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『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”
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『ベル食品工業のひとしずく』 老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”

2025.07.31
ベル食品工業株式会社





ベル食品工業株式会社 / 代表取締役 中井威(たけし)氏



全国のホテルやスーパーのレトルトカレー。そして観光地で手に取るご当地カレー。そのパッケージ裏に記された「ベル食品工業」の名をご存じだろうか?
大阪市鶴見区に本社を構えるベル食品工業株式会社は、「日本で最初に固形カレールウを創った」会社だ。
OEM(相手先ブランド製造)やPB(プライベートブランド)商品を中心に3000種以上のレシピを蓄積し、月間100万食を手がける。
そんな実力派企業は今、商品づくりの延長線上にある「社会に開かれた活動」に力を入れている。
レシピと向き合い、人と向き合い、社会とつながる ベル食品工業。
代表取締役の中井威(たけし)氏に、ベル食品工業のものづくりの真髄やこれからの展望を聞いた。

『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”


3000種のレシピを生かし、日本全国の“あのカレー”を作るメーカー


ベル食品工業株式会社は、設立57年の歴史を誇る老舗食品メーカーであり、レトルトカレーを中心とした製品づくりで知られている。

全国のスーパーや土産物店で販売されるカレーのOEMやPB商品が占め、47都道府県ほぼすべての「ご当地カレー」を網羅しているという実績を持つ。

『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”

ブランド肉をはじめ、その土地の名産品を使ったカレーを数々開発してきました。最近は有名人が企画するカレーや、有名な会社などのカレー作りに携わることが増えてきていますね。


中井氏によれば、同社には約3000種類にも及ぶカレーのレシピが蓄積されており、年間で850〜900種類の製品を製造している。
月間ではおよそ100万食が出荷されており、従業員約100人の体制としては極めて高い生産量を誇る。

これを支えるのが、研究開発部門で長年培われた味のノウハウと、開発段階から顧客と共に「味の物語」を組み立てていく提案力だ。

「こういうカレーを作れませんか?」といったご相談を、全国各地からいただきます。小ロットでも対応できますし、3000種のレシピの中からイメージに合うものを提案できるのがうちの強みです。


そんなベル食品工業を率いる中井氏は、大阪生まれ、大阪育ち。
1981年に神戸にある老舗食用油メーカー 植田製油へ入社後、研究開発や品質管理などの部署を経て、2018年にベル食品工業の3代目社長に就任した。
OEM中心だった体制にNB(ナショナルブランド)商品という新たな軸を加えたのも、中井氏が社長に就任してからの大きな変化である。

『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”

感性と味が出会う<Chaledo×BELL FOODS PRODUCT>に込めた共創への想い


中井氏が社長に就任して以降、力を入れてきたNB商品の中でも、象徴的な取り組みが「チャレドカレー」だ。

この取り組みは、2019年に中井氏が日経MJ(日本経済新聞社が発行する専門紙)に掲載されたある記事に出会ったことが発端だった。
記事に紹介されていたのは、長野県軽井沢のデザイン・クラフトアトリエ「RATTA RATTARR(ラッタラッタル)」(※1)。
そこで、まず目についたのは「障害者」ではなく「障がい者」という言葉。これまで「障害者」という言葉に何の違和感もなく使っていた自身に恥ずかしさを感じた。これに強く心を動かされた中井氏は現地を訪れる。

そこでは、障がい者の人たちを「クリエイター」と呼び、決して「障がい者」という言葉を使わない。そして、クリエイター達を支援する人たちを「アトリエリスタ」と呼び、「クリエイター」と「アトリエリスタ」、そこには自分たちがこれまで抱いていた「障がい者」の人たちに感じていたものとは違う感情、「こころよさ」という何かを感じ、そういうところにも感銘を受けた。

(※1)デザイン・クラフトアトリエ「RATTA RATTARR(ラッタラッタル)」:株式会社チャレンジドジャパンが運営。2022年10月より「chaledo(チャレド)」という名称に変わり、2023年12月末に閉鎖された。

お話を伺うと、アトリエリスタ(支援者)の方はクリエイター一人ひとりの個性を尊重して、やりたい方法で自由に表現できるようにしておられました。「あれをやりなさい、これをやりなさい」と無理に何かをやらせるのではなく、本人の得意なことや個性を見極めて伸ばしていく姿勢がとても印象的でした。
絵を描いているクリエイターたちの姿も生き生きしていて、世話をされている方々との関係性も本当に温かく、こんな素晴らしい環境で作品が生まれているのだと感動しましたね。



「チャレドカレー」の開発は、クリエイターらがベル食品工業のNB商品を試食し、その味から受けたインスピレーションをもとに自由に絵を描いてもらい、さらにその絵の世界観に合うカレーの味に調整していくという流れで進められた。

カレーの絵といえば、お皿に盛られた料理や、家族団らんの食卓を描くものを想像しますよね。でも、そういう絵は一つもなかったんです。それぞれの色づかいやタッチに、その人が感じたカレーの辛さや具材、印象が込められていて、どれ一つとして同じものはありませんでした。見た瞬間に「なんて、素晴らしい絵なんや!」と思いました。


出来上がった絵は全部で30枚。中井氏はそのすべてを買い取った。その後、一枚一枚の絵の世界観に合わせて味を調整するという手間と想いの込もったプロセスを経て、これまでに11種類の「チャレドカレー」が商品化されてきた。

このシリーズは、大阪府が主催する大阪みやげの逸品を選定する「OSAKA PRIDE PRODUCTS(大阪プライドプロダクツ)2025」にも選ばれ、社会貢献と商品性を両立した取り組みとして注目を集めている。

『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”


デザイン・クラフトアトリエ「チャレド」は2023年に閉鎖したが、今でもクリエイターたちはそれぞれ別の施設で活動を続けているという。ベル食品工業は「チャレドカレー」の売上の一部を軽井沢の社会福祉協議会へ寄付するなど、活動の輪を広げている。

絵が30枚ある以上、30種類のカレーが完成するまでは続けていきたいと思っています。完成したカレーを持って、直接クリエイターに届けに行けなくなったのは本当に残念ですが、この活動を続けていけば、いつかどこかでこのカレーを目にしてくれるかもしれない。もし見つけてくれたら、「続けてくれてるんだな」と喜んでもらえると思うんです。


SDGsを“自分ごと”に。社員と育てるベル食品工業の社会貢献活動


「チャレドカレー」を通じて生まれたつながりや継続する姿勢は、福祉支援という枠にとどまらず、社会との関わり方を問い直すものでもあった。その意識は、今、社員一人ひとりが参加する社内の活動へと広がっている。

さらなるNB商品の開発との両輪で、社会貢献に力を入れるベル食品工業では、今年4月から「戻り苗活動」という新たなCSRプロジェクトにも着手した。
これは、和歌山県田辺市の山林へどんぐりの苗を植林する活動で、社員自身が2年間かけて苗を育て、現地に持ち込んで植えるというものだ。
SDGsって言葉ではよく言われますが、開発や営業のメンバーも含めて、なかなか「自分ごと」として実感を持つのは難しいと感じていました。そんなときに、テレビで「戻り苗」の活動を知ったんです。自分の手で育てるからこそ、社員たちも社会貢献を感じられる良いきっかけになると思いました。


苗木の鉢に社員一人ひとりの名前を書いたプレートを下げ、当番制で水やりを行うことで、日々の業務の中でSDGsを意識できる仕組みが整えられている。

不思議なことに、こちらから細かく指示したわけでもないのに、社員たちが自分たちで班を作って、当番を決めてローテーションで水やりをしてくれてるんです。言い出したのは私でも、そこからはみんなが主体的に動いてくれている。やってよかったなと思っていますね。


こうした活動の背景には、社員100人規模ならではの「近さ」があると中井氏は語る。
上層部との距離が近く、日常的に意見が交わせる風通しの良さに加え、年1回の全社パーティーや各部門長との定例ミーティングなど、現場の声をすくい上げる仕組みも整っている。社員の主体性を自然に育む土壌が、社内に根付いているのだ。
社会貢献に注力するようになった背景には、社員一人ひとりとの面談を通じて芽生えた中井氏自身の<気づき>があった。

「ベル食品工業」という名前は、まだ一般にはあまり知られていないかもしれませんが、「チャレドカレー」や戻り苗のような取り組みを通じて、私たちなりのかたちで社会に貢献しているという自負がある。社員たちに、“自分の会社はこういうことをやっている”と誇りを持ってほしいです。


『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”

誇りと責任を胸に「半歩でも前へ」


たとえ一歩が難しくても、半歩なら前に進める。それを続けていけば、大きな進歩になる。

中井氏がそう語る背景には、誠実さや謙虚さを何よりも大切にする姿勢がある。社員には日頃から「相手の意見に耳を傾けること」「正直でいること」「感謝を忘れないこと」の大切さを伝えているという。
こうした当たり前のことを丁寧に積み重ねる企業文化は、食品という安全性が求められる業界において、長年トラブルのない経営を支える土台となっている。

また、中井氏は「日々学び続けること」を重視し、その学びを顧客への貢献につなげる視点を持ち続けている。約3000種に及ぶレシピ開発の積み重ねこそが、その姿勢を裏付ける確かな足跡だ。

中井氏が目指すのは、「社員が自分の会社を誇れるようにすること」。
その実現に向け、「企業としての成長」と「社会の一員としての責任」という二つの軸を掲げている。NB商品の開発に取り組む一方で、「チャレドカレー」や戻り苗など、中小企業だからこそできる社会貢献活動にも力を注いでいる。

「小さな会社でも、できることを少しずつ重ねていくことが大切なんです。」
と語る中井氏が、その考えを重ねるのが『ハチドリのひとしずく』(※2)という民話だ。

(※2)『ハチドリのひとしずく』:南米の先住民に伝わる物語で、森が燃えている時に、ハチドリがくちばしで一滴ずつ水を運び火を消そうとする様子を描く。この物語は、一人ひとりは小さくても、できることを積み重ねれば大きな変化を生み出せるという希望と行動を促すメッセージを伝えている。
ご存知ですか?山火事の中で、小さなハチドリが一滴ずつ水を運ぶというヨーロッパの民話です。私たちも、できることから一つずつ積み重ねていけば、きっと社会を動かす力になっていけると思っています。


社員が会社を誇れるように……その願いを胸に、中井氏は事業の歩みと社会貢献を、丁寧に前へと進めている。


『ベル食品工業のひとしずく』  老舗カレーメーカーの“ 誇れる会社づくり ”


ベル食品工業株式会社
本社:大阪府大阪市鶴見区鶴見1-6-117
オフィシャルサイト:https://www.bellsyokuhin.co.jp/