株式会社ビーハイブ / 代表取締役 三宅伸一 氏
15歳で起業したのは、家業の倒産を機にフリーマーケットで仕入れた雑貨を自作のWEBサイトで販売したのが始まりだった。
20歳からジーンズの古着を扱いはじめ、裾を短くカットした「クロップドジーンズ」(通常のパンツよりも裾丈が短いジーンズ)を考案してヒットさせるが、大手メーカーに真似され、客からニセモノと誤解される苦い経験をした。
この教訓から、自分のアイデアを守るためブランドの立ち上げを決意し、履く人の脚の形に合わせて縫製するオーダーメイドジーンズ『Beehive JEANS』 を誕生させた。
2025年6月には実店舗をオープンし、現在は「イケおじ量産計画」と銘打ってデニムスーツを推しながら、世界への販路拡大を目指している。

営業成績優秀で上司から嫉妬された会社員時代
初めて起業したのが15歳の時だというから驚きだ。そのきっかけは何だったのか。
中学校から高校へ入った頃に、家業のカーペット工場が倒産しました。相前後して、父親が土曜・日曜にフリーマーケットで買ってきた雑貨類をインターネットで売れないかと相談を受けたのです。まだメルカリやヤフオクのようなプラットホームのない時代でしたから、販売用のWEBサイトを自分で立ち上げて売り始めたのが、起業のきっかけでしたね。
WEBサイトを立ち上げ、雑貨類を販売していた三宅氏は、その後様々なアルバイトをし、19歳の時には会社員も経験している。
大手電信会社の法人営業で、今でいうブラック企業でしたね。長時間にわたる勤務で、営業ですから当然にノルマもあります。それでも、周りの同僚たちが20代~40代の中で僕が19歳のいちばん若手ですが、成績は上位のほうだったんですよ。営業トークは学びましたが、今の仕事にはほぼ役立っていません。
優秀な成績を妬んだ上司からの「いじめ」にも遭ったという三宅氏。まるで子どもみたいに陰湿な「いけず」をされたそうだ。
車にミニ自転車を積んで、4人くらい同乗して営業エリアへ移動します。車を停めた場所から自転車に乗り換えて、あらかじめアポが取れている会社へ、地図を頼りにそれぞれ散っていくわけです。終わったら車の場所へ集合して会社へ戻るのですが、僕だけ車に乗せてくれないのですよ。チームリーダー的な立場の人がいて、自分は成績が振るわないものだから嫉妬して、そうやってチクチクと「いけず」をしてくるわけです。それがウザ(=わずらわしい)かったですね。

アイデアを大手メーカーに真似されてブランドの立ち上げを決意
営業の仕事は1年で辞め、再びネット販売に戻った。20歳のときにジーンズの古着を売り始めたのだ。
当時、心斎橋アメリカ村で営業している店舗のオーナー達は、店を畳んでフリーマーケットで商品を捌くケースが増えていた。
ジーンズを扱ったのは、単価が高いことと、フリーマーケットで商品を入手しやすかったからです。ヤフオクが一般的になり始めた頃で、ジーンズにはけっこう値段がついて数量も出ていましたから、ネット販売は当たるという確信もありました。
三宅氏の目論見通り、ジーンズのネット販売は軌道に乗り、生計を立てられるほどの収入を得るまでになった。
やがて、ジーンズに独自の工夫を施して売り出したところ、それもヒットした。
裾を短くカットして「クロップドジーンズ」として売り出したら、これが大当たりしました。ジーンズは夏場の売り上げが落ちるのが通例ですが、「クロップドジーンズ」はむしろ夏によく売れるくらいの勢いでした。他にないものをつくったら、世間から注目されるんだと、その時に痛感しました。

しかし、世間の注目を浴びてヒットしている商品を、他社が手をこまねいて見ているわけがない。真似をされてしまったばかりか、発案者の三宅氏があたかもニセモノのような疑いをもたれてしまった。
「クロップドジーンズ」は、まだブランドも何もなく僕個人で販売していました。2年くらい経った頃に、誰もが知っている大手メーカーが、「クロップドジーンズ」の販売を始めたのです。そのときは、僕のアイデアが認められたみたいな気分になって、嬉しさすら感じていました。ところが、あるお客さんからクレームが入ったんです。
「これは〇〇社のクロップドジーンズじゃないでしょう?」と。
たしかに、その通りなんですが、そのお客さんは大手メーカーが出している「クロップドジーンズ」の古着を買ったつもりなんです。僕は自分のオリジナルを売っている。その認識のズレから、あたかも大手メーカーの商品をパクっているかのような誤解をされてしまって「他のジーンズを、クロップドジーンズと偽って売ってますよね?」と。こんなことになるのかと、ショックでした。
自分がデザインした証拠を残しておかないと、アイデアを盗まれてしまう。痛い教訓を得て、三宅氏は自分のブランドを立ち上げる決意をする。
客から誤解のクレームを受けたその日のうちに、WEBを検索して見つけた岡山県にあるジーンズ製造工場へ電話をかけ、ジーンズ製造を依頼するため、翌日には、車を飛ばして岡山のその工場へ向かった。
「明日行っていいですか?」って、半ば強引に頼み込みました。後から聞いた話では、工場側では僕の頼みを断るつもりだったそうです。通常は1社あたりの発注が1ロット1万本が当たり前なのに、僕のオーダーは100本だけ。
工場からすれば面倒なので、やりたくない仕事なんですよ。それでも、電話をかけた翌日に来たので、変わった奴だと思われたのか、つくってくれることになりました。きっと本気度を計られたのかもしれません。
ブランドを立ち上げるにあたり、クラウドファンディングで資金を募ったところ、開始からわずか4時間で、支援額が目標の600%に達した。
そして2年の準備期間を経て、オーダーメイドできるジーンズブランド『Beehive JEANS』 が誕生した。
『Beehive JEANS』 の特徴は、履く人の脚の形に合わせて縫製することです。長さはもちろん、ご本人が希望するシルエットを聞いて脚の形全体に合わせる加工をするために、ジーンズ全体の半分くらいの糸をほどいて縫い直します。
縫製は、三宅氏が試行錯誤しながら独自に編み出した技術だといい、ネット販売時代には職人に直接伝授して発注していたという。
スマートフォンを収納できる革ポケットを付けたのも、『Beehive JEANS』 のオリジナルデザインだ。
だが、デザインを保護する「意匠登録」はしていないという。その理由は、ファッション業界ではアイデアやデザインを真似されるのが当たり前で、真似されるくらい優れたデザインなら仕方ないとのこと。
もっとも大手メーカーはプライドがありますから、真似したくてもしないでしょうね。僕は、パイオニアになったらいいと思っています。世間の人が「あのデザインはどこ(の会社・ブランド)から出たんだ?」と思ったとき、僕にたどり着いてくれたらいい。名前とブランド名をつけてインターネット上に残していますから、どちらが先かは一目瞭然です。

WEB販売から実店舗のオープンへ
2019年12月に、事業を法人化した三宅氏。2025年6月には、泉大津市にあるホテルレイクアルスター アルザ泉大津の3階に、アトリエを兼ねた実店舗をオープンさせた。
業務用のミシンは、家に置くには大きすぎます。しかも、今年からスーツも扱うことになって採寸場の必要にも迫られていましたから、アトリエはどうしても必要でした。また、営業活動をする際に、店舗を構えているほうが信用されやすいこともあります。
店舗物件を探していたとき、たまたま見つけたのが現在の場所だった。借りることができるのか否かは分からないが、ひとまずホテルのフロントに声をかけてみたという。ところが、事実上の門前払いに遭う。
受付で「貸してはいませんが、担当者に話しておきます」と言われたきり、連絡をいただけませんでした。再び訪ねたときにオーナーへ繋いでくださって、オーナーの息子さんで社長をしている方と話をすることができました。そのときはホテルの隣にある商業施設を紹介されたのですが、僕はどうしてもこの場所で店をやりたかった。「ここをお借りしたいのです」と食い下がったら、今度はオーナーが直接会ってくれることになりました。
こうした三宅氏の熱意がオーナーに伝わったのか、場所を貸してくれることになり、はじめて実店舗を持つことができたのである。

「イケおじ量産計画」と海外展開
『Beehive JEANS』 では今「イケおじ量産計画」を推進中だ。
これはデニム生地のスーツで、重厚感のある大人の余裕をまとう一着になっている。ハッシュタグで「#イケおじ量産計画」と打てば、X(旧Twitter)やInstagramなどSNSで、関連する記事が表示される。
SNSで話題にできたらいいなと思っています。汚い恰好といえば語弊がありますけど、子どもから見てカッコイイおじさんになってほしい。外見がカッコよくなったら、気持ちが変わるばかりか、表情も良くなるし背筋も伸びるんですよ。元気な大人が子どもたちに笑顔で「おはよう!」って声をかけるのって地域の治安も良くなると思うし、今後広めていこうとしている企画です。
採寸をして型紙からつくるため、発注してから受け取るまで45日かかるという。だが、6月に店舗を開いてからすでに20着の注文を受けている。
『Beehive JEANS』の、今後の展望を聞いた。
まず、課題として、僕のアイデアと技術を継承してくれる人材を増やしたい。販路を世界へ広げたいと思っていて、すでに準備をしています。国内用のホームページとは別に海外用のホームページも新たにつくっています。言語に対応できれば集客できますから、もう今年(2025年)に打って出ました。
最後に、『Beehive JEANS』のライバルはどこだと思うかを尋ねると、三宅氏は「今はいない」と即答した。
オーダーメイドで納品まで45日もかかる手間を、どこもやりたがらないだろうというのが、その理由だ。
その背景には確固たる技術への自信もある。
「おじさん」を自認している人は「イケおじ量産計画」のデニムスーツで、イケてるおじさんになってみないか。

