アクテック株式会社 / 代表取締役社長 芦田知之 氏
今回紹介するのは、創業50余年、枚方の家具団地に本社と工場を構えるアクテック株式会社。主力事業はアルミケース、アタッシュケースの製造である。そのケースに収納されるものの代表としては、一眼レフカメラのボディやレンズ、周辺機器などがあげられる。社名や事業内容を聞いても、ほとんどの人はピンとこないだろう。それもそのはず。同社の取引は、99%がBtoBによるものだからだ。そんな事業の内容を、2021年に二代目 代表取締役社長に就任した芦田知之氏が話してくれた。

2010年に迎えた危機
弊社は1972年にカメラのアクセサリーを扱っている商社の、主にアルミケースを作る製造工場として立ち上がりました。当時は一眼レフ用カメラのボディやレンズなどを収納するケースが主力商品。今ではその用途のケースの生産は減りましたが、現在もオーダーを受けて一品物のオリジナルアルミケースを生産し、それを国内・海外のメーカーや商社に卸しています
創業から業績は順調に推移していたが、やがて下降線を描くようになり、2010年代はもっとも底の状態だったという。その主な理由はケースの生産が中国に移されていったことと、大口の取引先の撤退である。
当時の大口のお取引先様はアルミケースだけじゃなく、カメラ製品にまつわるソフトケースやハンドストラップなどのアクセサリーなども作っていました。そのおかげで事業が発展・継続できたのですが、一社に対する依存度が大きかったんです。カメラ用のケースも今では中国製に切り替わってしまい、当社から一眼レフのカメラを作るメーカーに、カメラ用ケースを直接卸すことは、ほぼない状態となりました
ピンチを乗り越えたのは
営業力と、誇るべき技術力
そんな苦境を乗り越えたのは、営業部門の頑張りと技術力。
以前の大口のお取引先様のときからそうなのですが、当社営業は発注を受けたケースの受注・納品をきっかけに、そこから先方より『三脚やストラップはあるの、これはできるの、あれは?』と色んな要望をいただいて、『作ってみます!』と、相談は断らず、先方の気になることをしっかりヒヤリングし仕事ネタを探してきてくれるんです。このスタイルの繰り返しで顧客との深い信頼が生まれ、取引が拡大、大口のお取引先様となってゆきました。さすがにコロナで一度は落ちましたが、それを除けば業績は回復傾向です

単なる御用聞きではなく、顧客が求めているものを引き出してくる営業力。そしてなんといっても、それに応える独自の高い技術力がアクテックの強み。
当社はケースのサイズが自由にできるので、いろんなものを収納してきた実績があります。例えばレース用のエンジン・線路を研磨する装置・スポーツ用具(野球のバットケース等)、大道芸人さんが使うケースなども作ってきました。収めるものの大きさに合わせた収納方法だったり、それをいかにまとめるか。複数のものをひとつにまとめたりする設計力や、提案力が評価されているのではないかなと思っています

同業他社との技術の違いは、こんなところに現れる。
まずは自社工場で専用の型を使ってフレームが作れるので、外観はご要望に沿ったオリジナルのものができます。さらには外側だけでなく、内装のウレタン加工などもすべて自社でできるようにしていますから、布を貼ったりポケットを作ったりも、つまりは自社ですべてお客様の希望に応じた製品ができる、これがアクテックの大きな強みですね。正直そこまでできるところは、ほかにはあんまりきいたことがありません。そのうえで小口から大口のロットまで対応できるのも、日本では少ないと思います

自社で完結するからこそ、顧客の細かいオーダーにもすべて応えられる。その技術力を誇るゆえ、オーダーに対して「できません」と言わないのはポリシーのひとつでもある。
基本はそうですね。注文を断ることは、ないようにしています。仕入れ先にもご協力いただいて、希望にお応えするのが基本。かつてはケースとはまったく関係がないのですが、ご要望をいただいてバッテリーと一体型になった、カメラの縦位置グリップなども『頑張ってやってみます!』と言って作りました
二代目社長が取り組むは
BtoCへの拡大
芦田氏が父親が興した会社に入社したのは2013年。2021年に父の後を継いで、社長に就任した。そんな二代目の目下の課題のひとつは、BtoCへの拡大。
現在我々の売り上げの9割9分がBtoBでなので、もう少しコンシューマー「消費者」向けになにかできないかと探っています。そのためには、ECサイトが必要かなと。そちらでもお客さんを伸ばしながら、法人の顧客も増やせないかなと考えています。実は昔にやっていたのですが、そもそも見にくかったのもあって、ほとんど売れなくて一度はやめてました。その当時は、なんとカード決済ができなかったんです。そんなの、だれが買うねんって(笑)
ECサイトを、リスタートさせるにあたっては、副業のプロ人材を紹介する「(※1)大阪府プロ人材」を活用し、新たな人材と業務委託で契約を交わした。
ECサイトを自社で作ろうと思っても、正直なかなか作れないんですよ。プラットフォームも何をどう使うのか、よくわからない。なので昨秋から、システムを導入するためのプロジェクトマネージャーやウェブの専門家など、当社でできない分野に副業人材の活用を合わせて始めたんです。その方たちとやり取りをしながら進めて、ECサイトのオープンとなりました。そしてこれからどういうふうにして、商品を載せて売っていくか。それを副業人材の方たちとやっていこうと、少しずつ動き出しているところですね
アクテック ECサイトURL

(※1)大阪府プロ人材:地域に新たな質の高い雇用を生み出し、「ひと」と「しごと」の好循環を創出していくには、各地域を支える企業が、事業革新や新商品開発などの取組に積極的にチャレンジする「攻めの経営」への転身を図っていくことが不可欠。 本事業は各道府県にプロフェッショナル人材戦略拠点を設置し、地域の関係機関等と連携しながら、地域企業の「攻めの経営」への転身を後押しするとともに、それを実践していくプロフェッショナル人材の活用について、経営者の意欲を喚起し、民間人材ビジネス事業者等を通じてマッチングの実現をサポートします。
現在は登録人材紹介会社の新規募集は行っておりません。募集状況については、下記大阪府HPでご確認ください。
https://www.pref.osaka.lg.jp/koyotaisaku/chukakujinzai-osaka/index.html
会社として当然、業績は上に伸ばさないといけないが、現在のアクテックは業態を横にも広げようとしている。BtoC展開を見据え、コンシューマー向け製品の開発にも手を付けている。それが四輪車両の「いーちゃりかー」。基本は電動アシスト付きの自転車なので、運転免許は不要。ドライバー1名と乗客2名の3名乗車で、荷物も積載できるという(※2)ビークルだ。
(※2)ビークル:車両の総称。乗り物または輸送手段のこと。レクリエーショナルビークルのように自動車にも使われるが、宇宙船などを呼ぶこともある。

この「いーちゃりかー」もともとは香里が丘商店街さんから、ご依頼をいただいたのがきっかけでした。この商店街は50~60年前にできた団地の真ん中にあって、周辺の住民はお年寄りの方がとても多いんです。買い物に出かけるのが大変で、そういった方たちを送迎するサービスに使いたいと。当初はベースの車両を海外から輸入していましたが、それが廃盤になったので、当社で日本の事情に合うように少しコンパクトに設計をし直しました。同じように移動・送迎に苦労をされてるところがあると思われますし、スローでエコな乗り物なので、これからの時代のニーズにも合ってくるのではと考えています

デッキ部分が可変式なので汎用性が高く、送迎サービス以外にも活用の幅は広い。
送迎サービスだけではマーケット的に狭いですが、たとえば都市部の宅配だったりにも代用できる。ほかにもテーマパークや動物園などのスタッフカーなどで、使い道がないかなと考えています。それと、過疎化している地域に合うと思うんです。高齢で免許を返納された方が多くいらっしゃる地域ですね。またそういう地域は、観光に力を入れようとする傾向があります。そこで観光に来られた方の、移動手段にもなるかなと。タブレット端末を付けて道案内や、名所に着いたらガイドが流れてくるといった使い方やさらには道幅の広い海外のニーズも考えられる。いろんな需要に応えられると思いますので、さまざまに可能性を探っています
変わらないものを守りながら、
新しい分野にもトライする
社の変革期に舵取りを任されるのは当然プレッシャーもある。しかしその反面やりがいや楽しさも多いのではないだろうか。そう話を向けると、芦田氏は笑顔でうなずいた。
そうですね。それは本当に、そうでなんです。もちろんプレッシャーはあるんですが、それよりもいろいろと新しいことを自分でやれる楽しさのほうが大きいですね。新しいことに取り組んで、生き生きと仕事ができれば自然と業績も良くなる。日本だけじゃなく、もっと世界に出てゆくケースメーカーにならないといけないと、海外企業と仕事をしてるとほんとにそう思いますね
ただ本業のアルミケースのニーズは変わらず、一定数はあるように思うが、実際はそうでもないのだと芦田氏は言う。

そこはね、すごく難しいところなんです。カメラのケースはもともと当社で作っていたようなアルミの固いケースでしたが、今はだいたい布のソフトケースが主流。時代は柔らかい、軽いものに流れていってます。そういう傾向は、たくさんあります。つまりアルミケースのニーズが必ず一定数あるかといえば、そうではないんです。だからその必要とされている一定数を保持しながら、新しいものを作り続けないといけないんです。例えば昔はドローンを収納するケースなんかはありませんでしたが、今では新しく必要とされてますからね


そしてこう続けた
やっぱりどんどん、チャレンジをしていかないといけないんですよ。同じものがずっとあり続けることは、基本的にはありませんから。なくなっていくものもあれば、新しく出てくるものもあります。そうして世の中に新しく出てきたものにいかに対応するかを考え、それを作る技術を磨き続けないといけないと考えています
そう語る46歳の若き二代目社長の芦田氏は、変わらないものを守りながらも、新しい分野に果敢にトライしていくにちがいありません。
