akippa株式会社 / 代表取締役社長 CEO 金谷 元気氏
車を運転する人なら、仕事やレジャーで出かけた際に駐車場がなくて困った経験をしたことがあるだろう。それを解決するのが、駐車場予約サービスの「akippa(あきっぱ)」だ。契約されていない月極駐車場や商業施設・個人宅の車庫などにネット予約で駐車できる、駐車場のシェアサービスだ。このサービスを2014年にスタートさせたakippa株式会社 代表取締役社長 CEO 金谷元気氏が、事業を興すに至った経緯を語る。

2013年くらいまでは営業代行事業を主としていまして、携帯電話の販売などをやっていました。ですが社員が増えお金がなくて、資金繰りに困っていたんです。なんとかそれを乗り越えて手元にお金が残ったのですが「そのお金を減らしたくない」という思いから、みんなでめちゃくちゃ営業を頑張っていました。当時は数字しか見ていなかったですね、僕も社員も。そうなるとお客様方から、クレームなどが発生したりするんです。
世の中の困りごとを解決する、“なくてはならぬ”をつくる
顧客からのクレームの声を聞きながら、疑問が湧いてきた。自分たちがやっていることは、世の中のためになっていないんじゃないか──。
そのころに共同創業者の松井健吾から「この会社のミッションや理念は、なんですか」と問われたんです。そんなことは考えたことがなかったので、考え始めました。ちょうどその頃に、自宅の電気が使えなくなったんですよ。それを経験して僕は、電気のように世の中になくてはならないものを作りたいと思ったんです。それで2013年に弊社のミッションを“なくてはならぬ”をつくるに定めました。
“なくてはならぬ”をつくるとは、すなわち世の中の困りごとを解決すること。それを形にするため、社員全員で困りごとをあげていこうと、壁に模造紙を貼って200個も書き連ねていった。

そのひとつにあったのが、「コインパーキングは現地に行ってから満車だと知るため困
る」というもの。一方で民家の駐車場や月極駐車場などは、空いていたりするんです。それをマッチングすればいいじゃないかと思い、akippaをスタートすることになりました。
好きなサッカーの試合を見に行ったのに、駐車場がなくて試合開始に遅れた。仕事でも飛び込み営業に行くと来客者用駐車場はあるものの、事前に来訪を告げていなかった者用のスペースは無く、近隣にコインパーキングも無い。金谷氏自身も、こういった同じ困りごとを経験していた。だから駐車場の問題が、すっと腑に落ちた。
自分でもそういうことを経験して、駐車場の問題は課題が大きいんじゃないかなと色々調べていきました。すると1秒あたりの路上駐車の台数が、東京は6万3000台・大阪は3万1000台。その人たちの47%は駐車場が無い・もしくは満車という理由で路上駐車しているんです。並行して駐車場業界の決算を見ると、ある会社は18年連続増益増収でした。そこで駐車場が増えれば増えるほど、業績が上がることが分かりました。これは大きなマーケットがある一方で、解決すべき大きな課題もあるということでakippaはスタートしました。
前例のない事業は、用意周到な広報戦略で好スタートを切る
前例のない事業ゆえ、世の中への周知が最初の課題。スタートアップにはさぞ苦労したかと思えば、そこは周到な準備でクリアした。
最初からメディアに出ていましたので、それを見たメディアさんから問い合わせをいただくことが多かったんです。サービスは2014年4月に開始したのですが、事前登録が始まったのが2月20日。その日に『ワールドビジネスサテライト(※1)』に、サービスを開始した1ヶ月後にはTBSの朝の帯の番組、2014年の9月には『がっちりマンデー(※2)』に取り上げていただきました。その間にもNHKなどで取り上げられたりして、akippaを知ってくださる人がかなり増えたんです。それで駐車場のオーナー側から登録が入るようになってきていたので、あまり苦労はしなかったといいますか、有難いことに認知はすぐに広まりましたね。
(※1)ワールドビジネスサテライト:月曜~木曜よる10時、金曜よる11時スタートの「あなたと世界を経済でつなぐ」経済ニュース。テレビ東京系列ほかで1988年4月4日から放送されている経済報道番組である。略称は、英称の頭文字を採った「WBS」。
(※2)がっちりマンデー:TBSテレビ制作で、毎週日曜の午前7時半スタートの生活情報バラエティ番組である。日曜に経済の勉強をして月曜日から実践しよう!という由来がある。
そのためには当然、メディア戦略に策を練った。
僕と弊社の広報で、知識ゼロのところから始めました。最初はテレビに出るための本を読んだり、ChatWork(※3)という大阪の会社の元広報さんに経験やノウハウを聞いて、レクチャーを受けたりしました。そのなかで採ったのが、新聞・雑誌に載ることで、それが元ネタとなり、テレビに出るという戦略。新聞や雑誌にどうしたら載れるかを考えると、いろんな角度からプレスリリースを書いてとにかくメディアに送らないといけない。だけどメディアの方々にはプレスリリースがたくさん届くので、ただ単に送ったところで読まれていないことも多いんです。
(※3)ChatWork:Chatwork株式会社は、大阪市北区にオフィスを置くクラウド型ビジネスチャットツール「Chatwork」の提供などを行っている企業。Chatworkは、メッセージのやりとりだけでなく、タスク管理やファイル共有・ビデオ通話などが可能である。
読まれるプレスリリースを作るために、こんな工夫を施す。
プレスリリースをA4の透明封筒に入れて、中身が見える状態にしました。そのうえで毎回いろんなネタを盛り込んで送っていく。「個人宅の駐車場をシェアする」発想は当時なかったものなので、リリースを見ていただいたメディアの方が面白い!と。毎日新聞さん・大阪日日新聞さん・日本経済新聞さんなどいろいろ取り上げられるようになって、それを見たテレビ局の人が電話してきてくれました。新聞に載って、そこからテレビで取り上げられる狙いは、上手くいきましたね。

創業者の金谷氏は、プロを目指したサッカー青年だった
こうしてakippaの立ち上げに成功した金谷氏だが、もともとはプロ選手を目指すサッカー青年だった。高校卒業後に関西リーグのチームでプレーし、挑戦を22歳までと決める。
プロにあと一歩にまで迫ったが、自らが定めた期限までに夢は叶わず。そこですっぱりとプロの道を諦め、早期の起業を決意して、その準備のため上場企業で営業の職に就く。ここでトップの成績を収め自身に課していた目標を達成したため、わずか1年半で退職。akippaの前身となる合同会社を2009年に設立した。そのとき、金谷氏は24歳だった。
最初は営業代行事業からスタートして、その後に求人広告事業を。2013年には出版事業も始めました。出版事業は安定した売り上げと利益があったんです。でも同時にakippaを始めていましたので、最終的に出版事業は売却することになりましたが、今もそのサービスは他社で続いていますよ。
そんな金谷氏は、誰も手を付けていなかった駐車場予約サービスに着目したようにゼロから1を作る先見性と、先の広報戦略に現されるように1を10に・10を100にする発想力の持ち主。日本は人口減が明らかで、それに伴って自動車の販売台数も減少し、駐車場のニーズも下がっていくことが予想されるが、akippaを成功に導いた経営者の視線は海の向こうを見つめている。
akippaの場合は日本全国というよりも、世界の都市で見ています。なのでどちらかというと、人口は増えていくんですよ。2022年に世界の総人口が80億人を突破して、2050年には97億に増えると予想されています。とくに東南アジアの人口増加が目立ちますよね。僕らは海外展開をしていくうえで見るのは、まずは東南アジア。例えばバンコクやジャカルタとか、そういった都市ごとに進出していきたいと思っています。
とくに今の東南アジアの地域には若い年齢層が多く、中古車を買うなどで車を持つ人が増加してきている。そうなっている今、なにが起きているかというと……。
渋滞問題と、駐車規制です。現在、これの解決の手立てが無くなっているんです。コインパーキングを作るのは機械を導入したりと費用もかかるので大変。でも僕らはソフトウェアのサービスなので、現地の法律に合わせて規約を作って…あとは言語対応するだけでakippaのプラットフォームに入る都市にピンを立てていけるんですね。そういう意味では、経済成長率が低い日本でこれだけできているから、海外だともっと成長率が上がるだろうと考えています。
世界展開を視野に入れ、同時に日本の近未来と社会問題の解決に寄与する
akippaとして世界規模に展開して、目の前の問題解決に当たるだけではなく、日本の未来に寄与することも金谷氏の頭の中にある。
国内においては、運転手が減っていくと思います。そんな日本で最初にやりたいことは、駐車場にEVの充電器を設置して、そこにEV型の自動運転車を置くシェアサービスなんですよ。運転免許を返納した人でも誰でも、家の近くでシェアできる自動運転の車で好きなところに行ける。これを最初にやるのはおそらく日本だと思うので、自動運転車のシェアリングも将来的に始めていきたいと考えています。
現在の駐車場シェアサービスを創業から10年ほどで急成長に導き、新たなEV自動運転車のシェアサービスは、そう遠くない将来に実現するであろう。そういった事業を通じてakippaが社会に貢献する未来を、創業者はこう考えている。
まずは我々が事業を通じて、ちゃんと利益を確保していくことが大事だと思っています。僕はビル・ゲイツの考えが好きなんです。彼は「与えるために稼ぐ」と言っているんですね。たとえば、貧困の人などになにかをもたらすためには、稼いでいくことをやっていかないといけない。そうして利益を得たら贅沢をするのではなく、得た利益を適切かつ効果的に寄付をしていきたい。僕はakippaでやっているような、人と人が会うことを繋ぐのは、すごく価値の高いことだと思っています。事業自体でも社会に貢献し、そこから自分に還元された利益などは、効果的に活用して貧困をなくすことに繋げていきたいです。