックを見て心が穏やかになりました」というお手紙をいただいたこともありました。大人たちが日々の忙しさの中で忘れてしまっている「内なる優しさ」や「良心」が、子どもたちに触れたとき自然と湧き上がってくるんです。大人たちだけじゃなくて、絵を描いた子どもたちにとっても、めちゃくちゃ嬉しいことなんですよ。自分の書いた絵が街中を走るわけですから。

8年前にたった1台のトラックから始まった子どもミュージアムプロジェクトですが、今では全国で250社~・850台~が参加、日本だけでなく海外にまで活動が広がっています。ラッピングの対象もトラックに限らず、デイサービスの送迎車やバス、はたまた自動販売機にまで広がっています。宮田運輸と子どもたちによる活動は、絵だけにとどまりません。なんと宮田運輸の社歌は、子どもたちに作詞をお願いしたとのこと。毎日の始業時に流れる社歌に、従業員の皆さんは癒されているそうです。

従業員も「ひとつの命」、愛するのは当たり前


子どもミュージアムプロジェクトで愛を届けている宮田氏ですが、その愛は当然従業員にも降り注ぎます。物流業で義務付けられている「点呼」ひとつ取ってみても、従業員を「ひとつの命」として愛する宮田氏の姿勢がよくわかります。
出発前にアルコールチェックや検温をして、健康状態を検査するのが「点呼」です。これは義務なんですが、正直やっていても全然面白くないし、心がない。例えば自分の家族が長距離ドライブするときは「大丈夫かな」と心配しますよね。おにぎり持って行きや、とか眠くならないようにコーヒー持っていきや、とか。これが会社になると全部なくなってしまう。それを変えるために、うちでは挽き立てのコーヒーを出すんです。それもただ出すんじゃなくて、「お父ちゃん今日もがんばってね」「いつもありがとう」「オヤジ死ぬなよ」という従業員の家族からのメッセージ付きタンブラーをプレゼントしたんです。そのタンブラーにコーヒーを注ぎながら「無事に帰ってきてや」って送り出すんですよ。無事帰ってきてくれるだけで十分なんです。

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

従業員を「命」として愛する姿勢は、会社の隅々にまで広がっています。例えば人事面をとってみても、宮田氏は「経営で人を育てる」のがモットー。「会社は学校じゃないんだぞ」というセリフはよく聞きますが、宮田氏は「会社は学校」と考えます。
能力どうこうじゃなくて、うちの会社に入ってもらって、時間差や温度差はあれど少しずつ成長してもらえる、そんな居場所を作りたいんです。経営は子育てですから、本来は。社内の評価制度もないですね。従業員がひとつの命に見えた瞬間に、存在してくれるだけでOKなわけですから。居場所があって安心できるからこそ、仕事に集中できていろいろな成果を出せると思っています。

従業員ひとりひとりにスポットライトを当てる活動として、「宮田のフィロソフィー」というYouTubeチャンネルも開設。従業員のインタビュー動画が投稿されています。
普通は社長の考え方を発信して、それに従業員がベクトルを合わせますが、この「宮田のフィロソフィー」では、現場が良いと思ったことをボトムアップで発信するようにしています。各現場からこの人がこういう行動をした、と報告があるので、それを発信している。ボトムアップなので、私がいなくなっても「宮田のフィロソフィー」というのはずっと残っていきますし、普通は管理職がダメなところを見つけて注意しますが、こういった活動を始めると、管理職がいいところを見つけようとするんです。

宮田のフィロソフィーYouTubeチャンネル
世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

会議にも社会の「愛」を取り込み「みらい」をみんなで考える


「子どもミュージアムプロジェクト」の他にも、宮田氏はユニークな活動をたくさん生み出しています。月に一回開催される「みらい会議」もそのひとつ。幹部会議を廃止して生まれ、幹部・一般社員でも自由参加、それどころか社外からも参加可能という不思議な会議です。
日曜日の9時から懇親会を入れると19時まで、全員自主参加の会議が「みらい会議」です。従業員は母親や恋人を連れてきたり、北海道から主婦の方がいらっしゃったり、コンサル・銀行の方々・他社の社員・なんと中学生まで、本当にいろんな方に参加を戴いてます。午前中は事業所別の報告があるのですが、発表スタイルは事業所に任せているので、現場の者が報告する事業所もありますね。また初めて参加された方にも会社情報を全てオープンにしています。しばらくコロナで開催できていないのが残念ですが、また再開の予定です。


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みらい会議スケジュール
そんな自由な会議でものごとが決まるのか、と半信半疑になってしまいますが、こんな実績まであるそうです。

パレットを清掃する部署に対して、3万枚という目標があったのですが、なかなかそれをクリアできませんでした。幹部会議で効率化の話していると、だんだん主体が消えていくんです。ところが、みらい会議を始めてみると「社長、私が明日現場に行ってアドバイスするから大丈夫」と現場のおばちゃんから発言が。するとすぐに3万枚を達成できたどころか、4万・5万枚と、現場で競争になるほどでした。部分的に数字だけ聞かされると、どうもやらされている感が出てしまいますが、自分たちの仕事がどう経営につながっているかがわかると、やりたい気持ちが出てくるんです。

午前中は業績を検討し、午後の懇親会はヨガや死生観の語らいといった、普通にイメージする会議とは似ても似つかぬ内容です。宮田氏がみらい会議を通して目指すのは「会社の成長」ではなく「社会の成長」。従業員だけでなく、社会全体がひとつの目的を持って集まることに意味があるといいます。

自分の会社の中だけで会社のことを考える時代じゃなくて、社会のみんなで考えられるような会社でなければなりません。そのためには目的が必要ですよね。うちの会社だけが大きくなって、うちの会社の従業員と家族だけが満足する、そういう目的では誰も助けてくれないし誰も応援してくれません。社会を良くしていきたい、もっといえば未来をよくしていきたいという気持ちでやっていると、応援してくださる方が出てくるんです。例えば、私たちが掲げている目的は「世界中の事故を無くそう」これを本気でやっているんです。

売上や利益が目的ではなく、社会貢献を目的とするからこそ、応援してくれる仲間が集まる。仲間が集まるからこそ、会社でいろいろな事業ができる。利益だけを追求しがちな現代において、宮田氏の考えは一見遠回りながらも、実は会社経営において最も大切なことなのかもしれません。

大阪から創る「福島の未来」


宮田氏が社会全体の未来を考えているからこそ、その輪は日本中に広がっています。東日本大震災で大きな被害を受けた、福島県子どもみらいプロジェクトに協賛している企業のひとつに、福島第一原発で作業をしている企業がありました。原発の煙突を撤去した遠隔操作の大型バスを、子どもたちの絵でラッピングしたのです。その会社から宮田氏に「福島を活性化してほしい」と声がかかったといいます。

「営利目的で関西から来る企業はいっぱいあるけれども、宮田運輸さんのような優しい企業に、福島を活性化してほしい」と声をかけていただきました。「やりましょう」と二つ返事で了解し、ダンプカーを5台購入して、除染された土を中間貯蔵施設へ運ぶ作業を請け負いました。2年半前に事業所を開設して、関西の従業員が2人手をあげてくれました。今は開設当初の3倍くらいの人員規模になっています。

除染土の運搬活動が皮切りとなり、福島とのつながりができた宮田氏。工場誘致やショッピングモール開設といった、福島の未来を創る「FUKUSHIMA 22 Century プロジェクト」にも関わることになりました。
FUKUSHIMA 22 Century プロジェクト

帰還困難区域の指定が解けた町に人を呼び戻すため、工場を誘致して工業団地を整備して、働く場所を提供しようとしています。ただ、震災から10年以上経った今でも、そういった地域には物流がほとんどないので、工業団地を整備することができません。そこで宮田運輸で八千坪の土地をお借りして、九百坪の倉庫を建設予定です。今のところは顧客はいませんが「需要が出てきますよ、こういう物流会社がありますよ」というのを地元の方々や企業に説明しているところです。他にも、福島第一原発には作業員の方が何千人と来ていますが、周囲には娯楽施設や携帯ショップといった便利な場所がありません。作業員の方達が楽しめる街を作るために「リマイルタウン」というショッピングモールの建設を計画しています。

世界中の人たちの心へ「愛」を運ぶ物流会社

福島の復興に携わっている宮田氏ですが、実は阪神淡路大震災でも復興活動に関わっています。宮田氏が最初に「愛」に触れた原体験は、この時なのかもしれません。

いつも愚痴を言っていたドライバーに、阪神淡路大震災の救援活動を頼んだんです。山越えで物資を運んでもらって。不平不満ばかり言うドライバーだと思い込んでいたんですが、帰ってくるやいなや目つきを変え「今すぐ出してくれ」と言うんです。「子どもから『にいちゃん次はいつ来てくれんの』と言われた。そんなことを言われて、自分だけ布団の中で寝られへん」と。人はやらされてやるんじゃなくて、自らやりたくなるんです。人の役に立っているとか、使命感とか、そういったことを感じる時に主体性というものが出てくるんだな、というのを体感しました。当時はその体験を、組織作りにまで落とし込めませんでしたが。

今後は2025年の大阪・関西万博に向けて、街中を子供達の絵で彩りたいと笑顔で語る宮田氏。「今はもう体力的にトラックは運転できません!」と語るかつてのトラック大好き少年は、今日も同じ目標を持つ仲間と一緒に「愛」を運び続けます。

株式会社宮田運輸
本社:〒569-0831大阪府高槻市唐崎北3丁目24-12
オフィシャルサイト:https://www.miyata-unyu.co.jp/